| ただしおかげでメルセデスAMGとは大きく差別化ができ、販売も伸びているようなので結果オーライ |
MTは現代だと自動車メーカーの「姿勢」を表すひとつの象徴だと言える
BMWはかつて「新しい8速オートマチック・トランスミッションに比較すると、マニュアル・トランスミッションはもちろん、従来のDCTですら優位性を持たない」として半ばMT死刑宣告を行ったほどではありますが、そののち急に方針を転換して「マニュアル・トランスミッションを存続させる」という方向性を採用しています。
そのため今回発表された新型M2にはマニュアル・トランスミッションが用意され、さらには後輪駆動という「ピュアな」要素を持っていて、そのため多くのファンが狂喜乱舞したわけですね。
BMWは2030年までマニュアル・トランスミッションを作り続ける?
そして今回報じられているのが「BMWは2030年までマニュアル・トランスミッションを作り続ける」ということ。
これは南アフリカのキャラミ・サーキットにて開催されたイベントにて、BMW M社のトップであるフランク・ファン・ミール氏がカーメディアに対して語ったものだとされ、これによると「マニュアル ・トランスミッションは、残念ながら、もうそれほど普及していません。しかも残っているのはM2やM3、そしてM4といったセグメントでの話です。これらの車種については、マニュアル・トランスミッションを提供し続け、この10年の終わり(2030年)まで生き残ることになるでしょう」。
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これは先日報じられた「2029年までM2の注文を受け続ける」という内容とマッチしており、この「2030年までMTが残る」という話は間違いないのかもしれません。
なお、BMWがこういった「マニュアル存続」にシフトしたのはファンの行動が大きく関連しているといい、BMW M社にて顧客・ブランド・販売担当副社長を務めるティモ・レッシュ氏によれば、「我々の顧客がオンライン経由にてMT存続のための嘆願書を出すなどマニュアル・トランスミッションに対する情熱を示したため」だとされ、しかしMT存続を実際に決めるのは容易ではなかったといいます。
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なぜなら、顧客がマニュアル・トランスミッションを求めているから
というのも、上述のとおり、技術的にはマニュアル・トランスミッションの優位性はなにひとつなく、しかも生産量が少ないので利益も極小にとどまり、ビジネス的観点から見てもMTを残す理由はなにひとつ無いため。
よってBMWのエンジニアはティモ・レッシュ氏に対して「オートマチック・トランスミッションを搭載した方が速いのに、なぜマニュアル・トランスミッションが必要なのか」と尋ねることになり、それに対する同氏の答えは「ファンが求めているから」という単純明快なもの。
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しかしながら、この「ファンが求めている」というのは何よりも重要な要素だとも考えることができ、マニュアル・トランスミッションを廃止して小排気量ターボやハイブリッドに移行するメルセデスAMGに対し、BMWは「マニュアル・トランスミッションと大排気量」を維持することでそのイメージを高め、そしてメルセデス・ベンツやアウディとは異なるファンを獲得することに成功しています(近年のBMWの好調は、こういったイメージの向上によるところが大きいとぼくは考えている)。
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実際のところ、「二度とBMWは買うまい」と固く誓ったぼくですら「ちょっと新型M2買おうかな・・・」と心が揺らいでいるくらいで、つまり現在のBMWは非常に高い訴求力を持つブランドになったと考えていいかもしれません。
ただしMT存続にも暗雲が
ただ、BMWがMTを残したくともそうできない事情もあるようで、それは「BMWの持つマニュアル・トランスミッションは500馬力を超えるターボエンジンの高トルクに耐えることができない」。
よってこれ以上高出力化が進んでゆくと技術的にマニュアル・トランスミッションを残すことができなくなってしまい、そしてBMWはこれ以上マニュアル・トランスミッションへに対する投資(改良)を行うとは考えられず、ここは大きな懸念とも言えます。
参考までに、一時は「性能面で劣り、少数しか選ばないMTは不要」としていたポルシェも方針を転換し、マニュアル・トランスミッションを(911GT3で)復活させていますが、現在マニュアル・トランスミッション比率はもっとも少なかったときの5%から、今では最大で70%にも達するといい、そしてポルシェはそこに価値を見出し、継続した投資を行っているようにも。
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というのもポルシェのマニュアル・トランスミッション車の「シフトノブ」はモデルごとにデザインが変わっているからですが、それに対してBMWの(MT車の)シフトノブは90年代から変わっていないように見え(しかもイルミネーションが省かれるなどコストダウンしているようだ・・・)、つまりBMWでは「ギリギリのところでMTが存続している」「これ以上、BMWはビタイチMTに投資しない」ということもわかり、上述のティモ・レッシュ氏がBMW社内にてマニュアル・トランスミッションの存続を押し通すのにどれだけ苦労したかがわかりますね。※現在のBMWのMT車の内装について、他の部分は先進的なデザインを持つのに対し、シフトノブが昔っぽいデザインにとどまっていて、妙なミスマッチ感がある
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参照:CarBuzz