
| 日本ではとうの昔に忘れ去られた案件ではあるが |
この記事の要約
- 不正の規模: 2008年〜2017年に販売されたディーゼル車21万1,000台以上に「無効化装置」を搭載
- 驚愕の実態: 路上走行時の排出ガスは、法規制値の30〜40倍に達していた
- 追加和解金: 連邦政府との22億ドルに加え、州政府連合に対し約1億5,000万ドル(約234億円)を支払う
- オーナー補償: 排ガス改修を受けたオーナーに対し、1人あたり2,000ドル(約30万円)の支払いを義務付け
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BMWが新たな「ディーゼル不正」疑惑にて調査対象に。環境テスト時のみ排ガスがクリーンになるチートデバイスを仕込んだという疑いがもたれる
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終わらない「ディーゼルゲート」の衝撃
メルセデス・ベンツが長年引きずってきた排ガス不正問題が、州政府連合との(追加での)和解により大きな節目を迎えたとの報道。
ニューヨーク州司法長官をはじめとする超党派の連合は、「メルセデス・ベンツはクリーンでグリーンという虚偽の宣伝を行い、コミュニティを違法に汚染した」と(和解に際しても)厳しく断罪しています。
かつて「クリーンディーゼル」として販売されていた車両の裏側で、政府のテスト時だけ排出ガスを抑え、実走行では汚染物質を”(司法当局によれば)撒き散らす”ソフトウェアが機能していたことが今回の和解で(メルセデス・ベンツがこれを認めたことで)改めて浮き彫りとなったわけですね。
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巧妙な「無効化装置」の仕組み
今回の不正の肝は、「AECD(補助排出制御装置)」と呼ばれるソフトウェアです。
- テスト検知: 車両が公式の排出ガス試験を受けていることを検知すると、排ガス浄化装置がフル稼働モードに切り替わり基準をクリア
- 実走行: 通常の運転状況ではフル稼働モードが解除され、NOx(窒素酸化物)の排出が急増
- メーカーの意図: 排ガス抑制剤(AdBlue)の消費を抑え、(フル稼働モードでは悪化する)燃費や走行性能の低下を防ぐためにこの「二重基準」が使われていた
対象車種リスト(2009年〜2016年モデル)
今回の和解の対象となっている主なモデルは以下の通りで、多くの人気SUVやセダンが含まれています。
| モデル | 対象年式 |
| E250 / E350 | 2011–2016 |
| GL320 / GL350 | 2009–2016 |
| GLE300d / GLE350d | 2016 |
| GLK250 | 2013–2015 |
| ML250 / ML320 / ML350 | 2009–2015 |
| S350 | 2012–2013 |
| R320 / R350 | 2009–2012 |
| スプリンター (4/6気筒) | 2010–2016 |
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VWがスローガン「Das Auto」を廃止。ディーゼル不正問題の影響で
VWが2008年以降掲げてきたスローガン、「Das Auto」を廃止の意向。 ただしイキナリ廃止するのではなく、徐々に廃止して行くようですね。
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オーナーへの補償とメルセデス・ベンツの義務
今回の和解条件には、将来の不正防止と既存オーナーへの手厚い補償が含まれており、メルセデス・ベンツは和解金のほか、オーナーに対して「補償金」を支払う必要が生じています。
- オーナーへの支払い: 承認された排ガス改修を受けたオーナーに対し、メルセデス・ベンツは2,000ドルを支払う必要がある(申請期限:2026年9月30日)
- 改修のインセンティブ: メルセデス・ベンツは、車両の改修や買い取り1台につき750ドルのクレジットを国から受け取る
- 広告の制限: 今後、正確な根拠がない限り、ディーゼル車を「クリーン」や「低公害」と宣伝することは厳格に禁止される
結論:ブランドの信頼回復への長い道のり
メルセデス・ベンツはすでに連邦政府と22億ドル(3432億1600万円)の和解を行っており、今回の1.5億ドル、そしてユーザーへの補償が加わることで、総額は天文学的な数字に達します。
かつて「最善か無か(The Best or Nothing)」を掲げたブランドが、このような形で「数値の偽装」を行っていたことは、ファンやオーナーにとって大きな失望となってはしまいましたが、今後はEVシフトを加速させる一方、既存のディーゼル車に対する誠実な対応が信頼回復の唯一の道となりそうですね(フォルクスワーゲン同様、ディーゼル不正事件の印象を拭い去りたいがためにメルセデス・ベンツは電動化を急いでいたのかもしれない)。
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参照:CARSCOOPS














