| 実際のところ、新生デロリアンのCEOはじめトップ4人はカルマの出身だった |
時期的なものを見てみると、カルマ在籍中から新生デロリアンの計画を行っていたのは間違いがないようだ
さて、先日華々しく復活をアピールし、新型車「アルファ5」を発表したデロリアン・モーターカンパニー。
そして新生デロリアンはアルファ5だけではなくSUVなど他モデルの発売も視野に入れていますが、今回カルマ・オートモーティブから「知的財産を盗んだ」として訴訟を起こされることに。
なお、このカルマ・オートモーティブはもともと(アストンマーティン等でデザイナーを務めた)ヘンリク・フィスカー氏が興した会社が発売したハイブリッドカー「カルマ」にルーツがあり、このカルマを権利ごと買い取った中国系企業が新しく設立したのが「カルマ・オートモーティブ」です。
デロリアンの重役4人は実際にカルマにて勤務していた
そして今回カルマの起こした訴訟について「事実に基づいている」と思わせるのが、新生デロリアンのCEOであるヨースト・デ・フリース氏、最高執行責任者のアラン・ユアン氏、最高マーケティング責任者のトロイ・ビーツ氏、副社長のニーロ・ハリスが実際にカルマにて勤務していたこと。
カルマの言い分によれば、2020年にこの4名がカルマに在籍していた頃、(バック・トゥ・ザ・フューチャーのタイムマシンで知られる)デロリアンDMC-12をベースにしたEV化プロジェクトが社内で持ち上がったといい、これは「プロジェクト88」として極秘裏に進められ、しかしこのプロジェクト自体が「情報を隠し、カルマの機密情報、資料、テンプレートを持ち出し、カルマの企業機密を自分たちのものとする」ことが目的だったと述べています。
そのためカルマはこの4人を「契約上の義務違反に抵触し」、「デロリアン・モーター・カンパニーとの取引を行った」うえ、「カルマの将来のビジネス関係を不法に妨害した」として訴訟を起こしているわけですね。
さらにカルマはこの4人が2021年8月~2022年2月にかけてカルマを退職しているものの、同時期に新生デロリアンプロジェクトが発足していて、この計画に(DMC-12の在庫やパーツ含め旧デロリアンを買い取った)スティーブン・ウィン氏も役員として参加していることも指摘しています。
かなりややこしいのですが、もともとのデロリアンは1980年代に倒産し、その会社と設備を買い取ったのがこのスティーブン・ウイン氏で、同氏は拠点をテキサス州ハンブルへと移して「デロリアン・モーター・カーズ(DMC)」を設立しています。
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そして今回新しくデロリアンを復活させたのは、もともとのデロリアンと同じ名前の「デロリアン・モーター・カンパニー(DMC。本社はテキサスだがスティーブン・ウイン氏のDMC」とは住所が異なる))」であり、資本関係は明らかではないのもの、スティーブン・ウイン氏が経営に参加していること、そして新生デロリアンの製造がスティーブン・ウイン氏のDMCにて行われるという報道を参照するに、新生デロリアンはスティーブン・ウイン氏、そして今回訴えられた4人との共同出資(もちろん他にも出資者がいるはず)と考えるのが妥当かも。
新生デロリアンの計画は2021年1月に発表されている
なお、新生デロリアンの計画は2021年1月に発表されており、これはくだんの4人が退職する7ヶ月前。
ただしそこから大きな動きはなく、2021年8月にはヨースト・デ・フリース氏が退職し、2021年12月には「新型デロリアンの資金調達と開発は大部分において終了している」とコメントしています。
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そして2022年2月には残る3人もすべてカルマを退職し、3月には新型デロリアン「アルファ5」が発表されたというのが時系列ですが、こういった流れを見るに、カルマが言うように、カルマ内での「デロリアンDMC-12電動化計画」そのものが「もともと社外に持ち出し新生デロリアンを作るためのプロジェクト」であり、カルマに在籍しつつも4人が外部と連絡を取りながら新会社の設立そしてアルファ5生産のための資金繰りと段取りをつけていたというのはいかにもありそうな話です。
ただ、訴えられた4人は「新しいデロリアン”アルファ5”と、カルマでは実現しなかったDMC-12電動版とは関係性がない」とコメント。
加えてアルファ5は完全に外部にて設計されたと主張しており、完全に不正行為を否定するとともに「カルマでのDMC-12電動化プロジェクトは、必要な資金そして物資を手配できなかったために消滅したのであって、しかしアルファ5はこういった少量生産のエレクトロモッドとは全く異なる、完全に新しい設計を持つ新世代の電気自動車」だとも。
ぼくとしては、正直カルマには「盗むべき技術もないだろう」と考えていますが、時期的にこの4人がカルマ在籍中に新生デロリアンプロジェクトを進めていたのは間違いなく、それが(協業との接触禁止など)契約違反に該当するかが焦点になるんじゃないかと推測。
そして新しいデロリアン「アルファ」はイタルデザインによってデザインされ、そのプラットフォームはウィリアムズ・アドバンスド・エンジニアリング製だと言われるので(DMCのサイトにはこれらがパートナー企業としては記されていない)、そこには当然カルマの出る幕はなく、カルマの技術についてはデロリアン・アルファに使用されていない可能性が高いだろうと考えています。
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