| 国産車でこれだけエレガントなインテリアを持つクルマはそうそうない |
さて、マツダ・ブランドスペース大阪にてCX-30の100周年特別記念車の展示が開始され、さっそく見にゆくことに。
前回はロードスター(輸出仕様)の展示がなされていましたが、そちらと同様に専用ボディカラー「スノーフレークホワイトパールマイカ」を身にまとう個体です。
この100周年記念車はマツダが1960年に発売した「R360クーペ」をモチーフにしたもので、ボディカラーが当時のR360クーペのイメージカラー風となっているのが最大の特徴。
マツダ全車(MAZDA2、MAZDA3、CX-3、CX-30、CX-5、CX-8、ロードスター/ロードスターRF)に採用され、台数に限りはないものの、受注期間が2021年3月末までに限定されています。
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MAZDA CX-30100周年特別記念車はこんなクルマ
なお、今回の展示車は「欧州仕様」。
よってハンドル位置は「左」です。
マツダのデザインは非常に優れている
なお、ぼくはマツダのデザインは「非常に優れている」と認識していて、それは「全体的なバランスがいいから」。
まずフロントから見てゆくと、ノーズ部分をフロントバンパー一体型グリルにて「延長」していますが、これによって「ボンネットが長くなったかのような」印象を持たせ、いわゆるローングノーズに見せているわけですね。
これはSUVにとって非常に重要であり、SUVは一般に室内空間を最大化するためにフロントウインドウが前に押しやられることになるのですが、そうなるとボンネットが短くなり、そしてボンネットが短くなると「商用車っぽく」なるわけですね。
そして商用車っぽくならなくとも「世帯っぽい」雰囲気が出るのは間違いなく、マツダはそれを嫌ってノーズを長く取り、エレガントに見せているのだと思われます。
そしてCX-30ではホイールアーチのクラディングが厚く、フロントバンパー、サイドステップ下部、、リアバンパー下部の樹脂パーツが「分厚く」、これによって塗装部分の面積が「上下に」小さくなっています。これによる効果は結構大きく、ボディが薄く見える=スポーツカーっぽく見えるわけですね。
仮にこの部分がボディカラー同色だと、ボディがボッテリと分厚く見え、軽快さが失われることになり、ここまでスタイリッシュには見えないだろうとも考えています。
よって、CX-30については、これらパーツをボディカラー同色にペイントしたり、ボディカラー同色パーツを歌舞してしまうカスタムはぼく的に「NG」。
更に秀逸なのは「サイドウインドウが上下に薄い」こと。
これもまた重要で、フロントウインドウ、リアウインドウとあわせて「上下に広い」とやはり商用車っぽい、そしてファミリーっぽい印象が出ることになりますが、これを「薄く」することで車体を大きく優雅に、そして何より安定感のあるルックスを実現できるわけですね。
なお、ランボルギーニ・ウルスは横から見た時の「ボディとサイドウインドウとのバランス」につき、スーパースポーツモデルであるウラカン、アヴェンタドールと同じ比率を保っている、とされています。
もちろんこれによって視認性がそこなれることになり、しかしマツダは視認性よりもスタイルを優先したということになります。
リアに目を移すと、クーペスタイルのリアウインドウが印象的。
これもやはり車体をエレガントに、そしてスポーティーに見せる手法の一つですが、CX-30くらいの車体サイズだと荷室がかなり犠牲になり、しかしこれもスタイルを優先したということになりそうです(MAZDA3発表時に、MAZDA3ファストバックはスタイルを最優先した結果、室内と荷室が狭くなったともコメントされており、CX-30も同様の思想なのだと思われる)。
ただ、マツダはそれでも荷室を最大限に拡大し、さらに全長が同じであっても車体を大きく見せようと努力していて、リアバンパーとリアハッチとがほぼ「同じラインに」。
通常はリアバンパーが出っ張ることになるのですが、そのぶんの数センチまでをマツダは使い切り、リアバンパーの端ギリギリまでリアハッチを延長してきたということになります。
