>ポルシェ(Porsche)

ポルシェ911タルガはなぜ「特別」なのか?その誕生、歴史、そして現在に至るまで。ポルシェの思想、技術、芸術性がここに詰まっている

ポルシェ911タルガはなぜ「特別」なのか?その誕生、歴史、そして現在に至るまで。ポルシェの思想、技術、芸術性がここに詰まっている

Image:Porsche

| ポルシェにとって911「タルガ」は特別な存在である |

そしてある意味での「ポルシェの頂点」としての存在でもあると考えていい

さて、ポルシェ911の特徴的なボディバリエーションのひとつが「タルガ」。

これはいわゆる「タルガトップ」を備えるもので、このタルガトップとは一般に「取り外し可能なルーフトップ」を指すことが多く、シボレー・コルベット、そしてかつてはフェラーリも一部モデルでこれを採用したことも。

ただ、この「タルガ」という名称はポルシェが最初にこの「着脱可能なルーフ」を持つクルマに対して与えたもので、つまり正確には「タルガトップ」というのはポルシェにおける特定のボディ形状を持つクルマということになりそうです(ただ、商標が取得されているわけではないようで、一般化した名称であると認識できる)。

6

Image:Porsche

ポルシェ911「タルガ」はどうやって誕生したのか

そこでこのポルシェ911「タルガ」誕生の経緯について掘り下げてみると、ポルシェは901(のちに解明されて911になる)の設計当初からオープンモデルを導入する計画を持っており、すでに1962年にはボディ製造を委託していたカルマン社とロイター社との協議を行っています。

【動画】自らその理由を語る時が来たようだ。ポルシェが公式にて「911」はなぜ「911というモデル名になったのか」を公開

| ポルシェ911はもともと911ではなかった | 先日「現在消息がわかる限り、最古の911」が偶然見つかったというニュースがありましたが、現在その911はレストアされてポルシェミュージアムにて展示中 ...

続きを見る

この協議は「クーペ版の911の生産によって工場のキャパシティが圧迫されていたため」しばらく棚上げになっていたものの、「通常のソフトトップを備えるオープン」「シンプルなロードスター」「固定式ロールバーを持つ構造」の3つが検討され、しかし1960年代なかばに(主要市場である)北米においてオープンモデルに関する基準が厳格になったこと、そして技術的にも合理的であったことから「固定式ロールバーを持つ構造」が採用されることに。

かくして1965年のフランクフルト・モーターショーにてデビューしたのが「911タルガ」で、1967年からは「912タルガ」も追加されています。

10

Image:Porsche

意外とポルシェは「現場のインスピレーション」を重んじる

この「タルガ」という名前につき、当時セールスマネージャーを努めていたハラルド・ヴァーグナーが採用したものだといい(発売直前に取り入れられたようだ)、この由来はポルシェが活躍したことで知られる公道レース、「タルガ・フローリオ」から。

ちなみにこの「タルガ・フローリオ」は「フローリオ家の盾」という意味で、優勝者には(主催者である)フローリオ家からありがたい「盾(トロフィーの代わり)が授与される」ということからその名称が用いられています。

ポルシェが「911タルガ」の名称の由来を公開!代案としては「フローリ」、そしてタルガの意味はイタリア語で「ナンバープレート」だった・・・
ポルシェが「911タルガ」の名称の由来を公開!代案としては「フローリ」、そしてタルガの意味はイタリア語で「ナンバープレート」だった・・・

| まさか「タルガ」が「ナンバープレート」を意味するとは知らなかった | 自動車のネーミングの由来というのは実に興味深い さて、ポルシェが自身のツイッターにて「タルガ」の由来を公表。なお、「タルガ(T ...

続きを見る

そしてこの「タルガ」は「盾」のほか「プレート」、自動車業界では「ナンバープレート」の意味があるそうですが、ポルシェではこれまでにも「ダックテール」「タータンチェック」「ピンクピッグ」など、現場のふとした思いつきから採用された名称や意匠が少なくはなく、このあたり「合理性と計画性を重んじる」ポルシェらしからぬユニークなエピソードかもしれません。

ポルシェ911カレラRS 2.7にて初めて採用された「ダックテール・リヤスポイラー」。なぜあの形状が取り入れられ、「ダックテール」と命名されたのか
ポルシェ911カレラRS 2.7にて初めて採用された「ダックテール・リヤスポイラー」。なぜあの形状が取り入れられ、「ダックテール」と命名されたのか

| ダックテールリヤスポイラーはドイツ特許庁にも登録されていた | ポルシェは自らのクルマや機能にニックネームを付けるのが好きだった さて、ポルシェ911カレラRS2.7(ナナサンカレラ)は今年で50 ...

