
| マツダはロードスターに関して様々な表現を模索している |
これまでにもいくつかの「お蔵入り」コンセプトカーがお披露目されているが
マツダの軽量スポーツカーの代名詞「ロードスター(MX-5)」。
かつてV6エンジン搭載モデルが試作され市販化目前まで迫っていたという驚きの秘話が明らかに。
2026年2月、マツダ・モーター・ヨーロッパの研究開発担当ディレクター、クリスチャン・シュルツェ氏が語った内容によると、約20年前(NB型からNC型への端境期)、技術者たちが「情熱」だけを原動力にV6プロトタイプを極秘に製作したのだそう。
しかし、ある「見た目」の問題によってその計画が葬り去られた、と語っています。
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この記事のポイント(30秒でわかる要約)
- 極秘プロジェクト: 約20年前、マツダの技術者が勤務時間外に「情熱」のみを頼りに2.5L V6搭載のロードスターを試作
- 驚きのパワー: MX-6などに搭載されたKシリーズV6を採用。当時の4気筒を遥かに凌ぐトルクと走りを実現
- 不採用の理由: エンジンが「高すぎた」。ボンネットが異常に盛り上がり、「美しくない」というデザイン上の問題で却下
- 未来への示唆: 次世代「NE型」の電動化においても、マツダが「重量バランス」と「パッケージング」を最優先することを再確認
エンジニアの「遊び心」から生まれたモンスター
ロードスターの歴史において、常に付きまとう不満が「パワー不足」。※特に北米ではこの問題が強く指摘されている
これを解消すべく、約20年前にマツダのエンジニアたちは、ワークショップで密かに2.5リッター V6エンジンをプロトタイプのエンジンルームに押し込んだことが明らかになっており、シュルツェ氏によれば、この「V6 ミアータ」のドライビング体験は「間違いなく興味深いものだった」とのことで、V6特有のフラットなトルクカーブは軽量なロードスターに異次元の加速をもたらした、と述べています。
なぜボツに?「醜い盛り上がり」という致命傷
走行性能は素晴らしかったものの、市販化を検討した際に2つの大きな壁が立ちはだかることになり・・・。
1. 「見た目」が最悪だった(パッケージング問題)
これがV6ロードスター市販化を阻んだ最大の理由であり、V6エンジンは4気筒に比べて全高が高く、ロードスターの低いボンネットの下に収まらず、しかし無理に載せた結果、ボンネットが不自然に盛り上がることに。これがマツダが掲げる「美学」に反する醜い外観になってしまった
2. 重量のバランス崩壊
2.5L V6は標準の4気筒よりも大幅に重く、ロードスターの命である「50:50の前後重量配分」を維持するためには、車両全体の再設計が必要であった
| 項目 | 当時の標準モデル (NB/NC) | V6 プロトタイプ |
| エンジン | 1.8L / 2.0L 直4 | 2.5L V6 (Kシリーズ) |
| 最高出力 | 約 140 hp 〜 170 hp | 約 200 hp |
| 最大トルク | 約 161 Nm 〜 189 Nm | 約 224 Nm |
| 致命的な欠陥 | なし(黄金バランス) | ボンネットが高すぎて「不細工」 |
正直なところ、「大きくボンネットが盛り上がった」迫力満点のロードスターを見たかったという気もしますが、マツダは他の自動車メーカーに比べるとデザイナーの意見が非常に強いとされ、よってデザイナーは己の美意識に従って「(強烈な)NO」を突きつけたのでしょうね。
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さらにいえば、前後重量配分を改善するため、トランスアクスル化したロードスターを発売していれば、それはそれで「歴史を上書きするレベルの名車」となっていたのかもしれません(ただし価格は高くなっていたであろう)。
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- バッテリーの重さ: V6エンジン以上の重量物であるバッテリーをどう積むか
- 低重心の維持: ボンネット(あるいは車高)を高くせず、いかに美しいシルエットを守るか
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マツダは「美しいデザインと完璧なハンドリングを損なうくらいなら、パワーアップはしない」という姿勢を、20年前のV6プロトタイプから学んでいたわけですね。
実際のところ、NDロードスターではダウンサイジングを敢行し、そしてNA以降だと「最も売れたロードスター」となっているので、マツダの判断は間違っていなかったのだと考えることが可能です。
結論:ロードスターは「バランスの芸術」である
もし20年前にV6モデルが発売されていたら、ロードスターはその方面にて進化を続け「マッスルカー」のような存在になっていたのかも。
しかしマツダは、見た目の美しさと軽快さを選ぶことで、今の「世界で最も愛されるオープンカー」という地位を守り抜き、「パワーが欲しければアフターパーツで」――メーカーとしてのマツダの回答は、20年前から変わらず、そしてこれからもNE型へと引き継がれていくこととなりそうです(ただしハイブリッド化されると、パワートレーンの改造は困難であろう)。
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参照:CARBUZZ
















