
| パワートレインやドライブフィール同様、インテリアもまた「アナログ」へと回帰することになるのかも |
ただしメルセデス・ベンツは現時点で「これからのラグジュアリー」を見出すことができていない
さて、メルセデス・ベンツは「56インチ」を誇るハイパースクリーンをダッシュボードに採用し、さらにそのサイズを拡大する意向を示していましたが、そこからなぜか翻意を行ったと見え、同社のチーフデザイナー、ゴードン・ワグナー氏が「大きなスクリーンはラグジュアリーではない」「高級車の内装はスクリーンを中心に据えるべきではない」という衝撃発言を行うことに。
この背景にはいろいろな要素があるようですが、同氏は「ダッシュボードに多くのディスプレイを詰め込むことはもはや斬新なことではなく、どんな車にも大きなスクリーンがある」と語っているので、「もはや巨大スクリーンは高級車を定義する要素ではなくなった」と考えているのかもしれません。
現在、メルセデス・ベンツは「高級車」のあり方を再考中
自動車業界において何十年もの間、「高級車」は素材の品質や組み立て精度、大排気量エンジンによって定義され、しかしこの5年ほどでその定義が(環境規制も一部関係して)崩れ去ってしまい、高級な素材や高い組み立て精度が「当たり前」となり、環境への配慮から大排気量エンジンが「悪」へと変化しています。
よって各自動車メーカーとも「高級車とはなんぞや」を再考する必要に迫られ、そこで数年前に出した結論が「巨大なディスプレイや高度なソフトウェア、その他のガジェット」だったのだと思われますが、これらもまた時間の経過とともに普及価格帯のクルマにも”普通に”装備されるようになり、高級車特有の装備ではなくなってしまったわけですね(中国車に顕著である)。
こういった状況を踏まえつつ、ゴードン・ワグナー氏は「だからこそ、スクリーンを超えたラグジュアリーを創造する必要があるのです。だからこそ、私は職人技と洗練について語るのです。クルマそのものをより良くすることに大きな重点を置いており、かつての栄光にふさわしいブランドであり続けるために、他の分野での向上が必要なのです」と述べているのですが、現時点でメルセデス・ベンツはその解を見つけることができておらず、よって新型(フェイスリフト版)Sクラスでは引き続き「巨大ディスプレイ」を中心としたアップグレードが行われると言われています。
「大型スクリーンに対応できるコンテンツ」不足も
ただ、ゴードン・ワグナー氏はこの巨大なディスプレイについて「宝の持ち腐れ」だとも認識しているようで、以下のようにもコメントしており、今後は「ハードとソフト」の足並みを揃える意向についても述べることに。
「ソフトウェアの面では、あまり良くなかった。大きなスクリーンがあるなら、素晴らしいコンテンツが必要です。そこで、より特化した、よりエンターテイメント性の高いコンテンツを開発しています。」
よっておそらく、メルセデス・ベンツは今後「コクピットのあり方」について(再)再考することになるのだと思われ、これによってクルマの内装は「指紋だらけのディスプレイ」「瞬時に、そして直感的な操作ができないタッチパネル(必要な機能を呼び出すのに複数アクションが必要)」「ナイトクラブのような車内」に終わりを告げ、”真のラグジュアリー”へと向かうのかもしれませんね。
なお、「ディスプレイを”ラグジュアリーではない”」と捉える層は少なくはないと見え、実際のところベントレーだと「ディスプレイを隠すことができる」ローテーションディスプレイの装着率が高いとされており、世の中の富裕層が求めるのは「シックで上質な」内装ということになりそうですね(この方向性はブガッティ・トゥールビヨンにも見ることができる)。
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