
| 以前より「大画面による操作系」の危険性はたびたび指摘されているが |
この記事の要約
- 研究の結論: タッチパネル操作により、車線逸脱のリスクが40%以上も増加
- 操作精度の低下: 運転中の画面操作は、静止時より正確性が58%もダウンする
- 脳への負荷: 物理ボタンの廃止により、ドライバーの「認知負荷」が限界を超えている
- 改善の鍵: 「人間がどう動くか」に基づいた、メニュー層の削減とAIによる予測機能が必要
やはりそうだったのか・・。「画面を注視する危うさ」が科学的に証明された
「エアコンの温度を変えたいだけなのに、指が滑ってメニューを何度もタップしてしまう」
「お気に入りの曲を探している間に、クルマが少しフラついた気がした」
最新のテスラに代表されるような物理ボタンを廃止した「ミニマリズム」なインテリアは見た目こそスマートではあるものの、多くのドライバーが直感的に「使いにくい」「危ない」と感じており、上記のような話がたびたび聞かれるのが昨今の状況です。
今回、ワシントン大学(UW)とトヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)が共同で行った最新研究は、その「違和感」が正しかったことを残酷なまでの数字で証明していますが、(注目の分野だけに)今後同様の研究結果が相次ぎ発表される可能性があり、これらが「自動車業界のトレンドを変える」きっかけとなるのかもしれません。
-
-
【朗報】フェラーリがアマルフィにて「タッチ式ステアリング」を廃止し物理ボタン復活へ。その理由と今後の展開とは?
Image:Ferrari | フェラーリのコメント:「ドライバーの視線は路上に、手をステアリングに」 | フェラーリの最新モデルでは「物理ボタンへと回帰」 フェラーリは先日発表した新型「アマルフィ」 ...
続きを見る
運転中のタッチ操作は「脳をオーバーロード」させる
まず、今回シンポジウムで発表されたこの研究では、高度なドライビングシミュレーターを使用し、ドライバーの視線、手の動き、瞳孔の開き、皮膚の電気反応を詳細に追跡した結果をまとめています。
そしてそこでは、単なるスマホの「ながら運転」ではなく、「メーカーが車内で行うことを想定している日常的な操作」(オーディオ調整やパネルに表示されるメッセージ確認など)が、いかに運転パフォーマンスを削り取っているかが浮き彫りになったわけですね。
調査結果が示す「デジタル化の代償」
| 測定項目 | タッチパネル操作による影響 |
| 車線逸脱(フラつき) | 40%以上 増加 |
| 画面操作の正確性 | 非走行時と比較し 58%以上 低下 |
| 操作速度 | 非走行時と比較し 58%以上 低下 |
| 主な要因 | 階層化されたメニューによる「認知負荷」の増大 |
驚くべきは、ドライバーは「運転が”下手になる”」と同時に、「画面操作自体も”下手になっている”」という事実。
二兎を追うものは一兎をも得ず、安全と利便性の両方が損なわれているのが現状です。
なぜ物理ボタンは消え、画面が巨大化し続けるのか?
これほどまでにリスクがあるのなら、なぜメーカーは物理ボタンに戻さないのか?
そこには「業界の裏事情」があるとされ、物理ボタンを「古臭いもの」「高コストパーツ」として切り捨てた結果、ぼくらは「視線を道路から外さなければ操作できない環境」を押し付けられてしまったということになりそうです。
- 製造コストの劇的な削減: 複雑な配線が必要な物理スイッチを並べるよりも、1枚のタブレットを置く方が安上がり
- アップデートの容易さ: ソフトウェア更新で新機能を追加できるため、販売後の付加価値を高めやすい
- 先進性の演出: ショールームで見た際、巨大なモニターは「最新の車」であることを顧客に強く印象付ける
結論:未来の車に求められるのは「人間への歩み寄り」
今回の研究は、メーカーに対し「人間がどう動いてほしいか」ではなく「人間が実際にどう振る舞うか」に基づいて設計すべきだと警鐘を鳴らしており、以下のような改善が期待されています。
- メニュー層の廃止: よく使う機能は常にトップ画面に表示する
- AIによる予測: ドライバーが必要な操作を予測し、ボタンを大きく表示する
- 負荷検知システム: 運転が不安定な時は、複雑な操作を一時的に制限する
-
-
ユーロNCAPの新基準によって「大型ディスプレイ」は影を潜める?「重要な機能のボタンやスイッチについて、個別の物理制御を備えねば安全性が低いと判断されます」
| よく使う機能について、その呼出に時間がかかるようではたしかに安全性を損ねてしまう | いくつかの自動車メーカーにとって、この新しい方針は「頭が痛い」問題となるのかも さて、2026年に導入が予定さ ...
