| ブガッティの類まれなき芸術性は、とどまるところを知らない探究心によって担保されていた |
そして「オーダー」ペイントとなると「年」単位の時間がかかる
さて、ブガッティは「クルマではなく芸術品を作っている」と言われ、実際のところブガッティがその顧客に納車を行うのは「ブガッティが求める厳しい基準をクリアし、完璧な仕上がりが証明された車両のみ」。
そのため、ブガッティでは、一般的な高級車メーカーが4~5台の車両を完成させるのにかかる時間と同じくらいの時間をかけて、たった1台のハイパーカーの塗装を行い、複雑そして比類なき仕上がりを目指していますが、今回公式にて塗装に関するコンテンツが公開され、そのこだわりについて紹介を行っています。
ブガッティの塗装品質は、経験を積んだ職人によってこそ成し遂げられる
まず、ブガッティは自らのクルマに施される塗装について「鏡のよう」だと表現しており、この完成度の高さは「経験豊富で才能ある塗装スペシャリストのチームによってのみ達成されるもの」だとも。
これらの職人たちは、塗る塗料や層の特性だけでなく、ブガッティのハイパースポーツカーを構成するさまざまな素材との反応も心得ているといい、この職人たちの技術によって「統一感のある仕上がり」となるのでしょうね。
なお、自動車にはアルミ、スチール、コンポジット素材やウレタンなど異なる素材が使用されていて、これらの素材を(たとえ同じ塗料を用いたとしても)全く同じ色に仕上げることは困難だとよく言われ、よって”仕上がりが同じ色となるよう”部位によって少しづつ調整が必要になるとも言われます。
ブガッティ・オトモビルのCEOであるクリストフ・ピオション氏によれば、「エットーレ・ブガッティは、自動車におけるエンジニアリングの美しさを信じていた人でした。芸術家の家庭に育ったエットーレのキャンバスは、人々が自動車を芸術品と考える以前から自動車でした。ブガッティではその精神を今日まで受け継いでおり、デザインから生産まで、あらゆる面で卓越した美を追求し、完成させています」。
このような比類ない品質の最終結果を生み出すには、非常に忍耐強いプロセスが必要だとされ、塗装のスペシャリストがカラーやクリアコート、プライマーを塗り重ねる前から、各パネルに仕上がりに影響するような微細な凹みがないか徹底的にチェックすることになり、ブガッティのハイパースポーツカーに最適なパネルを見分けることができるのは、長年の経験、欠点を見抜く目、そして繊細な手つきがあってこそ。
検査によってこれらの品質が完璧であることが確認されると、”マスタークラフツマン”は最初のプライマーを塗布して作業の下地を作り、すべてのパーツをサンディングして滑らかで均一な表面を作り、2層目のプライマーを塗布することになるそうですが、塗装の専門家による緻密な作業により、波や凹凸のないクリアな仕上がりになる、と紹介されています。
参考までに、ブガッティのクルマの外板の殆どにはカーボンファイバーが採用されていますが、カーボンファイバーは鉄やアルミをプレスして製造するのとは全く異なる方法によって作られるために「波」が表面に出ることがあり、これを平坦に均すのはかなり難しい作業です(カーボンボディ採用のクルマの塗装面をよく見ると、その表面が均一ではないことがわかる)。
ただ、ブガッティでは、熟練した職人のワザによって「平坦な面を」作り上げている、ということになりそうですね。
実際のところ、(ここまで)100時間以上にも及ぶ緻密な作業を経るものの、ここからさらにクリアー塗装、サンディング、さらにクリアー塗装、サンディングという工程を踏むそうですが、決して急がず、丁寧に塗り重ね、ひたすら磨き上げるという、ブガッティいわく”愛の作業”が行われ、このような塗装前準備の積み重ねこそが、最終的な仕上げに深みと豊かさをもたらすとコメントされています。
この時点でようやく最初の「色」が塗られることに
この時点で数百時間が費やされることになりますが、ここでようやく最初の色がパネルに塗られることになり、ブガッティにてボディ&ペインティングスペシャリストを務めるサイモン・ヴェターリング氏によると「ブガッティのハイパースポーツカーの塗装には、驚くべき専門知識が必要なだけでなく、毎週、毎車、ブランドの高い品質基準を常に満たすというコミットメントと野心が必要です。このチームは、パネルごとに色の違いを分析します。数十年の経験と細部にまでこだわる目によって、1つのパネルが他のパネルよりもほんのわずかでも濃かったり薄かったりすることを簡単に見分けることができるのです。そして、再塗装するのです。個々の車の色のコントラストや、目に見えるカーボンファイバーのパーツの組み合わせなど、アトリエのハイパースポーツカーのあらゆる面を調和させるためには、さまざまな困難が待ち受けています。素材や仕上げの特性はそれぞれ異なるため、一貫性を保つことが重要であり、職人の才能と経験があってこそ、求められる仕上がりを実現することができるのです。」
さらに、ブガッティが求める高水準の塗装が完了した後であっても、”完璧な輝きを得るため”に4日間、自動車業界で最も包括的だとされる研磨工程が残されており、これらが終了した最後になってようやく、ブガッティのライトトンネル内の明るい白色灯の下で10時間かけて塗装を精査し、ボディワークを職人による触覚と視覚によって確認し、微細な傷の有無をチェックすることになると紹介されています。
ブガッティによると、これら上記の極めて緻密な塗装工程だけでも600~700時間、つまり1人が1日24時間、ほぼ1カ月間働き続けるに等しい時間を費やすことになり、しかしその努力によって、何年も、そして何世紀も使える”精密で美しい宝石が完成する”のだ、とも。
ただ、これは「通常のブガッティ」の塗装の話であり、ブガッティの塗装のスペシャリストは、顧客のビジョンを色で実現するだけでなく、顧客からの要望があれば、非常に特殊なカラーやグラフィックを作るオーダーメイドにも対応していて、実際にブガッティのデザインチームやエンジニアリングチームでは、「自宅から眺める夕日やお気に入りのハンドバッグの温かみのある色に合うような」ユニークなカラーを再現してきた例も。
加えて、デザイン制作から完成までに「1年半を要した」というケースも紹介されていますね。
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参照:Bugatti