| ハイブリッドシステムと4WDは取り外され、トランスミッションは6速シーケンシャルに |
ホンダが昨年に発表した「ACURA NSX GT3 Evo」をミッドオハイオ・スポーツカーコース(サーキット)にて公開。
NSX GT3 EvoはFIAの規定するGT3クラスに参戦可能なレーシングカーですが、その多くを市販モデルのNSXと共有します。
ホンダによると、その共有率は80%にまで達し、スペースフレームやエンジンなどの基本パーツは「ほぼ市販モデルのNSXと、NSX GT3 Evoでは同じ」。
NSX GT3 Evoの維持コストは大幅に下がった
ただ、GT3クラスでは4WDやハイブリッドは使用できないため、よってNSX GT3 Evoでは3モーター式ハイブリッドシステムが取り払われて「後輪駆動」に。
さらにトランスミッションも規定によって6速シーケンシャルへ、ブレーキも同じく規定によってカーボンセラミックからスチールへと変更されています。
なお、市販車との共有率が高いということは、クラッシュ等で補修用のパーツが必要となった際に「パーツ調達コストが安く済む」ということになり、NSX GT3 Evoでレースに参戦するチームには「非常にありがたいクルマ」ということになりますね。
市販モデルのNSXと、レーシングカーのNSX Evoとの比較は下記の通りですが、NSX Evoの価格はNSXの3.3倍ほど。
これはアウディやランボルギーニ、ポルシェの発売するGT3クラス用のカスタマーカーの価格(市販モデルの2.5倍くらい)に比較してかなり高いという印象です。
これについては、「市販車と共有されていない20%の部分」の価格が非常に高い可能性があるということ、そしてNSXはアウディR8、ランボルギーニ・ウラカン、ポルシェ911GT3に比較して「ハイブリッドシステム含め、取り外さなくてはならない部分が多く、調整を要する」ということになるのかもしれません。
なお、こういったレーシングカーを(自動車メーカーが)製造するには主に2つの方法があり、ひとつは「完成した市販車を、レース仕様にコンバートする」方法。
この方法だと、市販車を一旦作り、そこから外せるものを外したり、トランスミッションやタイヤ/ホイールなどを換装するため、コンポーネントの価格が「2台分」必要になることも。
フォードGTの場合はこれに当たり、よって相当なコストが要求されるようですね(NSXも、この価格を見るにフォードGTと同じ方法かも)
そしてもう一つの方法は、「最初からレーシングカー」として作る。
この方法であれば、ムダなパーツを組み込む必要がなく、かなり安価にレーシングカーを作ることが可能になります。
ただ、こちらの方法は「レーシングカーの製作を外部のパートナー企業に委託する」、つまり自社でレーシングカーを製作できない場合は「絶対ムリ」。
そしてこの方法を採用しているのはランボルギーニ、そしてアウディですね(市販車と同じラインでレーシングカーが組み立てられる)。
NSX | NSX GT3 EVO | |
価格 | 157,500ドル | 525,000ドル |
エンジン | 3.5リッターV6ツインターボ | 3.5リッターV6ツインターボ |
トランスミッション | 9速DCT | 6速シーケンシャル |
駆動方式 | SH-AWD(4WD) | RWD |
0-100km/h加速 | 2.92秒 | 4.35秒 |
ボディ構造 | アルミ複合材 | アルミ複合材 |
ブレーキ | ブレンボ製 (カーボンセラミックディスク、F:368mm / R:361mm) | ブレンボ製 (スチールディスク、F:368mm / R:361mm) |
ホイール | 鍛造アルミ (F:245/35-19 / R:305/30-20) | 鍛造アルミ(センターロック) (F:315/46-18 / R:325/48-18) |
全長 | 4,470ミリ | 4,612ミリ |
フロントトレッド | 1,655ミリ | 1,715ミリ |
リアトレッド | 1,618ミリ | 1,687ミリ |
重量 | 1,759キロ | 1,270キロ |
ほかにはこんな「GT3レーシングカー」がある
そしてこれまでに発表されているGT3クラス向けのカスタマーカーだとこんなクルマも。
日産GT-R GT3はその価格6000万円で、モトの車両価格を考慮すると「かなり割高」な部類ですね。
アウディR8は5200万円。
比較的安価ですが、これは上述のように「もとからレーシングカーとして生産」しているため。
なおR8はGT4、GT2にも対応しており、相当数を販売していることも「安価な」理由かもしれません。
アウディR8史上最強のレーシングカー、「R8 LMS GT3」発表。その価格5200万円、このままGT3やル・マンに出走可能
そしてマクラーレンからは「720GT3」。
相当な改装を施し、そしてロードカーの価格が3000万円オーバーであることを考えると、「もっとも割安な」GT3レーシングカーであり、かつ「最も勝てる可能性が高い」クルマだとも考えています。
そのほかにはランボルギーニ・ウラカンGT3、アストンマーティン・ヴァンテージGT3、メルセデスAMG GT3といったクルマたちも発表もしくは発売されていますね。
VIA: Acura