続きを見る

Porsche (4)

Image:Porsche

ポルシェ
「そうだ、フロントにエンジンを積んでみよう」「911を生産中止から救った男」など、ポルシェ75年の歴史において転換期となった年、そして人物8選

| ポルシェはこの75周年を時代のうねり、数々の転換期とともに過ごしてきた | そして現在の成功は、いくつかの大きな判断の上に成り立っている さて、ポルシェは今年でスポーツカーの生産を開始して75周年 ...

続きを見る

ポルシェ911タルガは「クーペとオープンモデルの利点を併せ持つ」クルマ

当時の911タルガは「タルガトップ装着状態」「タルガトップ取り外し状態」「リアウインドウ装着状態」「リアウインドウ取り外し状態(ジッパー式。1969年にはパノラマウインドウに変更)」という4つのボディ形状を楽しめるクルマ、そしてクーペの安全性とオープンの開放感とを併せ持つクルマとしてリリースされていますが、この構造はのちの914にも導入され、924でも検討がなされたほか、カレラGTにも採用されています。

ポルシェはかつて924ターボ「タルガ」の開発を行っていた。走行わずか328kmのプロトタイプを残して計画が廃棄されたその理由とは
ポルシェはかつて924ターボ「タルガ」の開発を行っていた。走行わずか328kmのプロトタイプ1台を残して計画が廃棄されたその理由とは

Image:Porsche | ポルシェは昔から様々な可能性を追求してきた | それでも実際に発売されるクルマは非常に少なく、それだけポルシェは「慎重」ということなのだろう さて、それぞれの自動車メー ...

続きを見る

この「タルガトップ」は911の最初の3世代まで継続され、つまりは964までがこの「タルガバー+着脱式ルーフ」を持つことに。

7

Image:Porsche

ただし1995年に登場した993世代では「タルガバー」は廃止されてガラスルーフが前後にスライドするという構造を採用し、その外観が「クーペ同様」へと変更され・・・。

9

Image:Porsche

996世代でも同様ですね。

この理由はいまでも「ナゾ」ではあるものの、安全性、空力、そして手動による「脱着」操作がセレブ的ではない(収納場所にも困る)など、いろいろな要素が加味されたのかもしれません。

8

Image:Porsche

しかし2014年にはこの「タルガバー」が第7世代の「991」型911とともに復活。

ただしそれまでの「タルガバー+脱着しルーフ」ではなく、外観こそ「クラシカルなタルガバー+パノラマウインドウ」を備えるも、その開閉はボタン一つの全自動にて行われ、「タルガトップとリアウインドウがガバっと動く」というスペクタクルなもの。

31

これは992世代でも同じ構造を採用しており、こんな感じで動作します。

この一連の動作は見事としかいいようがなく、この機構のため911タルガは非常に高価なクルマとなっているのですが、そのぶん「エレガントさを求め、コストを厭わない」リッチな人々のためのバリエーションとして存在しており、よって「911タルガに乗っている人は、本物を理解し、それだけのお金を支払うことができる、大変裕福な人」ということに。

1

現代のポルシェ911タルガはある意味では「もっともポルシェらしい」クルマである

つまるところ、現代の911タルガは「初代911タルガの魂を宿しつつ、クーペとオープン両方の利点を持つという特徴も継承し、しかしボディ形状の変更はオーナーの手を煩わせることなくボタン一つで行うことができ」、それを実現するためにポルシェはエンジニアリングを極めることになったという特別なクルマ。

2

よって911タルガはポルシェの歴史、思想、そして技術、さらには芸術性が凝縮された1台ということになりますが、ポルシェがつい最近建設を発表したタワーマンションにも「911タルガ同様の機構が採用されていたり(たぶんバルコニーのウインドウが自動でガバっと動くのだと思う)、ポルシェデザインがあたらしく「911タルガをイメージした」ラゲッジシリーズを発売したことからも、いかにポルシェが「911タルガをリスペクトしているか」がわかろうというものですね。

