>BMW(ビー・エム・ダブリュー)

こんなコンセプトカーもあった。BMWとイタルデザインとの共同開発による「水素V12、タンデムシート、ジョイスティック操作」による「VAD.HO」

こんなコンセプトカーもあった。BMWとイタルデザインとの共同開発による「水素V12、タンデムシート、ジョイスティック操作」による「VAD.HO」

| 一連のBMWによるコンセプトカー「ナスカ」にも通じるデザインを持っている |

BMWはすでにこの頃から「水素」に取り組んでいた

さて、先日株式の売却がアナウンスされたイタルデザインですが、公式インスタグラムに過去のコンセプトカーをチョコチョコと公開し、その歴史を振り返っています。

そんな中で登場したのは「「VAD.HO(ヴァド・オー)」で、これは2007年のジュネーブモーターショーで発表された、BMWとの協力による2シーターのスーパースポーツ・コンセプトカー。

ぼくの大好きな「ウエッジシェイプ」を持っており、主な特徴を見てみましょう。

1. 革新的なパワートレインと名前の由来

  • 水素エンジン: BMW製の水素駆動V12エンジンを搭載し、高い走行性能と環境性能の両立を目指した「実験車両」としての側面を持っている
  • 名前の由来: イタリア語で「私は行く」を意味する "Vado" と、水素(Hydrogen)の "H"、そして酸素(Oxygen)の "O" を組み合わせて「水素で行く(Vado on H)」という意味が込められている
  • 地名の由来: イタルデザインの本社があるイタリア・モンカリエリの「VADO工業地域」にも掛けられている
BMW CEO「EV専売は行き止まり」─ ガソリン、ハイブリッド、水素車を含むマルチ戦略を継続へ。「白黒思考ではなく多角的な判断が必要」
BMW CEO「EV専売は行き止まり」─ ガソリン、ハイブリッド、水素車を含むマルチ戦略を継続へ。「白黒思考ではなく多角的な判断が必要」

Image:BMW | EV専売は“行き止まり”──BMW CEOが語る冷静な戦略判断 | この時代、最も重要なのは「多様性」「柔軟性」である BMWグループは近年、電動化を進めながらも、競合他社のよ ...

続きを見る

2. 戦闘機のようなパッケージング

  • タンデム配置: 座席は一般的な横並びではなく、戦闘機のように運転席と助手席が前後に並ぶ「タンデム配置」を採用。これにより、ボディの前面投影面積を抑えたスリムなデザインを実現している
  • キャノピー: 乗降はドアではなく、コックピット全体を覆うポリカーボネート製のキャノピーが開閉する仕組みになっている
もしもBMWがスーパーカーを作ったら?キャノピー型グリーンハウス、キドニーグリルならぬ”キドニーボディ”を持つ「BMW エトス」
もしもBMWがスーパーカーを作ったら?キャノピー型グリーンハウス、キドニーグリルならぬ”キドニーボディ”を持つ「BMW エトス」

| いつかはBMWに「スーパーカー」「ハイパーカー」を作ってほしいとは考えているが | BMWがその重い腰をあげるのはまだまだ先になりそうだ さて、フリーのデザイナー、Sebastiano Ciarc ...

続きを見る

3. バイワイヤ技術とジョイスティック

  • ステアリングホイールがない: 人間工学に基づいた設計により、従来のステアリングホイール(ハンドル)は存在しない
  • ジョイスティック操作: 「バイワイヤ(by-wire)技術」を駆使し、左右のアームレストに配置された2本のジョイスティックで操作を行う

補足: この車両は当時、日本の音響メーカーであるクラリオンのプロモーション(フルデジタルスピーカーシステムなど)にも活用されたことがある

ちなみにですが、このVAD.HOのスタイリングは(やはりBMWとイタルデザインとの共作である)ナスカ(NAZCA)シリーズを連想させ、VAD.HOはこれらナスカシリーズの「後」に発表されています。

NAZCA

Image:BMW / Italdesign

NAZCA
こんなコンセプトカーもあった。BMW NAZCA三兄弟「M12」「C2クーペ」「C2スパイダー」

| BMWは昔からスーパーカー/ハイパーカーには強い興味を持っている | BMWとイタルデザインとの共同プロジェクトによって誕生した一連のコンセプトカーシリーズ、「NAZCA M12(1991年、ジュ ...

続きを見る

イタルデザインとは?

