
| たしかにファーウェイの最高級車、「マエストロ S800」は悪くないクルマである |
この記事の要約
- 歴史的逆転: ファーウェイ×JACの「Maextro S800」が、100万元(約2100万円)超の市場で販売首位に
- 衝撃の数字: 11月の販売台数で、ポルシェ・パナメーラとBMW 7シリーズの合計を圧倒
- 圧倒的コスパ: マイバッハ級の豪華装備(40インチ後席プロジェクター等)をドイツ勢の半額以下で提供
- ブランド信仰の終焉: 中国の顧客は「伝統」よりも「ファーウェイの先進技術」をステータスと見なし始めている
もはや「ドイツ車」は選ばれない?中国富裕層の劇的な心変わり
これまで中国の成功者にとって、メルセデス・マイバッハやポルシェ、BMW 7シリーズは「富の象徴」そのもの。
しかし2025年の販売結果を見る限り、その強固なブランド信仰が音を立てて崩れています。
その中心にいるのが、ファーウェイとJACの提携ブランド「Maextro(マエストロ=尊界)」。
彼らのフラッグシップセダン「S800」は、発売からわずか1年足らずで、中国の100万元(約2,100万円)超えクラスにおいて最も売れる車となったことが明らかになり、今ぼくらはまさに「地殻変動」を目撃しているわけですね。
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パナメーラと7シリーズを「2台同時」に相手にして勝利
ブルームバーグの報告によると、11月の販売実績において、Maextro S800はポルシェ・パナメーラとBMW 7シリーズを合わせた台数よりも多く販売され、さらにはメルセデス・ベンツ Sクラスやマイバッハすらも上回る勢いを見せています。
超高級セダン・価格とサイズの比較
そこで気になるのが「なぜ、新興ブランドがこれほどまでの躍進を遂げられたのか」。
まずはライバルとあわせてスペックを見てみましょう。
| 車種 | 全長 (mm) | 価格(中国市場・約) | 主な特徴 |
| Maextro S800 | 5,480 | 1,500万〜2,200万円 | ファーウェイADAS、40インチ映画スクリーン |
| BMW 7シリーズ | 5,391 | 2,000万円〜 | 伝統の走りとブランド力 |
| ポルシェ パナメーラ | 5,052 | 2,300万円〜 | 圧倒的な走行性能 |
| メルセデス Sクラス | 5,290 | 3,100万円〜 | ラグジュアリーの基準 |
Maextro S800が「マイバッハ殺し」と呼ばれる理由
S800の魅力は、単なる低価格ではなく、ドイツのライバルが数百万円のオプションで提供する、あるいは提供すらしていない「未来の体験」を標準装備している点にあると分析されています。
- 移動するプライベートシアター: 後部座席には40インチの巨大プロジェクタースクリーンを搭載
- ファーウェイの知能: 世界最高水準の自動運転支援システム(ADAS)とスマートコックピットを搭載
- ロールスロイス級の演出: クリスタル風のボタン、星空を模したスターライト・ルーフ、電動ドアなど、贅の限りを尽くした内装
ファーウェイの余承東(リチャード・ユー)会長は、「S800は中国ブランドが初めて100万元の壁を突破し、知能化と電動化の時代で世界をリードしている証だ」と自信を深めており、その自信が「現実のものとなった」というわけですね。
結論:ドイツの巨人たちが直面する「最大の危機」
かねてより報じられるように、BMW、メルセデス、アウディといったドイツ勢は、中国市場でのシェアを急速に失っており、過去に彼らが誇った「エンジンの完成度」や「歴史」は、ソフトウェアとAIが主役となった現代のラグジュアリー市場では決定的な差別化要因として機能しなくなっています。
さらに、BYD傘下の「YangWang(仰望)」も15万ドル級のSUV「U8」やセダン「U7」で攻勢を強めており、ドイツ勢は価格競争と技術競争の両面で追い詰められているというのが目の前にある事実。
中国人にとってクルマに求めるものは「走る機械」から「走るスマートデバイス」へと確実に変化しており、この変化に最も早く、そしてラグジュアリー性をもって対応した中国ブランドが今まさに世界の富の地図を書き換えようとしているということもわかり、中国の消費者の「購買活動における購入決定要素」が決定的に変化してしまったこともわかります。
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そしてかつての中国車は「日米欧の自動車メーカーの廉価版、あるいは代替」であったものの、今では優先して選ばれるだけの魅力を備えるに至っており、日米欧のクルマはもはやその優位性を失って「追いかける立場」となってしまったわけですね(それら自動車メーカーが中国の新興自動車メーカーと共同にて製品を開発するようになったことからも、いかに大きく中国市場が変化しているかがわかる)。
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知っておきたい豆知識:中国車には「圧倒的な優位性」がある
上述の通り、マエストロS800は「非常に優れた装備」を持っていますが、それには「理由」があります。
中国において、輸入車であるドイツの高級車には高額な関税や諸税がかかり、一方、国内生産のマエストロなどはそれらを回避できるため、同じ予算でも「2ランク上の豪華装備」を詰め込むことが可能となるという事情があるのですが、逆に「日米欧のクルマと同じ装備であれば」ずっと安価にクルマを作ることも可能となるわけですね。
つまるところ、中国の自動車メーカーは様々な方面において強みを発揮できる状況にあるということになり、中国の富裕層にとって、「割高な伝統」を買うか「割安な未来」を買うかという選択肢がいま提示されていて、後者が圧倒的な支持を得ているのが現在の中国市場ということになります。
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参照:Bloomberg


















