>マツダ(MAZDA)

マツダは極秘「V6ロードスター」を試作していた。市販化を阻んだ「たった一つの問題」、そして悲劇とは

マツダは極秘「V6ロードスター」を試作していた。市販化を阻んだ「たった一つの問題」、そして悲劇とは

| マツダはロードスターに関して様々な表現を模索している |

これまでにもいくつかの「お蔵入り」コンセプトカーがお披露目されているが

マツダの軽量スポーツカーの代名詞「ロードスター(MX-5)」。

かつてV6エンジン搭載モデルが試作され市販化目前まで迫っていたという驚きの秘話が明らかに。

2026年2月、マツダ・モーター・ヨーロッパの研究開発担当ディレクター、クリスチャン・シュルツェ氏が語った内容によると、約20年前(NB型からNC型への端境期)、技術者たちが「情熱」だけを原動力にV6プロトタイプを極秘に製作したのだそう。

しかし、ある「見た目」の問題によってその計画が葬り去られた、と語っています。

車重なんと850kg、しかもV6 / 375馬力のマツダ・ロードスターの究極チューニングパッケージ「Keiryo(軽量)」が提供開始
車重なんと850kg、しかもV6 / 375馬力のマツダ・ロードスターの究極チューニングパッケージ「Keiryo(軽量)」が提供開始

Image:Rocketeer Cars | 【パワーウェイトレシオの怪物】「軽量(Keiryo)」ロードスターが英国より | 出力は375馬力、パワーウエイトレシオはフェラーリF40と同格同等レベル ...

続きを見る

mazda-roadster1

この記事のポイント(30秒でわかる要約)

  • 極秘プロジェクト: 約20年前、マツダの技術者が勤務時間外に「情熱」のみを頼りに2.5L V6搭載のロードスターを試作
  • 驚きのパワー: MX-6などに搭載されたKシリーズV6を採用。当時の4気筒を遥かに凌ぐトルクと走りを実現
  • 不採用の理由: エンジンが「高すぎた」。ボンネットが異常に盛り上がり、「美しくない」というデザイン上の問題で却下
  • 未来への示唆: 次世代「NE型」の電動化においても、マツダが「重量バランス」と「パッケージング」を最優先することを再確認
mazda-roadster116

エンジニアの「遊び心」から生まれたモンスター

ロードスターの歴史において、常に付きまとう不満が「パワー不足」。※特に北米ではこの問題が強く指摘されている

これを解消すべく、約20年前にマツダのエンジニアたちは、ワークショップで密かに2.5リッター V6エンジンをプロトタイプのエンジンルームに押し込んだことが明らかになっており、シュルツェ氏によれば、この「V6 ミアータ」のドライビング体験は「間違いなく興味深いものだった」とのことで、V6特有のフラットなトルクカーブは軽量なロードスターに異次元の加速をもたらした、と述べています。

L1180599

なぜボツに?「醜い盛り上がり」という致命傷

走行性能は素晴らしかったものの、市販化を検討した際に2つの大きな壁が立ちはだかることになり・・・。

1. 「見た目」が最悪だった(パッケージング問題)

これがV6ロードスター市販化を阻んだ最大の理由であり、V6エンジンは4気筒に比べて全高が高く、ロードスターの低いボンネットの下に収まらず、しかし無理に載せた結果、ボンネットが不自然に盛り上がることに。これがマツダが掲げる「美学」に反する醜い外観になってしまった

2. 重量のバランス崩壊

2.5L V6は標準の4気筒よりも大幅に重く、ロードスターの命である「50:50の前後重量配分」を維持するためには、車両全体の再設計が必要であった

L1180614
項目当時の標準モデル (NB/NC)V6 プロトタイプ
エンジン1.8L / 2.0L 直42.5L V6 (Kシリーズ)
最高出力約 140 hp 〜 170 hp約 200 hp
最大トルク約 161 Nm 〜 189 Nm約 224 Nm
致命的な欠陥なし(黄金バランス)ボンネットが高すぎて「不細工」

正直なところ、「大きくボンネットが盛り上がった」迫力満点のロードスターを見たかったという気もしますが、マツダは他の自動車メーカーに比べるとデザイナーの意見が非常に強いとされ、よってデザイナーは己の美意識に従って「(強烈な)NO」を突きつけたのでしょうね。

V8なんぞ生ぬるい。これぞまさに「魔改造」、ランボルギーニのV10エンジンをスワップしたマツダ・ロードスター(NA)が登場、ちゃんと走るのか心配に【動画】
V8なんぞ生ぬるい。これぞまさに「魔改造」、ランボルギーニのV10エンジンをスワップしたマツダ・ロードスター(NA)が登場、ちゃんと走るのか心配に【動画】

Image:miata tweets | おそらくはとんでもないフロントヘビー、リヤタイヤが空転し前に進まないかもしれない | いったいなぜこのクルマを作ろうと考えたのかは疑問である さて、北米でのチ ...

続きを見る

さらにいえば、前後重量配分を改善するため、トランスアクスル化したロードスターを発売していれば、それはそれで「歴史を上書きするレベルの名車」となっていたのかもしれません(ただし価格は高くなっていたであろう)。

マツダ
マツダは2007年、NDロードスターと新型RX-7の開発を同時にスタートさせていた。共通の車体をもって発売されるはずだったが2008年の経済恐慌によってRX-7復活の夢が潰える

| 新型RX-7の発売は「かなわぬ夢」だと思われていたが、実は実現に向けて動いており、思ったよりも近いところにまで来ていた | 新型RX-7の開発中止によってリソースがすべてNDロードスターに振り分け ...

