| 新型メルセデスAMG SLはこれまでの「メルセデス・ベンツ」SLとは全く異なる乗り物である |
4気筒ということに面食らうかもしれないが、「電動ターボ」の威力は凄まじい
さて、メルセデスAMG SL43に試乗。
現在のところ新型メルセデスAMG SLの試乗車がなかなかディーラーに配備されておらず、今回はメルセデスミー大阪での試乗となっています。
この試乗車のボディカラーは「アルペングレー」と命名された薄いグレーで、エキゾチックさとエレガントさとを兼ね備えた気品あふれる色味という印象。
なお、このメルセデスAMG SL43の価格は1648万円、搭載されるエンジンは2リッター4気筒ターボ(M139)+BSG、出力は381馬力 / 480Nmというスペックを持っていますが、「SLが4気筒」というのはかなり衝撃的な事実でもありますね(ぼくはマルチシリンダー、大排気量信奉者ではないけれど)。
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新型メルセデスAMG SLの内装を見てみよう
この新型メルセデスAMG SL43の全長は4,700ミリ、全幅は1,915ミリ、全高1,370ミリ、ホイールベースは2,700ミリ、そして車体重量は1,780kg、装着されるタイヤはフロントが265/40 R20、リアが295/35 R20(最近のスポーツカーの例に倣い、けっこうフロントが太い)。
トランスミッションは9速AT、駆動輪は後輪のみとなっており、最小回転半径は6.1メートルとやや大きめ。
さっそく試乗を開始しようとドアをアンロックすると、こんな感じでドアハンドルの奥が発光しつつハンドルがポップアップします。
ドアはメルセデスAMG GTに比較するとけっこう長く、つまり乗降にはそれだけ広いスペースを要しますが、これはAMG SLが「4人乗りだから」なのかもしれません。
ちなみにサイドシルはかなり高く(ランボルギーニのV10モデルやフェラーリのV8ミドシップモデルに比較しても高い)、これはボディ剛性を優先させたためだと思われ、となると、同じプラットフォームを持ち、そしてドア開口部がより狭いであろう新型AMG GTはこのAMG SLよりも一段高いボディ剛性を持つと考えて良さそうですね。
メーターはフルデジタルですが「バイザーなし」というちょっとおもしろい構造(SF的)。
メーター内には「パワー」「トルク」の表示がなされます。
インフォテイメントシステムはセンターに設置されたタッチ式スクリーンにて操作するという最新の構成。
センターコンソールやこういったパネルは「フロート」構造を持ち、間接照明によって浮かび上がるかのように照らし出され、ぼく的にはかなり高級感があるんじゃないかと考えています(ぼくはメルセデス・ベンツの内装デザインが大好きである)。
ちなみにですがシートポジションはかなり低め。
後部座席はけっこう広く、大人が乗車するには苦しいかもしれませんが、手荷物やコートを置くには十分すぎる広さだと思います。
外装については以前に展示車を見てきた際の印象を以下にアップしており、そちらを参考にしていただければと思います。
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新型メルセデスAMG SL43を運転してみよう
内外装をチェックした後は新型SL43に乗り込み、シート含むドライビングポジション、ミラーなどを合わせて早速試乗スタート。
ギアセレクターは他のメルセデス・ベンツ同様にコラム式を採用しており、ステアリングコラム右側のレバーを下に倒して「D」レンジに入れるだけで発進が可能です。
スタートは非常にスムーズであり、パーキングブレーキが解除される際のショックがまったくなく、このあたりはメルセデス・ベンツの高級車ラインナップからのフィードバックなのかもしれませんね。
そしてひとまずは駐車場内をゆっくりと走りつつクルマに慣れてゆきますが、ロングノーズ・ショートデッキというプロポーションを採用する割にはけっこう車両感覚をつかみやすく(4シーターということもあり、実際には意外とシート位置が前に出ている)、比較的普通のクルマといった感覚にて走行が可能です。
ちなみにサウンドはかなり静かで、これはやはり「排気量が2リッター」ということ、そして騒音規制に起因するものだとも思われますが、ドライブモードを「スポーツ」「スポーツプラス」にするとけっこう大きな(太い快音)サウンドへと変化します。※メルセデスミーの人によれば「AMGモデルはフェイクサウンドを使用していない」とのこと
参考までに、低回転時や(屋内駐車場のような)周囲が静かな状況だと高圧インジェクターの作動音っぽいノイズがけっこう車内に入ってくるものの、普通に路上に出て走行すればほぼその作動音も気にならず、むしろエキゾーストサウンドが目立つように感じます。
加速性能については申し分ないと考えていて、それはやはり新開発の電動ターボによるところが大きく、低回転時にはタービンを(エレクトリックモーターにて)強制的に回転させて加給を行うというシステムのおかげでモリモリと前に出るという印象ですね(0−100km/h加速は4.3秒であり、ポルシェ911カレラの4.2秒と比較しても遜色はない)。
新型メルセデスAMG SL43のハンドリングやブレーキは?
