| たしかにEVは製造時や廃棄時には大きく環境に負荷をかけると言われることも |
加えてタイヤの摩耗、道路や駐車場に対する負担の大きさが指摘されることも少なくはない
さて、数十年にわたって自動車が環境に与える影響を調査してきた団体、グリーンカーズが「市場に登場するEVが増えているにもかかわらず、米国で入手可能な最新の完全電気自動車(BEV)はどれも、プリウスPHEVの効率を上回ることができない」という衝撃の結果を発表し業界を震撼させることに。
これは「EVは環境に優しい」「いかなる場合でも内燃機関を搭載するクルマは環境に対して悪影響を及ぼす」とされてきた従来の認識を大きく覆すもので、一部で言われていた「EVは実際のところ、それほど環境に優しいわけでは無い」という説を裏付ける結果となっています。
-
電気自動車の製造時には「ガソリン車の1.7倍のCO2を排出」していた!ボルボの試算だと、EVがガソリン車よりもエコになるには、約11万キロも走らねばならない
| ボルボがC40、XC40を用いて調査したというのだから間違いはなさそう | つまりEVは「距離を走らなければ」ガソリン車よりもよっぽど環境によろしくない ボルボは、COP26にて「ゼロエミッション ...
続きを見る
環境負荷は単に走行時のCO2排出量のみで語られるべきではない
今回グリーンカーズが調査した内容につき、温室効果ガスのライフサイクル評価に基づいているといい、各車両の生産、使用、廃棄に伴う汚染物質の排出量を基準としていることがポイントで、燃費(電費)のみに依存して車両の健康と環境への影響を評価する他団体の評価とは全く異なるということに着目する必要があります。
そのため、グリーンカーズは車両を”全体的かつ総合的な視点にて、環境に与える影響”をスコア付けしており、ガソリン車であっても電気自動車であっても、「 車両のエンジンが燃焼することで排出されるCO2」「車両が使用する電気によって生成される上流側(発電プラント)のCO2排出量」「バッテリー用の鉱物の採掘および加工時に生成されるCO2排出量」「車両および車両部品の製造から出るCO2」なども評価しています。
そしてこの評価は「グリーン スコア」と呼ばれ、モデルごとに生成されることにより「その車両がどの程度グリーンであるか」を評価できるようになるわけですね。
最もクリーンなクルマはトヨタ・プリウスPHEV
そしてグリーンカーズが判定した「現在アメリカで入手できるクルマのうち、もっともクリーンなのはトヨタ・プリウスPHEV」。
その理由としては「搭載するバッテリーが(EVに比較して)小さく、多くのアメリカ人が1日に走行する距離である平均44マイルをEVモードのみで走行でき、さらにバッテリーサイズに起因してEVよりも軽く、EVモードの際の電費も優れ、タイヤダストなどの飛散物も少ない」というもの。
逆に多くのEVは「大きなバッテリーを積み、その価格を正当化するために大きく重くなり、さらには余分な装備がたくさんついていて、クルマとして非効率的であるばかりか、バッテリーに使用する希土類の採掘や輸送に多くのCO2を発生している」としています。
-
ハマーEVは「環境に優しい」クルマとなるはずだったが・・・。実際はガソリンエンジン搭載セダンよりも多くのCO2を排出し、環境に負荷をかけるという試算結果
| ハマーEVはあまりに大量の電力を消費し、その分の電力の発電に際して発生するCO2はガソリン車よりも多い | このまま「パワフルで重い」EVを多くの自動車メーカーが作り続ければ、CO2削減からは大き ...
続きを見る
グリーンカーズはけしてEV否定派ではなく、あくまでも「環境第一」という視点にて今回の調査を行っており、その対象は「2024年に入手可能な1,200台の新車」。
そして調査項目は上述の通り、「走行中の自動車の二酸化炭素排出量」「バッテリーの製造時の排出量」などのほか、窒素酸化物、一酸化炭素、粒子状物質など、人間の健康に害を及ぼす可能性のある汚染物質の影響も評価していますが、EVはその重量に起因してタイヤがすぐに摩耗してしまうこと、道路も同時に摩耗させること、駐車場に構造的負担をかけることも報じられていて、このあたりを加味するともっとEVに分が悪い数字が出るのかもしれません。
-
「摩耗スピードはガソリン車の倍」。タイヤメーカー各社ともEV専用の「減りにくい」タイヤを開発しているが、ガソリン車用タイヤと比較してどう違うのか
| ボクの経験上では、EV用タイヤは一般にグリップが低く、ウェット性能では不安を感じる場合も | もちろんタイヤメーカーは最大限の「バランス」を実現しようと努力している さて、ちょっと前に話題となった ...