そこで改めて「イタルデザイン」について振り返ってみると、正式な社名は「Italdesign Giugiaro S.p.A.」、1968年にイタリアで設立された世界的に有名なデザイン・エンジニアリング会社です。

単なるデザインスタジオにとどまらず、設計やプロトタイプの製作、テストまでを一貫して行う能力を持ち、これまでに6,000万台以上の市販車に関わっていることでも知られ、様々な日本車のデザインにも関わってきたほか、最近だと「GT-R 50 by Italdesign」の製造を行ったこと(デザインは日産)、そしてNSXのレストモッドを手掛けていることでも話題となっていますね。

日産R35 GT-R 50 by イタルデザインの売り物件がまた登場!なおGT-R 50は今年7月に受注を終了、予定台数の50台が完売したのかどうかはナゾのまま
日産R35 GT-R 50 by イタルデザインの売り物件がまた登場!なおGT-R 50は今年7月に受注を終了、予定台数の50台が完売したのかどうかはナゾのまま

| やはりGT-Rに対してこの価格は(いかに特別感があったとしても)高すぎたのかもしれない | しかしながら長期的に見ると価値を上げるのは間違いなだろう さて、先日は鹿児島県よりまさかの売り物が登場し ...

続きを見る

1. 創業者:ジョルジェット・ジウジアーロ

  • 伝説のデザイナー: 創設者の一人であるジョルジェット・ジウジアーロは、1999年に「カー・デザイナー・オブ・ザ・センチュリー」に選ばれた”自動車史において最も影響力のある人物”の一人※すでに保有していた株式を売却しており、現在はイタルデザインとの関わりを持たない
  • 哲学: デザインの美しさだけでなく、生産性や機能性を極めて重視する「実用的な美」が特徴」」

DSC04568

2. 代表的な作品(自動車)

世界中のメーカーにデザインを提供しており、誰もが一度は目にしたことがある名車が並びます。

  • フォルクスワーゲン: 初代ゴルフ、初代パサート、初代シロッコ
  • フィアット: 初代パンダ、ウーノ、プント
  • 日本車: 初代マーチ、いすゞ・117クーペ、スバル・アルシオーネSVX、トヨタ・アリスト
  • その他: デロリアン(DMC-12)、ロータス・エスプリ、BMW M1

3. 現在の体制

  • VWグループ傘下からIT企業傘下へ: 2010年にフォルクスワーゲングループ(アウディやランボルギーニなど)の傘下に入り、グループ全体の戦略的なデザイン・技術拠点へ。2025年12月には支配株式を米IT企業「UST」へと売却し、「デジタルトランスフォーメーション」を行うことがアナウンス(VWグループはすべての株式を手放したわけではなく、今後も関係性を保つ予定)、「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)」の開発能力を強化することが期待されている
  • 幅広い事業領域: 自動車だけでなく、鉄道車両、航空機の内装、カメラ(ニコン)、家具、さらには時計やパスタなど、幅広い分野の工業デザイン(インダストリアルデザイン)を手掛けている

あわせて読みたい、イタルデザイン関連投稿

イタルデザインが2,145馬力のクワッドモーターEV「クインテッセンツァ」を発表。米国に拠点を新設し現地自動車メーカーとの協業を展開する計画も公表
イタルデザインが2,145馬力のクワッドモーターEV「クインテッセンツァ」を発表。米国に拠点を新設し現地自動車メーカーとの協業を展開する計画も公表

Image:Italdesign | イタルデザインは他のカロッツェリアに比較すると「自動車メーカー」に近い機能を有しており高い開発力を誇っている | 今後のイタルデザインの展開には大いに期待したい ...

続きを見る

イタルデザインが50年前に「アウディの2ドアクーペ」として製作し、後にVWシロッコとして市販されたコンセプト「アッソ・ディ・ピッチェ」をデジタル復刻
イタルデザインが50年前に「アウディの2ドアクーペ」として製作し、後にVWシロッコとして市販されたコンセプト「アッソ・ディ・ピッチェ」をデジタル復刻

| もちろん2023年版としてピュエレクトリックへ、そしてディティールもアップデートされている | ぜひ市販してほしいものだが、残念ながら「デジタルバージョンのみ」しか存在しないバーチャルコンセプト ...

続きを見る

トヨタが2004年にイタルデザインと共同で開発した「アレッサンドロ・ボルタ」。発売されていたら世界が変わっていたであろう、「V6をミドシップにマウントしたハイブリッド4WDスーパースポーツ」

| トヨタがこれほどまでに美しいクルマを作っていたのは今でも信じられない | トヨタが2004年にジュネーブ・モーターショーにて発表したコンセプトカー、アレッサンドロ・ボルタ(Alessandro V ...

続きを見る

参照:Italdesign(Instagram)

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

->BMW(ビー・エム・ダブリュー)
-, , , , , ,