もちろん「塊感」の演出にも一役買いますが、高い速度でリアをぶつけると「リアバンパーがほぼ役に立たない」ことになり、リアハッチを破損してしまうのは必至。
しかしこれもマツダが「デザインのために犠牲にした」部分なのかもしれません。
さらにリアウインドウの下端が高く、テールランプも位置が高いためにウエッジシェイプ感も演出され、低く抑えられたフロントともに「躍動感」の感じられるスタイルに。
ちなみにこういった「上下に狭い」「下辺が高い」リアウインドウをいち早く採用したのはレンジローバー・イヴォークだと記憶していますが、実際に所有していた身としては、リアが相当に見づらく、安全性を損なうのも事実。
むろんマツダはそれも承知の上で、CX-30のデザインを決定したということになります。
ちなみにフロントウインドウも上下が短縮され、ルーフがかなり前にまで来ていることがわかります(これも開放感を阻害するが、マツダにはそれよりも大事なことがあった)。
一般にクルマは「車体下部に比較して、ウインドウから上の面積や容積が小さい方が格好良く見える(メルセデス・ベンツGLEクーペやBMW X6の人気が高いのはそのためだと思われる)」と言われますが、マツダはなんとかしてこれを実現しようとしていて、ウインドウ面積を小さくすることを考え、さらに前後ウインドウを「寝かせる」だけではなく、(ピラミッドのように)サイドウインドウも上に向かって絞っており、これも”車体の上の方を小さく見せている”要因のひとつ。
ちなみにサイドについては、ドアミラーあたりからリアタイヤの方へ向かって微妙に下がるラインが設けられています(MAZDA3はこの逆)。
これは車体が実際に走っている時、とくにカーブを曲がっている時に「表情」をもたせることに成功していて、反射する光や路面が、車体の動きに合わせて”移ろう”わけですね。
とくに前方から来たCX-30が目の前で左折なり右折なりするとよくわかるのですが、ついつい見とれてしまうほどの美しさがある、と思います。
こういった感じで、先っちょからリアエンドにいたるまでこだわり抜き、ひとつひとつの要素が絡み合ってトータルでのバランスを高い次元で成立させているのがマツダのデザインだということになりますが、デザインのためにいろいろなものを犠牲にできた、というのも特筆すべきところ。
マツダはデザイナーの地位が非常に高く強いと聞きますが、だからこそ実現できたのがCX-30やMAZDA3だと考えています。
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なお、フロント、リア共に「可能な限り延長」して車体を大きく見せ、これによってスポーツカーライクな印象を出すというデザインはほかにもいくつかのメーカーが採用していて、マセラティ・レヴァンテ、アルファロメオ・ステルヴィオがその最たる例かもしれません。
MAZDA CX-30 100周年記念車のインテリアも特別製
そしてこちらはCX-30 100周年特別記念車のインテリア。
やはりR360クーペをイメージしたバーガンディが用いられており、さらにはホワイトも効果的に使用されています。
このホワイトはなかなかに新鮮味があり、エレガントな印象も演出しています。
センターコンソール、アームレストもホワイト。
ヘッドレストには100周年記念ロゴ。
シートのセンター部にはパンチング(パーフォレイテッド)加工。
マツダ・ブランドスペースにはアンフィニRX-7も展示中
そしてこちらはアンフィニRX-7。
今となっては「希少車」となってしまいましたが、久々に近くで見るとやはりいいクルマだな、という印象。
デザイナーは中国人のチン・ウーハンだと(当時)言われていて、ルーフのダブルバブルが一つの特徴ですね。
なお、ぼくの知人がRX-7に乗っていてルーフを損傷したことがあり、その後板金修理に出して戻ってきたクルマのルーフが(板金屋がダブルバブルルーフを知らなかったために)平らになっていたことを思い出し、ちょっと懐かしい気持ちになる展示です。
そのほかの画像はFacebookのアルバム「MAZDA CX-30(112枚)」と「アンフィニRX-7」に保存中。