
| ここからの「巻き返し」に期待がかかる |
しかしながらステランティスにはすぐに対応できる「有効な手」が殆ど残されていない
ステランティス(Stellantis)グループから世界の自動車業界を揺るがす衝撃的な決算報告がなされ、「EV(電気自動車)への巨額投資が裏目に出て、260億ドル(約4兆円弱)という空前絶後の赤字」を計上することに。
決算発表では「EV一本」戦略の限界を認め、ガソリンエンジン回帰へと舵を切る劇的なパラダイムシフトを発表しています。
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ステランティスが設立以来初の年間純損失と巨額赤字を計上する可能性。EV戦略の「巻き戻し」が招いた3.5兆円の代償とは
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この記事の要約
- 歴史的損失:2025年度に263億ドル(約223億ユーロ)というグループ初の最終赤字を計上
- 戦略の完全修正:EV化のペースを「過大評価」していたと認め、開発中のEVプロジェクトを複数キャンセル
- 内燃機関(ICE)の逆襲:北米での「HEMI V8」復活や、欧州でのディーゼル・ハイブリッド拡充を決定
- 財務の立て直し:配当を停止し、59億ドルの債券発行で資金を確保。厳しい再建フェーズへ
ステランティスに何が起きたのか?赤字の正体
ジープ、ダッジ、アルファロメオ、マセラティなど14ものブランドを抱える巨大自動車グループ「ステランティス」が、崖っぷちに立たされています。
これまで強気に推進してきたEV化戦略が市場の需要と大きく乖離してしまい巨額の損失を招くこととなっていますが、CEOが自らこれまでの戦略を「過ち」だと認め、エンジン車へと回帰するその決断を示すことに。
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【新CEO誕生】ステランティス、苦境と波乱の中でジープCEO出身のアントニオ・フィローザ氏を新CEOに任命
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これは文字通りの大きな決断ではありますが、ステランティスはCEOの交代含め、今回の決断を下すのが「やや遅かった」のかもしれません。
2025年度の売上高は前年比2%減の1,535億ユーロとなりましたが、問題はその中身。
223億ユーロ(約263億ドル)という巨額の赤字は、主に「戦略的シフト」に伴う約254億ユーロの特別損失によるものです。
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ステランティス、EV戦略を「敗北」と認めて「無かったこと」にすると公表。4兆円近い損失を計上し「内燃機関重視」へと転換、V8エンジンの咆哮が蘇る
| ステランティスはようやく復活への道のりを見出すことに | 自動車業界に激震が走り、というのもマセラティやアルファロメオ、ジープやフィアットなどを傘下に持つステランティス(Stellantis)が、 ...
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■ 経営指標と今後の主要施策
| 項目 | 2025年度実績 / 決定事項 |
| 最終損益 | 263億ドルの赤字(前年は58億ドルの黒字) |
| 車両販売台数 | 557万台(世界5位、前年比1%増) |
| 主な撤回策 | 米国向けEVプロジェクトの複数中止 |
| 復活する技術 | HEMI V8エンジン、ディーゼル、マイルドハイブリッド |
| 財務対策 | 2026年の配当停止、約59億ドルのハイブリッド債発行 |
米国市場では、鳴り物入りで投入された「ダッジ・チャージャー・デイトナEV」や「ジープ・ワゴニアS」が高価ゆえに苦戦しており、競合他社に対して優位性を築けずに在庫が積み上がる結果となっています。
加えて欧州では中国製の安価なEVやPHEVに押されて大衆車セグメントの販売が圧迫され、さらにプレミアムブランドのマセラティも存在感を失うなど「現時点では」明るい光が見えないのがステランティスのいまの状況。
ただ、上述の通り、赤字の主な原因は「戦略シフト」によるもので、つまりは一時的なものと考えられるため、いったん方向を切り替えてしまえば「再び黒字に」復帰することは難しくないのかもしれませんね。
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元ステランティスCEO、「自動車メーカーは中国に飲み込まれ、生き残るのはトヨタとヒョンデ、BYDと吉利、あとはせいぜい2社くらい」
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驚きの「V8復活」と今後の商品戦略
ステランティスの再建シナリオの柱は、皮肉にも「一度捨てようとした技術」への回帰となっており・・・。
- 北米市場:熱狂的なファンの多い「HEMI V8エンジン」を再びラインナップに加え、高利益率が見込める大型エンジン車で現金を稼ぐ戦略
- 欧州市場:新型アルファロメオ・ステルヴィオやジュリアの投入を遅らせてでも、ディーゼル車やハイブリッド車の選択肢を再導入し、顧客の「選ぶ自由」を確保
アントニオ・フィローザCEOは、「エネルギー移行のペースを見誤ったコストを反映した結果だ」と述べ、顧客が本当に求めているのは「EV一択」ではないことを明確に認めることで「180度」ともいえる方向の転換を示しています。
世界5位からの反撃
ステランティスは、販売台数においてトヨタ、VW、現代、GMに次ぐ世界5位の座を維持していますが、2025年後半には出荷台数が前年同期比11%増となるなど、在庫調整が進み、復活の兆しも見え始めているという状態。
しかし、株価はPSAとFCAの合併(2021年)以来の低水準に落ち込んでおり、投資家の目は依然として厳しいのもまた事実であり、今回の「エンジン回帰」が、単なる後退ではなく、持続可能な収益への「現実的な軌道修正」として評価されるかどうかが2026年の焦点だと見られています。
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新しい発見:なぜ「今」エンジン車なのか?
実は、ステランティスのような多国籍企業にとって、EV一辺倒のリスクは「地域ごとのインフラ格差」となって現れることがあり、欧州のように「国や地域あげて」EV化を推進する場合はさほど問題とならないものの、米国では都市部以外の充電インフラ整備が遅れており、広大な国土を移動するユーザーにとってEVは依然として不便です。
つまり、「世界中でクルマを販売する巨大な自動車メーカー」が「EV一本」という戦略を採用すること事態に無理があったのだとも考えられます。
よって新CEOはこれまでの方針を覆して「14ものブランドを持つ多様性を活かし」、同じプラットフォームで「EVもガソリンも作れる」柔軟性(マルチエネルギー戦略)を生存戦略の核に据え直すことで、ステランティスならではのスケールメリットを活かせる方向へと舵を切り直しているというわけですね。
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結論:ステランティスは「現実主義」へ舵を切った
260億ドルの授業料は極めて高額ではありましたが、ステランティスはこの痛みを経て最も現実的な自動車メーカーへと変貌しようとしています。
「V8エンジンの咆哮」が再びショールームに戻ってくることはファンにとって朗報であると同時に、無理なEVシフトが引き起こす経済的リスクを世界に知らしめる結果ともなり、この2026年、新生ステランティスが再び黒字浮上できるか、その真価が問われている、といった状況です。
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参照:Stellantis

