続きを見る

L1240089
こんなコンセプトカーもあった。ロードスターベースで一人乗り、ターボ付き。「マツダ・モノポスト(2000)」

| マツダはSEMAでシングルシーターのロードスターを発表していた | マツダが2000年に発表したコンセプトカー、「マツダ・モノポスト」。 発表の場はカスタム/チューニングカーイベント、「SEMA( ...

続きを見る

次世代「NE型」ロードスターへの教訓

しかしながらこの20年前の失敗は”無駄”ではなく、現在マツダが開発を進めている次世代「NE型」ロードスターの設計思想に直結しています。

マツダ・ロードスター開発担当「ロードスターには譲れない特徴があります。電動化によってそれを失えば、もうそれは我々の知るロードスターではない」
マツダ・ロードスター開発担当「ロードスターには譲れない特徴があります。電動化によってそれを失えば、もうそれは我々の知るロードスターではない」

| おそらく現行ND世代のロードスターは延命され、その後にマイルドハイブリッド版が登場するものと思われる | 超軽量なロードスターだけに、「わずかな」重量増加ですら命取りとなりそうだ さて、先日よりチ ...

続きを見る

NE型は、環境規制対応のためにハイブリッド(電動化)されることがほぼ確定しているとも報じられ、しかしフルEV(電気自動車)にならない理由は、まさにこの「重量」と「パッケージング」の問題があるからで・・・。

  • バッテリーの重さ: V6エンジン以上の重量物であるバッテリーをどう積むか
  • 低重心の維持: ボンネット(あるいは車高)を高くせず、いかに美しいシルエットを守るか
マツダ
【新特許公開】マツダ「電動ロードスター」はこうなる?軽快な運動性能を実現する「ミドシップ」バッテリー配置が革命的

| 次期NEロードスター(ND後継)にもつながる?電動ロードスターの可能性とは | マツダはあくまでも「マツダらしいやり方で」様々な問題を解決する 世界中のクルマ好きを虜にしているスポーツカーがマツダ ...

続きを見る

マツダは「美しいデザインと完璧なハンドリングを損なうくらいなら、パワーアップはしない」という姿勢を、20年前のV6プロトタイプから学んでいたわけですね。

実際のところ、NDロードスターではダウンサイジングを敢行し、そしてNA以降だと「最も売れたロードスター」となっているので、マツダの判断は間違っていなかったのだと考えることが可能です。

L1240080

結論:ロードスターは「バランスの芸術」である

もし20年前にV6モデルが発売されていたら、ロードスターはその方面にて進化を続け「マッスルカー」のような存在になっていたのかも。

しかしマツダは、見た目の美しさと軽快さを選ぶことで、今の「世界で最も愛されるオープンカー」という地位を守り抜き、「パワーが欲しければアフターパーツで」――メーカーとしてのマツダの回答は、20年前から変わらず、そしてこれからもNE型へと引き継がれていくこととなりそうです(ただしハイブリッド化されると、パワートレーンの改造は困難であろう)。

マツダ・ロードスター開発責任者「我々はロードスターにつき、ポルシェ911のように、ただ微調整をひたすら続けながら改良を続けたいのです」
マツダ・ロードスター開発責任者「我々はロードスターにつき、ポルシェ911のように、ただ微調整をひたすら続けながら改良を続けたいのです」

| まだまだ先のことはわからないが、現行ND世代のロードスターが寿命を迎えるのはまだまだ先になりそうだ | 現行NDロードスターはライフサイクル中、あと一回はフェイスリフト(マイネーチェンジ)を迎える ...

続きを見る

mazda-roadster121
マツダが「パワーアップ」について語る。「レスポンス、吹け上がりを重視しターボは採用しない」「改造は制限しない。出力向上はアフターマーケットを利用してほしい」
マツダが「パワーアップ」について語る。「レスポンス、吹け上がりを重視しターボは採用しない」「改造は制限しない。出力向上はアフターマーケットを利用してほしい」

| たしかにターボエンジンを搭載すれば現在より遥かに重くなり、そうなればロードスターの意味はなくなってしまうだろう | マツダはユーザーが楽しむための「最適なベースモデル」を提供したいと考えているよう ...

続きを見る

合わせて読みたい、マツダ関連投稿

「ロードスターの父」マツダのデザイナー、トム・マタノこと俣野努氏が逝去―享年76歳、「ミアータ・パパ」として親しまれる
「ロードスターの父」マツダのデザイナー、トム・マタノこと俣野努氏が逝去―享年76歳、「ミアータ・パパ」として親しまれる

| また一人、偉大なデザイナーがこの世を去る | マタノ・ツトム氏、76歳で逝去 マツダ・ロードスター(MX-5 ミアータ)の「父」として知られる自動車デザイナー マタノ・ツトム(俣野努 / トム・マ ...

続きを見る

マツダ・ロードスター
排ガス規制の壁を越え、次世代マツダ・ロードスターは2.5リッター4気筒エンジンを搭載へ。一方で重量は「1トン以下」

| 新型「NE」ロードスターはガソリンエンジン、マニュアル・トランスミッションを維持 | エンジンは排ガス規制へと対応するため「低回転トルク重視型」へとスイッチか さて、ここ最近チョコチョコと噂が出て ...

続きを見る

Toyota
次期マツダ・ロードスターとGR86は「共同開発」?ボクはこれが実現すれば「Win-Win」、さらに両者の人気を高めることになると考えている

| 現在、手に入れやすい価格のスポーツカーが生き残る道は非常に少ない | 現代ではクルマの「味付け」の幅が広がり、同じコンポーネントを使用しても「違うクルマ」のように仕上げることが可能である さて、現 ...

続きを見る

参照:CARBUZZ

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

->マツダ(MAZDA)
-, , , , ,