
| なぜグリーンやレッド、イエローはクルマのボディカラーとして選ばれなくなったのか |
現在、ホワイト、ブラック、グレーが占める比率はおよそ80%である
1980年代や90年代、街を走るクルマはもっとカラフルであったように思われ、ネイビーのBMW、そしてマツダ・デミオのグリーンにトヨタ・ヴィッツやホンダ・フィットのピンク、そしてアクアのオレンジやイエロー、マツダ・ロードスターのレッドなど。
しかし2026年現在、新車市場では無彩色(グレースケール)が占める割合は約80%にまで達しています。
その理由としては「本当はもっと鮮やかなボディカラーが好きなのに、なぜか無難な色を選んでしまう」というものだとも考えられますが、そんな心理の裏には「好みの問題」だけにはとどまらない、現代社会特有の経済的・心理的な圧力、自動車メーカーが仕掛ける戦略の影が潜んでいるとされ、ここではなぜクルマのボディカラーが「退屈」になってしまったのか、そのリアルな裏事情を考えてみましょう。

【この記事の要約:3つのポイント】
- リスク回避の心理: 高騰する車両価格と金利を背景に、購入者はクルマを「自己表現」ではなく「換金資産」として見ている
- リセールバリューの誤解: 実は「派手な色」の方が希少価値で値落ちしにくいケースもあるが、市場は「無難」を好む
- メーカーの戦略: 塗装工程の効率化と、「特別な色」を有料オプションにする収益構造の影響

無彩色が支配する「グレースケール」の戦場
塗料メーカーBASFの報告によると、世界で最も人気のある色は「ホワイト(34%)」、そして次いで「ブラック(22%)」、そして「グレー(17%)」と続きます。なぜぼくらはこれほどまでに無難な選択をしてしまうのか、その理由を考えてみましょう。
「資産価値」としての車選び
現代の新車価格は上昇し続けており、多くのユーザーにとってクルマは「人生で2番目に高い買い物」です(最近では腕時計のほうが高い場合も多々あるが)。
そのため、売却時の「リセールバリュー」が最優先事項となる場合が多く、そこで「個性的な色を選んで、下取り価格が下がったらどうしよう」という恐怖が自由な色選びを阻害している、と言われます。
実際のところ、この数年で自動車ディーラーを訪問する人々が担当セールスに尋ねる内容として「どの色が一番高く売れますか?」というものが増加傾向にあるとも聞かれるため、「買う前から売ること」を考えている人も少なくはないのかもしれません。

2. 現代人の心理:静寂と安定を求める
SUVやクロスオーバー、ミニバンが主流となった今、クルマは「走る道具(アプライアンス)」としての側面が強まっています。
学校への子どもの送迎、通勤、クライアントとの商談。
あらゆるシーンに馴染み、目立ちすぎず、洗練された印象を与えるホワイトやグレーは、多忙でストレスフルな現代人にとって「平穏と安定」を象徴する色として選ばれている、とも考えられています。

参考までに、ほんの数年前(コロナ禍がその境界だとされる)からスポーツカーにおいても大きく傾向が変わっているとされ、スポーツカーであっても派手なカラーを避けてグレーやパステル系を選ぶ傾向が多くなっているとされ、ポルシェ911であっても「クレヨン」をはじめとするスモーキーなグレーが人気化していると言われます(991まではホワイトやイエロー、レッドも少なくはなかった)。※911 GT3ツーリングの人気が示すように、リアウイング付きのクルマを敬遠する傾向も拡大している

塗装オプションとコスト
メーカー側も、この「無難な色選び」を収益のチャンスに変えているのが現実で、多くの自動車メーカーにおいては「ホワイトやブラック」を無償にとどめ、しかし「グレー」「パールホワイト」を有償オプション化する場合が増えているようですね。
これは「リセールを考慮して無難なカラーを選ぶことにしたものの、やっぱりちょっとでも個性を出したい」という心理を巧みに突いたものであるとも考えられます。
メーカーの塗装オプション例
| メーカー・車種 | カラー名 | オプション料金 |
| トヨタ・クラウンスポーツ | プレシャスホワイトパール | 55,000円 |
| トヨタ・クラウンスポーツ | マットメタル | 550,000円 |
| マツダ CX-5 | マシーングレープレミアムメタリック | 55,000円 |
| ポルシェ911カレラ | クレヨン | 562,000円 |

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製造現場の切実な事情
自動車工場において、塗装工程は最もコストと時間がかかるセクションで、ボディカラー(塗料)を変えるたびにスプレーガンを洗浄する溶剤が必要になり、その都度廃液も発生します。
「どうせみんな白か黒を買う」というデータがある以上、メーカーにとって低需要なカラーバリエーションを維持するビジネス上のメリットは非常に少なく、そもそも「ブラック、ホワイト、グレー」意外のボディカラーをほとんど用意しない例もあり、実際にメルセデス・ベンツCクラス セダンだと「ポーラーホワイト」「オブシディアンブラック」「ハイテックシルバー」「ポラリスホワイト」という文字通り「白黒グレー」の4色しかラインアップされていないという状態です(たしかにこれらのカラー以外のメルセデス・ベンツを見ることはほとんどない)。

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結論
クルマの色が「退屈」になった本当の理由は、消費者が「賢くなりすぎた」からなのかもしれません。
リセールバリューを守り、どんな場面でも浮かない。
さらには自動車メーカー側のビジネス的判断や戦略という合理性が街中をグレースケールに染め上げたのだと考えてよく、現在の状況は「なるべくしてなった」というところだとも考えられます。

しかしその一方では「希望」もあり、最新の統計では「イエロー」や「グリーン」のシェアが微増しているという統計もあって、一部の愛好家の間では「自分らしさ」を取り戻す動きも出始めているという傾向も(やはり何事にも反動が来る)。
「無難な色」を選ぶことは、現代社会を賢く生き抜く一つの知恵ではあるものの、もしそのクルマと長く付き合うつもりならば、たまには「直感」で心躍るボディカラーを選んでみるのもいいのでは、と考えたりもします。
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実は「派手な色」は逆に価値が出る?
実は統計上、黄色やオレンジ、グリーンの車は3年後の残価率が平均よりも高い(値落ちしにくい)傾向にあるといい、その理由はシンプルで「中古車市場にタマ数が少ないから」。
つまり特定の「その色が欲しい」という中古車購入層に対して供給が圧倒的に足りないため、価格がつり上がるというわけですね。
もちろん、不人気なブラウン系や特殊なゴールドなどはリスクがあるものの、「自分が本当に好きな明るい色」を選ぶことは、「実は経済的にもそれほど損ではない」という事実はもっと知られても良いのかもしれません。

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