
Image:Porsche / Xiaomi
| かつて欧州車は「富のシンボル」であり憧れの対象であったが |
しかし現在では中国車が高い魅力を備えるにいたり、ポルシェはその価格の高さを正当化することができないでいる
さて、現在ポルシェにおいて深刻だとされる問題が「中国での販売減少」。
というのも中国の顧客はポルシェを避けてシャオミのSU7のような国産車を選ぶ傾向が強くなっているためで、その理由は「ポルシェのクルマが高すぎ、にもかかわらず欲しい技術ガジェットや機能が不足しているから」。
実際のところポルシェの中国での販売は2024年に28%減少し、タイカンの販売台数はほぼ半減しているわけですね。
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ポルシェがついに自動車において中国の「家電メーカー」の後塵を拝することに
つい先日、シャオミはSU7ウルトラにて上海インターナショナルサーキットへのチャレンジを行い、ここではポルシェ・タイカン・ターボGTの持つ「ラップタイムと最高速」両方の記録を更新していますが、これはポルシェにとってサーキットでの順位が2位になったことにとどまらず、もっと深刻な問題が発生しつつあることを示唆しています。
これまで中国の人々は「見栄とメンツ」を気にしてポルシェのようなプレミアムカーメーカーのクルマを選ぶ傾向が強かったものの、現在、中国の自動車購入者は、長年「富の象徴」でもあった欧州ブランドに見切りをつけ、国産の中国ブランドに目を向け始めているわけですが、これは中国の消費者のマインドが大きく変化しつつあることを示しているのかもしれません。
参考までに、中国がかつて「一人っ子政策」を導入していた時期、「二人目や三人目の子どもを持つと高額な罰金を支払う必要があったものの」、富裕層たちはこぞって二人目以降の子どもを持ち、それによって「自分は罰金を余裕で支払う財力がある」ことを誇示していたといい、関税によって非常に高くなる輸入車、さらにはプレミアムカーブランドをあえて選ぶ理由もここにあったのだとも考えられます。
Anyone who knows design knows the @Pantone color cards. Just as the Porsche 911 is the archetype for all sports cars, Pantone is the color standard system the world of design references.
— Porsche (@Porsche) September 5, 2024
As the first outside brand represented in Pantone’s Fashion Color Trend Report, we’re proud… pic.twitter.com/We3ZmOKgri
しかし現在の中国では「国産車比率」が新車販売において50%を超え、つまりはポルシェのみならず自動車業界全体において大きなパラダイムシフトが発生しており、「見栄よりも実利を取る」という傾向が強まっているのだとも推測可能。
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もちろんこれには「中国車の魅力向上」「中国車の選択肢の増加」「景気後退による可処分所得の減少」「愛国教育」などさまざまな要素があるかと思われ、しかし大きな要素はやはり「消費者が賢くなり欧州プレミアムカーブランドの幻影に惑わされなくなった」であろうこと。
シャオミは言わずとしれた「家電メーカー」ではありますが、つい昨年にはじめてのEV「SU7」を発売したばかりで、このSU7はタイカンを明らかに意識したデザインを持ち、しかし「出力はもっと高く」「しかし価格はより低く」。
上海での記録を打破したSU7 ウルトラはタイカン・ターボGTの半額以下にて販売され、しかし出力は1,527馬力で、ポルシェの1,092馬力を上回っているわけですね。
Image:Xiaomi
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スマホメーカー、シャオミのEV第一号「SU7」ついに発売。受注開始後4分で1万台、27分で5万台の受注を獲得。「価格はテスラの下、機能はテスラの上」が奏功か
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ナティクシス・コーポレート&インベストメント・バンキングのエコノミスト、ゲイリー・ン氏はニューヨーク・タイムズに対して「現在、中国の消費者は、中国の企業が自分たちにとってプレミアムな車を生産できることを受け入れる準備ができていると思います」と語っており、もはや中国の消費者は「もう欧州のプレミアムカーの幻影に支配されることはない」といった状況にあるのかもしれません。
欧州車は「時代遅れ」
そして中国の消費者が欧州プレミアムカーから中国車にシフトする別の理由として「中国人が好む機能やデザインを備えていない」というものが考えられますが、現在の中国車はこれまでの「日米欧の自動車のコピー」を脱し独自の進化を遂げていて、その「ツルッとしたボディ表面、格納式ドアハンドル、細長いLEDストリップ、コンパクトなヘッドライト」というデザイン、さらには「自動運転、車内エンターテイメント、各種アシスタンス機能やアバター、コンシェルジュ、タンクターンや空気清浄機能、カニ歩き」、はたまた水上航行機能など、を保有しているわけですね。
