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【新潮流】中国、EVの「目」を世界最高水準へ。吉利・NIOら30社が集結し「照明品質向上プロジェクト」発足、今後これが世界基準に?

中国車

| いまや中国市場の「トレンド」「規制」は世界中の自動車メーカーにとって無視できない存在に |

この記事のポイント(要約)

  • 業界を挙げた大号令:中国自動車工業協会(CAAM)主導にて、NEVの照明・視覚システムの信頼性を高める特別イニシアチブが発足
  • オールスターが勢揃い:吉利(Geely)、長城汽車(GWM)、NIO、Li Autoに加え、ファーウェイ(Huawei)ら30社以上が参加
  • 背景にある課題:高度な「アダプティブ・ライティング」の普及に伴う、故障率の低減と標準化が急務に
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なぜ今、EVの「ライト」に品質管理が必要なのか?

中国のNEV(新エネルギー車)市場は単なる電動化のフェーズを終え、インテリジェント化(スマート化)の激戦区となっているのは周知の通り。

その中で、かつては「夜道を照らすだけ」だったヘッドライト、さらに「停止を知らせるだけ」だったテールランプが、今や高度なコンピューター制御によって「周囲とコミュニケーションを取るデバイス」へと進化しつつあるといった状況です。

しかしながら技術の進化に伴い、複雑な電子制御による信頼性の確保が新たな課題となっており、そこで中国政府と主要メーカーが世界に先駆けて「インテリジェント照明」の品質基準を統一する動きを見せた、というのが今回の経緯だと報じられています。

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なお、現在中国のトレンドや規制は日米欧の自動車メーカーにとっても無視できるものではなく、というのも「世界最大の」自動車マーケットである中国市場で「売ろう」と考えるならばこれに従う以外の道が存在しないから。

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そのためマツダ、日産、ホンダ、トヨタといった自動車メーカーは中国のパートナーとの共同開発によって「中国専用の」、そして中国市場で好まれるデザインや機能を採用したクルマを発売し、そして好評を得ているのも「実情」です。

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さらにアウディは現地専用ブランドを立ち上げてまで「中国市場の特異性」に適合しようとしているのが現在の状況ですが、今回の「灯火類」に関する新しい動きについても無視できるものではなく、これに追従せねば「中国市場から締め出される」こととなる可能性を秘めています。

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常州で産声を上げた「インテリジェント照明イニシアチブ」

そして今回の「インテリジェント車両照明および視覚システム特別イニシアチブ」は、2025年12月末、江蘇省常州市で開催された全国業界会議において提唱されたもので、おそらくは非常に強い影響力を持つものと思われます。

主な参加メーカーとサプライヤー

このプロジェクトには、中国の自動車産業の主要プレイヤーがほぼすべて名を連ねており・・・。

  • 主要メーカー:第一汽車(Hongqi)、BAIC(北京汽車)、吉利汽車(Geely)、長城汽車(GWM)、NIO、Li Auto(理想汽車)、Seres(AITO)、JAC、中国重汽(Sinotruk)
  • テクノロジー・サプライヤー:Huawei Yinwang(華為)、Huayu Vision、Damo DVIなど

焦点は「市場拡大」ではなく「信頼性」

今回の会議が特筆すべきなのは、販促やシェア争いではなく、「技術的な信頼性」と「検証プロセスの標準化」に特化している点。

  • アダプティブ・ライティング:対向車を眩惑させない緻密な配光制御
  • センシング連携:ADAS(自動運転支援システム)と連動した視覚情報の補完
  • 電子制御の堅牢性:ソフトウェア更新(OTA)にも耐えうるハードウェアの耐久性向上
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業界概要:2026年、中国EVは「光」で差別化する

中国のNEV市場では、ライトを使って路面に文字を投影したり、歩行者に合図を送ったりする機能が一般化しつつありますが、今回のイニシアチブは、これらを「贅沢なオプション」から「信頼性の高い標準機能」へと昇華させる狙いがあるのだそう。

項目詳細
主導組織中国自動車工業協会(CAAM)
主なテーマ構成部品レベルの信頼性ガバナンス、品質ベンチマークの定義
背景高度なインテリジェント運転機能における「視覚システム」の重要性増大
目標サプライヤーとメーカー間の開発・検証プロセスの整合

参考:ファーウェイの参画が意味すること

今回、サプライヤーとしてファーウェイ(Huawei Yinwang)が名を連ねていることは非常に重要な意味を持っており、というのも同社は「xPixel」などの超高精細プロジェクション技術を保有していることで知られ、今回のイニシアチブを通じてOSやセンサーだけでなく「光」の分野でも中国EVのOS(基本OS)的ポジションを狙っていることが伺えるから。

よって今回のイニシアチブ発足は、うがった味方をするならば、ある種の「外国資本の自動車メーカーを締め出す動き」であるとも考えられます。

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結論:中国が「照明のグローバル基準」を書き換える日

伝統的に(アウディやBMWなど)欧州の高級ブランドが「強い」という印象がある照明技術の分野ではあるものの、中国はNEVの圧倒的な普及スピードを武器にデジタル照明の「品質とコストの標準」を握ろうとしています。

このプロジェクトが成功すれば、世界中のEVメーカーは「中国市場での競争力を確保するため」中国製の安価で高信頼な照明モジュールを採用せざるを得なくなるかもしれず、あるいは規制による「非関税障壁」となる可能性も。

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そしてコロコロ変わるのが中国の規制における特徴でもあり、今回もしなんらかの「規制」「基準」が確立したとして、それが将来的にまた「変わる」可能性も否定できず、そうなると「格納式ドアハンドル」のように、各社とも「コストを投じて開発し、しかしせっかく開発したのにまたコストをかけてもとに戻さなくてはならない」状況へと陥ってしまうのかもしれません。

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参照:CarNewsChina

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