| 当時、そのデザイナーのファッションがよほど印象的であったに違いない |
常に時代が変わるのは「些細なこと」からである
さて、日本ではそれほど「ポルシェとタータンチェック」という関連性が強く感じられないものの、欧州では両者の”切っても切れない”関係性がよく知られており、今回ポルシェがそのルーツを公開するコンテンツを公開。
もともとタータンチェックはスコットランド発祥であり、氏族ごとに独特のパターンを持つ家紋のようなものだそうですが、今回ポルシェは「アイデンティティ、帰属意識、誇りを象徴する、スコットランドの伝統的な織物とポルシェ」との意外な出会い、そして現在に至るまでの継続的な関係性を自ら語っているわけですね。
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ポルシェとタータンチェックとに関係性は1975年にまで遡ることができる
ポルシェが最初にこのタータンチェックを取り入れたのは1975年、「ポルシェ911ターボ専用のオプションとして」。
この際には3つのパターンが用意され、ポルシェにとってのタータンチェックは”品質とデザインの卓越性と伝統”を表し、当時の911ターボにおけるハイライトのひとつだったといいます。
ただ、これを取り入れたのは半ば偶然のようなもので、タータンチェックを採用しようと決まったのは(当時のポルシェのチーフデザイナーであった)アナトール ラピンが着用していた「タータンチェック柄のパンツ」だったそうで、彼の大胆なスタイルの選択にインスピレーションを受け、ポルシェのデザインチームは「このクラシックなパターンがクルマのインテリアに独特の雰囲気を加える方法を探ることにした」。
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ただし当時タータンチェックを生産していた工場では「自動車のシートに要求されるだけの強度を持つ」タータンチェック生地を供給できず(もともと用途が異なるので仕方がない)、そこで(1970年から1975年までポルシェのスタイリストを務めた)ドロテア・ミュラー・グッドウィンがドイツにて耐久性の高いタータンチェックを製造できるサプライヤーを見つけ、ここでようやく「伝統的なタータンの精神をとらえながら、耐光性と耐摩耗性の要件を満たす」タータンチェックインテリアが完成したわけですね。
そしてこのタータンチェックはポルシェ創業者、フェルディナント・ポルシェの娘であるルイーズ・ピエヒの70歳の誕生日に贈られた911ターボ「No.1」に初めて採用され、その後に市販版の911ターボへとオプション設定されたというのが「ポルシェ911ターボとタータンチェック」のストーリーです。
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参考までに、アナトール・ラピンは964世代の911 のほか、トランスアクスルレイアウトを採用する928、924、 944、さらには959のデザインを手掛けた重要人物ですが、彼の履いていたパンツを「内装に再現しようと」相当な時間と労力をかけてポルシェのデザインチームが奔走しており、よって「よほどその時のアナトール・ラピンのファッションにインパクトがあった」ということなのでしょうね。
そしてこの「911ターボ No.1」はつい先ごろ発表された「911ターボ 50イヤーズエディション」にもインスピレーションを与え、その一部が再現されています。
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もう一つ参考までに、このタータンチェックをはじめて採用したポルシェは厳密に言えば1973年に開催されたフランクフルト・モーターショーにて展示された911 RSR ターボなのですが、ただしこちらは「コンセプトカー」。
このクルマにはブルー、グリーン、ブラックのパターンを使用した「ブラック ウォッチ タータン」にインスピレーションを得た内装ファブリックを採用しており、その後すぐに大胆な赤と青のマクラフリン (別名マクラクラン))タータン、そしてベージュ、赤、青、白、オリーブ グリーンの色合いを持つマッケンジー タータンが考案され、これらが市販モデルの911ターボの「オプション」として採用されています。
「タータンチェック」は上述の通り、現代の「911ターボ 50イヤーズエディション」にも反映され、このインテリアは「マッケンジー」タータンからインスピレーションを得ていて、タータンチェックは18ウェイ・アダプティブ スポーツ シート プラスのシート センターとインテリア ドアパネルに用いられるほか、ダッシュボード、フロアマット、ドアシル、トリムストリップ、PDK ギアセレクター、シートベルトには「ターボナイト」による繊細な装飾ステッチが施され、これによってこの限定版911ターボのインテリアがいっそう特別なものに。
つまりこの911ターボ 50イヤーズエディションは「伝統と現代性をシームレスに融合したということになりますが、ポルシェの過去への印象的なトリビュート、そして同時に未来への方向性をも示しているわけですね。
そしてポルシェの「トリビュート」はこれだけにとどまらず、「911ターボ 50イヤーズ コレクション」なるカプセルコレクションにてアパレルやファッションアクセサリー分野にも進出しており、マクラフリンタータンやマッケンジータータンに加え、様々なラインアップにて展開がなされています。
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