続きを見る
「最もクリーンなクルマ」ランキングはこうなっている
そしてこちらが「最もクリーンなクルマ」のランキングで、ランクインしているのはやはり小型で効率の良いクルマが多く、EVであってもコンパクトなモデルが多いようですね。
順位 | 車名 | パワートレーン | グリーンスコア |
1 | トヨタ プリウスPHEV | PHEV | 71 |
2 | レクサスRZ 300e | EV | 67 |
3 | ミニクーパーS E | EV | 67 |
4 | 日産リーフ | EV | 66 |
5 | トヨタ BZ4X | EV | 66 |
6 | トヨタ RAV4 PHEV | PHEV | 64 |
7 | ヒョンデ エラントラ ブルー | ガソリンハイブリッド | 64 |
8 | ヒョンデ コナ エレクトリック | EV | 63 |
9 | トヨタ カムリ LE | ガソリンハイブリッド | 63 |
10 | キア EV6 | EV | 63 |
11 | トヨタ カローラ | ガソリンハイブリッド | 62 |
12 | ヒョンデ アイオニック5 | EV | 62 |
「最もクリーンではない」クルマのランキングはこちら
そしてこちらがもっともクリーンではないクルマのランキング。
ガソリンエンジンを積むSUVが大半を占めていることに疑問を差し挟む余地はありませんが、なんと電気自動車であるハマーEVもランクインしており、ちょっと興味深い結果となっています(メルセデス・ベンツのほかはすべてアメ車)。
順位 | 車名 | パワートレーン | グリーンスコア |
1 | メルセデスAMG G63 | ガソリン | 20 |
2 | ラム1500 TRX | ガソリン | 22 |
3 | フォードF-150 ラプターR | ガソリン | 24 |
4 | キャデラック エスカレードV | ガソリン | 26 |
5 | ダッジ デュランゴ SRT | ガソリン | 26 |
6 | ジープ ラングラー 4X4 | ガソリン | 27 |
7 | ジープ グランドワゴニア 4X4 | ガソリン | 28 |
8 | メルセデス・ベンツ G550 | ガソリン | 28 |
9 | GMCハマーEV SUV | EV | 29 |
10 | GMCシエラ | ガソリン | 29 |
11 | シボレー・コルベット Z06 | ガソリン | 30 |
12 | メルセデス・マイバッハ S680 | ガソリン | 30 |
合わせて読みたい、関連投稿
-
まさかのトヨタ大逆転?EV普及のハードルが下がってもEVが売れず、調査機関はこぞって「これからしばらくはハイブリッドが主流となるだろう」と予測
| もちろんハイブリッドはトヨタが圧倒的にアドバンテージを持つ分野であり、その認知度も非常に高い | 一方、GMはじめいくつかの主要メーカーはEV重視政策のためハイブリッドに関しては無関心であった さ ...
続きを見る
-
トヨタがディーラーに対して「なぜトヨタはEVシフトを行わないのか、そしてなぜハイブリッドが優れるのか」を通知した文書がリーク。その内容が「もっとも」すぎた
| たしかに「EV一本に賭けた」自動車メーカーはこの先大きなリスクに直面することになるのかもしれない | とくに普及価格帯のクルマを販売する場合、EVシフトは中国の自動車メーカーとの厳しい競争に直面す ...
続きを見る
-
豊田章男会長「いかにバッテリー技術が進歩しても、電気自動車のシェアは30%にとどまり、残りはハイブリッドやFCV、水素エンジンで占められるだろう」
| 豊田章男会長の発言は年々「現実味」が増している | 現在の「EV販売減速」を見ていると、やはりEVは消費者が欲しがっている選択ではないのかも さて、なにかと電気自動車への移行の遅れを指摘されること ...
続きを見る