そして様々な状況にてAMG SL43を走らせて思ったのは「かなり足回りが引き締まっている」ということで、これは先代SLとの大きな相違でもあり、性格的にはAMG GTにかなり近くなったようにも思います。
なお、新型メルセデスAMG SLはその名のとおりAMGブランドからの発売であり、開発自体も次期AMG GTと共同にて行われていることが公に語られていますが、先代SLと現行AMG GTとはその性格に大きな隔たりがあり、SLは快適なグランドツアラー、そしてAMG GTはスパルタンなスポーツカーという感じで「全く別のクルマ」。※ボディ剛性も全く異なるクルマだった
ただし次期AMG GTではオープンモデル(ロードスター)が消滅してクーペのみになること、そしてオープンモデルはAMG SLに併合されることもアナウンスされているので、この新型AMG SLは実際のところ「次世代AMG GTのオープンモデルが先に出てきた」といったところなのかもしれません(そのためAMG GTとAMG SLとの乗り味が近くとも、ボディ形状やシート数によって差別化ができる)。
とにかく足回りが締め上げられ、ボディがガッチリと硬いというのがまっさきに感じたことで、そしてオープンモデルにありがちな「内装のきしみ音」も一切感じられず、実際に相当に高いボディ剛性(と内装の高い立て付け精度)を持っているもよう。
試乗コースには「踏切」が含まれていて、ここはぼくが近辺のディーラーにて試乗を行う際のひとつの「目安」だと考えており、ここを超える際にボディがブルブルとシェイクされたり、足回りがバタバタするクルマは「今一つ」だという判断を下してしまいます(平坦なところを走っている際にはボディ剛性が高いように感じられたとしても、ここを通過すると一気にその印象が崩れることがある)。
ただ、メルセデスAMG SLの場合、ほかの平坦な路面を走行しているときと同じようにこの線路を通過してしまったのにはそうとうに驚かされ、その足回りの硬さから「けっこう衝撃が来るな」と身構えていただけに拍子抜け。
この踏切をこれだけあっさり通り過ぎてしまったクルマはぼくの知る限りではAMG SLが唯一の例であり、その足回りのセッティング、そしてハードなサスペンションを支えるボディ剛性の高さには非常に驚かされます。
そのほか足回りについては「フラットライド」を完璧に実現していることも特筆すべき点であり、たしかにメルセデス・ベンツはサルーンにおいても徹底したフラットライドを(メカニカル、電子制御両方の面で)目指していて、ここでも新型AMG SLはその恩恵を受けているのかもしれません。
ブレーキはちょっとだけ「カックン(最近のクルマにしては珍しい)」ですが、これはすぐに慣れるところであり問題とはならなさそう。
ステアリングホイールの操作感はかなり軽く、しかしふわふわした印象もなく、センターが安定し、ちゃんとロードインフォーメーションも感じられる「スポーツカーの見本」のようなものであり非常に好ましいフィーリングだという感覚で、このあたりもAMG GTにかなり近いものだと認識しています。
新型メルセデスAMG SLはメルセデス・ベンツの「スポーツ」イメージを構築できるか
試乗を通じての全体的な印象は「GTカー」よりも「軽快なスポーツカー」といったものであり、これまでに運転したどのメルセデス・ベンツよりも「スポーツカー」。
唯一これよりもスパルタンなのは(ぼくの知る限りでは)AMG GTのみですが、上述のとおり新型AMG SLはAMG GTにかなり近く、AMG専売モデルだけあってほかのメルセデス・ベンツ各モデルとは一線を画すという印象です(ハンドリング、足回り、ブレーキングにおいて、非常に繊細かつダイレクトであり、そこに曖昧さは一切ない)。
たしかにメルセデス・ベンツ自身も、新型SLについては「初代SLに回帰した真のスポーツカー」だと表現しており、その言葉には嘘偽りはないというのが正直な感覚ですね。
なお、近年のメルセデス・ベンツにおいては、直近の(これまでの)SL含めてやや快適志向にシフトしすぎてしまった感があり、そのためにAMG GTが登場したときも「スポーツカーというよりもGTカーなんでしょ・・・」という(快適志向だった)SLのイメージに引っ張れられた(実際に運転したことがない人々による)判断が市場においてなされ、しかし実際にはミドシップフェラーリもびっくりのスパルタンなクルマであったわけですが、つまりAMG GTはそれまでのメルセデス・ベンツのイメージによって「損をしていた」クルマだとも認識しています。
ただ、今回の新型AMG SLはこれまでのSLのイメージを一気にひっくり返してしまう「リアルスポーツ」であり、その評価が定着すれば、これから登場することになる新型AMG GTも「先入観によって損をする」ことはないのかも。
新型メルセデスAMGについてはネガティブな印象はなく、しかし唯一気になったのはその視界。
メルセデス・ベンツはそのブランディング上「ローングノーズ・ショートデッキ」を持つプロポーションを再現しようと務めていますが、そのために「切り立った」そして天地に短いフロントスクリーンを持っていて、しかしこれが斜め前方の視界をドアミラーとともにやや遮っており、しかしこれはシートポジションなどドライビングポジションの調整にて解決できるかもしれません。
この1648万円を正当化できるかどうかについては個々の判断に委ねるしかなく、しかし(それぞれ性格が異なれど)ポルシェ911カレラ・カブリオレの1728万円、BMW M4カブリオレの1463万円、レクサスLCコンバーチブルの1477万円あたりが直接の比較になるものと思われ、しかし「SL」というブランド力、そして「AMG」開発という付加価値を考慮するならば、ぼくはけっこう優位性があるんじゃないかとも考えています。