ポルシェがタイに超高級タワマンを建設。入口にはミッションRのルーフ、トップには911のテールランプ、バルコニーには911タルガのルーフ開閉機構がフィーチャーされ21-57億円
ポルシェがタイに超高級タワマンを建設。入口にはミッションRのルーフ、トップには911のテールランプ、バルコニーには911タルガのルーフ開閉機構がフィーチャーされ21-57億円

Image:Porsche | このポルシェによるタワーマンションの部屋数は21、それだけバンコクにはお金持ちがいるということなのか | たしかに今東南アジアは「アツい」地域ではある さて、ポルシェが ...

続きを見る

2

ポルシェデザインが新作「ロードスター・アルミニウム」スーツケースを発表|911タルガから着想を得た次世代ラゲッジ
ポルシェデザインが新作「ロードスター・アルミニウム」スーツケースを発表|911タルガから着想を得た次世代ラゲッジ

Image:Porsce Design | 「リモワ」とのコラボレーション決別を示唆する第一歩か | ポルシェ911タルガのデザイン哲学がラゲッジの世界にも さて、様々なライフスタイル系グッズを発売す ...

続きを見る

余談ではあるものの、ポルシェが最初に「輸出」を行った国はオランダで、オランダ警察では当時911タルガをパトカーとして導入しているのですが、その理由は「パトロール時にタルガトップを外して走行し、違反車両を見つけると、ルーフの上から”停止サイン”を出して違反車両のドライバーにそれを示すことができたから」。

これはこれで「タルガトップの思わぬメリット」であるとも言えそうですね。

今年の「違法チューン取締り」パトカーはテックアートによるポルシェ911タルガ!このパトカーだったらどんなクルマも捕まえられそうだな・・・。
今年の「違法チューン取締り」パトカーはテックアートによるポルシェ911タルガ!このパトカーだったらどんなクルマも捕まえられそうだな・・・。

| エッセン・モーターショー開催とともに毎年公開されるのが「チューニング警察」 | 違法チューンを取り締まる啓蒙キャンペーンににて毎年車種を変えて特別に製作される さて、毎年ドイツにて開催されるエッセ ...

続きを見る

合わせて読みたい、ポルシェ関連投稿

ポルシェ911
992世代のポルシェ911「後継モデル」のコードネームは何番に?なんと901〜999の間でポルシェが使用していないのは24個しかない

| ということは、「ポルシェ999」も存在していたのか | さて、現行911のコードネームは「992」ですが、この次のコードネームはどうなるのかということが話題に。参考までに、これまで911のコードネ ...

続きを見る

ポルシェの「コードネーム」には知られざる秘密があった。「なぜ900番台を使用したか」他

| ポルシェのコードネームには規則性がある | ポルシェの各モデルには「コードネーム」があり、古くは「356」「550」「911(これは現代ではモデル名になっている)」、「914」「924」「928」 ...

続きを見る

ポルシェは1975年の911ターボにて「市販モデルにタータンチェックを初採用」。なおタータンを採用しようと考えたのは「当時のデザイナーが履いていたタータンパンツから」
ポルシェは1975年の911ターボにて「市販モデルにタータンチェックを初採用」。なおタータンを採用しようと考えたのは「当時のデザイナーが履いていたタータンパンツから」

| 当時、そのデザイナーのファッションがよほど印象的であったに違いない | 常に時代が変わるのは「些細なこと」からである さて、日本ではそれほど「ポルシェとタータンチェック」という関連性が強く感じられ ...

続きを見る

参照:Porsche

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

  • この記事を書いた人

JUN

2013年より当ブログを運営中。 国産スポーツカー、ポルシェ、ランボルギーニ、フェラーリ等を乗り継ぎ現在に至ります。 単なる情報の記載にとどまらず、なにかしら自分の意見を添え、加えてクルマにまつわる関連情報(保険やメンテナンスなど)を提供するなど「カーライフを豊かにする」情報発信を心がけています。 いくつかのカーメディアにも寄稿中。

->ポルシェ(Porsche)
-, , , ,