続きを見る
関連知識:物理ボタン回帰の兆しも?
こういった研究結果を待つまでもなく、欧州の安全評価機関「Euro NCAP」は、2026年から「ウィンカーやワイパーなどの主要機能に物理スイッチを採用していないクルマ」の安全格付けを下げる方針を示唆しています。
デザイン性よりも「命」を優先する動きが、ようやく世界で始まろうとしているというのが新しい時代の流れではありますが、フェラーリ、ホンダ、フォルクスワーゲン、アウディ、ヒョンデなどが「物理スイッチ」への回帰を示していますね(ただ、フォルクスワーゲンとアウディは安全性という理由からではなく、消費者からのクレームに対応する、という商業的な理由から)。
-
-
メルセデス・ベンツが「物理ボタン」を復活へ。なぜ「巨大スクリーン大好きな」同社がタッチ式から回帰の姿勢を示すのか
Mercedes-Benz | 新型メルセデス・ベンツGLCから始まる「ボタン復活」戦略 | 実は大型ディスプレイの影に隠れつつも「物理ボタン」が復活 メルセデス・ベンツはつい先日新型GLCを発表し、 ...
続きを見る
-
-
VWが内装の機能コントロールに「物理ボタンの復活」を明言。2026年から適用され「私達が間違ってました。我々の製品は携帯電話ではなく、自動車ということに気づきました」
| フォルクスワーゲンの「静電式ボタン」「インフォテイメントシステム」はすこぶる評判が悪かった | 感度や反応が悪く、なかなか「欲しい機能を呼び出せない」 さて、フォルクスワーゲンは昨日待望の「エント ...
続きを見る
あわせて読みたい、”物理ボタン”関連投稿
-
-
【これで安心】ポルシェは「常に」音量調整「物理」ノブを残す:EV時代も守られる物理ボタンへのこだわりとは
Image:Porsche | ポルシェは創業時から「直感的な操作」にこだわっている | 物理的なボリュームノブは「常に」残る 最近の自動車業界では、多くのメーカーがインテリアデザインにおいて、従来の ...
続きを見る
-
-
巨大スクリーン全盛の時代に「異議あり」。なぜタッチ操作から「物理ボタン」へと回帰するのか?ヒョンデ、フェラーリらが示す「新しいインテリア」とは
Image:Hyundai | 物理スイッチの回帰には「操作性」「安全性」「操作する満足感」など様々な理由が存在する | ほぼすべての自動車メーカーが「物理ボタンへの回帰」傾向を強めるのは間違いない ...
続きを見る
-
-
BMWは「ボタン完全廃止」を否定。「調査では、顧客は物理的操作を求めている」として次期iX3はじめ今後の新型車でも物理スイッチを継続する意向
| モダンカーから消えゆく物理ボタン | 近年の自動車を見ると、かつて当たり前だった 物理ボタンやノブ が姿を消しつつあることがわかり、多くのメーカーでは大型スクリーンを採用して走行中でもメニューを操 ...
続きを見る
-
-
アウディがインテリアのデザインについて180度翻意。物理ボタンをなくすとしていたものの「今後も、機械式腕時計のように、操作する楽しみを求めて物理ボタンを残す」
| 一時はすべての自動車メーカーが「フルデジタル」へと移行するかのように見えたが | 一部の自動車メーカーではデジタルからアナログに戻した例も さて、アウディのインテリアデザイナーであるマクシミリアン ...
続きを見る
参照:CARSCOOPS

