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もはやクルマのデザイン、機能は「中国の嗜好」に合わせねば自動車メーカーは生き残れない。VW/ポルシェのデザイナー「中国市場のために変革の必要性を感じている」
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これらは日米欧の自動車メーカーや消費者の多くが「不要」あるいは懐疑的だと捉える機能ではありますが、中国の自動車市場においては「実際に求められる機能」でもあり、日米欧の自動車メーカーはこういった機能をもたないため、中国の消費者に「時代遅れ」だと認識されているのだと思われます。
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中国車がまた驚くべき機能を実装する。クルマが真横に動いて「あっさりと」駐車スペースに収まり、これによって縦列駐車が不要に
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実際のところ、ポルシェにはまだ、レベル3(完全自動運転)やレベル2の運転支援システム(後者はモバイルアイと共同開発中で、今年登場予定)を搭載した車両は存在せず、しかしSU7にはLidar(ライダー)と56インチのヘッドアップディスプレイが搭載されていて、おまけにシャオミのスマートフォンやAIの技術を駆使することにより、ドライバーがクルマに乗り込む際、スマホのインターフェースをSU7のメディアスクリーンに一度のボタンで転送することが可能です。
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【動画】元フェラーリやマクラーレンのデザイナーが中国自動車メーカーの躍進を語る!業界トップレベルの認識では「中国メーカーはすでに侮れないポジションにいる」ようだ
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#XiaomiSU7 Max lets you drive back onto the road with an incredible 510 kilometers of range in just 15 minutes of charging.
— Xiaomi (@Xiaomi) March 28, 2024
Even the standard SU7 isn't far behind, offering a 350-kilometer range boost in the same timeframe. #XiaomiEVLaunch #DrivingForward pic.twitter.com/9XkDfBKazH
さらにポルシェやフェラーリのようなスポーツカーブランドは、他のブランドに先駆けてADASシステムを提供することを避けており、それは純粋なドライバーズカーとしての評判を守りたいからであり、たとえばBYDがつい先週、ドライバーなしでサーキットを走らせたようなデモンストレーションを行うことはありません。
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BYDがテスラに対抗する自動運転システム「ゴッドアイ(God’s Eye)」を発表、同社のハイパーカー”U9”に搭載し完全無人にてサーキットを走行させることに成功
Image:BYD | 正直、中国の自動車業界はぼくらの認識の「ずっと上」を行っていると考えていい | そしてその進化の速度も「想像の遥か上」である さて、先日BYDはテスラのオートパイロットに対抗す ...
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そういった背景がある一方、中国の消費者は実利的で、運転の楽しさという古典的な概念に執着しておらず、「手をこまねいている暇はない、ただ技術をくれ」と言わんばかりにポルシェを無視し、より先進的なシステムを搭載したクルマ(例えばSU7)を購入しているわけですが、これはタイカン購入者の平均年齢が他の国ぐりよりもぐっと若い(2021年の統計ですが)33歳だったという事実が示す通り、消費者がブランドを変えることに対して柔軟である可能性、新しい技術に対して理解を示すという可能性を示唆しています。※中国のスマートフォン市場が(アップルを除き)中国メーカーの独壇場になっていることを考慮すると未来の自動車業界がどうなるかを予測することができる
Porsche on the road, @Delta in the sky. pic.twitter.com/tMr2o51qaL
— Porsche (@Porsche) January 2, 2025
つまり、ドイツ、アメリカ、日本のみならず韓国のブランドすらも「ソフトウェアで定義された車両の重要性を過小評価していた」と考えて良さそうですが、シャオミは昨年「中国のみで」10万台を販売し、一方のポルシェは「世界全体で」21,000台しか販売できなかったという事実を見るに、現在の中国のトレンドが”中国を飛び越え”世界へと広がってゆくのかもしれませんね(今すぐではないであろうが、クルマの購入層がより下の世代になれば、中国と同様のことが起こり得るとも考えられる)。
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参照:CARBUZZ