| それでもBMW 8シリーズ(E31)ばBMWの高いデザインレベルを世に示し、そのポジションを高めることに貢献している |
ただしセールスとなると話は別であり、それは現行8シリーズにも同じことが言えそうだ
さて、初代BMW 8シリーズをして「BMWの歴史上、もっとも美しいクーペ」と評する人も多いかと思いますが(ぼくもそのうちの一人である)、今回BMWにてデザイン責任者を務める(そして今後ロールス・ロイスのデザインを行うことになる)ドマゴイ・デュケック氏がBMWのアーカイブから初代8シリーズ(E31)のデザインスケッチを掘り起こし、そして当時の背景について語っています。
おそらく同氏はこの初代8シリーズが企画されたときにはBMWに在籍していなかったのだと思われ、しかしBMWにてデザイン責任者を務めている立場上、自由にアーカイブにアクセスでき、その歴史を掘り起こすことでBMWのデザインに対する理解を深め、かつ新しいインスピレーションを得ているのだと思われます。
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初代BMW 8シリーズのデザイン決定プロセスにはこんな背景があった
そこで今回ドマゴイ・デュケック氏が明かしたのが「初代8シリーズが企画された当時のデザインプロセス」。
興味深いことに、当時(1984年)5人のデザイナーによって「新しいラグジュアリークーペ(E31)」のデザインが競われることとなったそうですが、(さらに興味深いことに)BMWは今でも同様の手法を採用しており、つまり現在世に出ているBMWの市販車は「複数デザイナーが己の作品を競い、勝ち残った案」ということになりますね。
そしてこのE31については、最終的に、クラウス・カピッツァのデザインがベースとして採用され、ここからプロトタイプとして形を成すまでにさらに2年かかり、プロダクションモデルとして発表されたのは5年後となる1989年9月のフランクフルトモーターショー、そして実際に生産が開始されたのは1990年2月。
なお、当時は世界的な好景気に沸いていて(日本だとバブル経済まっただなか)、よってこのE31は当時の世情を反映し「とんでもない費用がつぎこまれた過剰設計のクルマ」となり、しかしセールス面ではふるわなかったため、BMWの財政を大きく圧迫してしまいます。
ちなみにですが、いくつかのデザインはジョルジエット・ジウジアーロやマルチェロ・ガンディーニの影響が見え(もしかするとそれら巨匠の弟子が含まれていたのかもしれない)、さらには「レトロ」「未来」など様々なデザイン案が含まれるのは面白いところでもありますね。
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参照:domagoj.dukec(Instagram)