
| 現在、揺れに揺れている「2035年のガソリン車販売禁止」法案ではあるが |
メルセデス・ベンツはじめ多くの自動車メーカーはこの「実施延期」を希望
さて、現在の自動車業界、特に欧州におけるもっとも大きな懸念が「2035年のガソリンエンジン搭載車販売禁止」。
ただしこの法案は現実的とは言いがたく、インフレによって可処分所得が減少した人々にとって「高額なEVを購入することは」容易に受け入れることができる選択ではなく、かつインフラ問題、電力価格の高騰など様々な課題が山積しています。
加えて、自動車メーカー側の視点からすると、「あらゆるセグメント、あらゆる価格帯」において安価な中国製EVが欧州へと押し寄せており、この状況の中で戦ってゆくことは”消耗戦”を意味しており、会社存続の危機ともなりかねないといった懸念もあるわけですね。
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やはり「2035年にガソリン車販売禁止」は無理があった?EUの有力政治団体がユーロ7とあわせてこの撤廃あるいは緩和/導入時期の先送りを行うよう圧力をかけたとの報道
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アウディ、全EV化計画を柔軟化
しかし今回、アウディCEOゲルノート・デルナー氏は「EVはCO₂削減のための唯一の現実的な解決策」と語り、2035年以降のガソリン車販売禁止を強く支持。
つまりBMWやメルセデスとは異なるスタンスを取っているということになりますが、アウディはかつて「2032年までに内燃機関を廃止し、EV専売ブランドになる」と宣言し、しかし最近になってその計画を修正していて、今後7〜10年間はガソリン車の販売を継続する方針を明らかにしています。
それでも今回の発言を見るに、CEOのゲルノート・デルナー氏は依然として、電気自動車こそが自動車業界の未来だと確信しているのだと考えていいのかもしれません。
Image:Audi
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「EVは単なる移行手段ではなく、優れた技術」
今回の発言は独誌『Wirtschaftswoche』とのインタビューの中でなされたもので、このコメントは2035年以降のガソリン車販売禁止に反対するBMWやメルセデスとは”文字通りに”対照的。
「CO₂排出削減において、電気自動車に勝る技術は他に存在しない。気候変動対策だけでなく、EVは単純により優れたテクノロジーだ。」
アウディCEO ゲルノート・デルナー
Image:Audi
欧州で進む規制と自動車メーカーの対応
EUは2035年にガソリン車販売を禁止する方針を堅持していますが、2026年に予定されていた”見直し”は前倒しされ、早ければ今年にも再協議が行われる可能性も。
完全なガソリン車の延命は難しいと見られますが、レンジエクステンダーやPHEV(プラグインハイブリッド)は例外的に認められる可能性もあり、現在は各自動車メーカーとも、この成り行きを見守っているという状態なのだと思われます。
アウディが戦略を修正した背景
EV市場は世界的に拡大しているとはいえ、アウディのEV販売は2024年に前年比7.8%減の164,480台にとどまっていて、ラインナップに占める比率はわずか9.7%となり、つまり依然として内燃機関モデルが収益の柱です。
VWグループ傘下のアウディは今後、ガソリン、ハイブリッド、EVを柔軟に組み合わせながら展開し、ICE(内燃機関)の利益でEV開発を支える戦略を続けていくとみられますが、まずはアウディのEV新時代を作ってゆくことになるコンセプトCの市販モデルに期待したいところでもありますね。
Image:Audi
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参照:Motor1