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| ポルシェとタータンチェックとの「出会い」はまさに偶然から |
この記事のハイライト:タータンが織りなすポルシェ911ターボの伝統
- 衝撃の邂逅: ポルシェ911ターボ 50 Yearsのインテリアにマッケンジー・タータンが採用。その発祥の地であるスコットランド高地を訪れる
- 伝統の始まり: ポルシェのチーフデザイナー、アナトール・ラピーヌが履いていたタータン柄のトラウザーズがインスピレーション源
- 初期の採用例: 1973年の911ターボ RSRコンセプト(ブラック・ウォッチ・タータン)や1974年の初代911ターボ(マクラクラン・タータン)で採用
- マッケンジーの特別な歴史: フェリー・ポルシェ自身が所有した911ターボにもマッケンジー・タータンが使用されていた
- 現代の選択肢: ポルシェのSonderwunsch(特別リクエスト)プログラムにより、顧客はタータン柄のインテリアを自由にカスタマイズ可能
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タータンは単なる柄ではない—ポルシェとスコットランドの絆
ポルシェ911ターボは常に技術的な革新と圧倒的なパフォーマンスの象徴ではありますが、しかしその獰猛な性能の裏側には、スコットランドの古き良き伝統、「タータンチェック」という意外な繋がりが存在します。
なぜ、ドイツのスポーツカーメーカーが、遠く離れたスコットランドの伝統的な織物パターンをインテリアに採用し続けてきたのか?
ここでは、タータンの故郷であるスコットランド高地を訪れ、ポルシェとタータンの間に流れる「時代の糸」をたどり、初代911ターボから最新の「911ターボ 50 Years」に至るまで、ポルシェのヘリテージを織りなす重要な要素を紐解いてみたいと思います。
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タータンがポルシェにもたらしたアイデンティティ
チーフデザイナーの「履いていたパンツ」から始まった伝説
ポルシェのインテリアにタータンが採用されたきっかけは「偶然」ともいえるもので、そのおおよその流れは以下の通り。
- 発端: 当時のチーフデザイナー、アナトール・ラピーヌが、ある日タータン柄(米国英語で「プレイド」)のパンツを履いて出勤したことがインスピレーション元となる
- 最初のタータン: 1973年のオリジナル911ターボ RSRコンセプトでは、黒、青、緑の「ブラック・ウォッチ」タータンがシート中央とサイドボルスターに使用される
- 初代911ターボ: 1974年に発表された量産初の911ターボ(ポルシェ一族、ルイーズ・ピエヒに贈呈)には、大胆な赤と青の「マクラクラン」タータンが採用
当時のスタイリングチームの一員だったドロテア・ミュラー=グッドウィン氏によると、当初スコットランドの伝統的な業者に依頼したものの、スポーツカーのインテリアに必要な「耐光性」や「耐摩耗性」を持つ生地の供給は難しかったため、最終的にはシュヴァーベン・アルプス地方の自動車用テキスタイルメーカーの素材が採用されたのだそう。
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ポルシェは1975年の911ターボにて「市販モデルにタータンチェックを初採用」。なおタータンを採用しようと考えたのは「当時のデザイナーが履いていたタータンパンツから」
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フェリー・ポルシェの愛車とマッケンジー・タータン
タータンチェックがポルシェのオプションとして正式に提供されるようになったのは1975年の911ターボから。
- オプション化: 顧客は3種類の異なるタータン張り地を選べるようになり、その成功を受けて翌年には911の他のモデルにも採用が拡大
- 特別なタータン: この3種類の中には、創業者フェリー・ポルシェが所有したオークグリーン・メタリックの911ターボにも使われていた「マッケンジー・タータン」が含まれる
そして今、マッケンジー氏族の現在の当主であるクロマーティ伯爵が住む「キャッスル・レオド」の長い私道に、そのマッケンジー・タータンを進化させた柄(より落ち着いた緑、茶、白)をまとった「911ターボ 50 Years」が姿を現したわけですね。
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タータンが象徴する「アイデンティティ」と「帰属意識」
クロマーティ伯爵(ジョン・ターバット氏)は、タータンと氏族(クラン)が現代において持つ意味について、「タータンを着ることで、私たちはクランに属していることを示すことができる。クランは、人種、宗教、政治に関係なく人々を結びつける」とコメント。
- 普遍的な価値観: マッケンジー氏族は世界中に200万人ものメンバーを擁しており、人々はポルシェのように「一時的なものではなく、本物の歴史の感覚」を求めている
- アイデンティティ: タータンを身につけることは、「フットボールのユニフォームを着るのと大差ない」ほど、アイデンティティと帰属意識を与える行為だと説明
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タータンの歴史と現代の多様性
さらにポルシェのチームはタータンの歴史と伝統の深さを知るため、英国王室御用達のタータンメーカー、キンロック・アンダーソンのジョン・キンロック・アンダーソン氏(6代目)を訪ね、その歴史を掘り下げています。
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タータンの起源と進化
- 古代: タータンの柄は、その土地で採取できる植物の色素によって染められており、住んでいる場所によって異なる模様が生まれ、それが氏族と結びつくようになった
- 1745年の反乱後: ジャコバイトの反乱後、氏族のタータンは一時的に禁止されましたが、19世紀にイギリス王室が流行させたことで復活し、正式にコード化されるようになった
- 現在の登録数: 現在、商業的に織られているタータンは2,000種類以上あり、スコットランド政府公認の「スコットランド・タータン登記所」には、さらに10,000種類以上が登録されている
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タータンの多様性
キンロック・アンダーソン氏は、タータンは必ずしも氏族に結びついている必要はないと指摘し・・・。
- 選択の自由: 祖先がスコットランド出身でなくても、スコットランドへの訪問や友人との繋がりなど、「自分にとって意味のあるもの」であれば、誰でもクランを選ぶことができる
- 非クランタータン: 氏族とは関係のない「ハウス・タータン(企業や家族のタータン)」や、ウイスキー、ゴルフ場にちなんだタータンなど、現代では多様なタータンが存在している
1970年代にタータンが大流行した際(ベイ・シティ・ローラーズやロッド・スチュワートの時代)、キンロック・アンダーソン社は年間10万枚ものタータン製品を輸出しており、ラピーヌ氏が履いていたパンツも(時期的に)同社が製造したものであった可能性も示唆されています。
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伝統と個性を結びつけるソンダーヴンシュプログラム
タータンチェックは、ポルシェにとって単なるレトロな装飾ではなく、「普遍的な歴史の感覚」と「個人的なアイデンティティ」を表現するための重要な言語です。
そして、ポルシェのSonderwunsch(=ソンダーヴンシュ。特別リクエスト)プログラムを通じて伝統が現代の顧客へと受け継がれており、このプログラムではポルシェミュージアムのアーカイブ担当者の協力を得て、顧客は自分だけのタータン柄をシートやドアトリムに採用するなど、夢のカスタマイズを実現することが可能となっています。
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ポルシェのタータンは、スコットランドが世界にもたらした偉大な贈り物の一つでることは間違いなく、時代を超えて「個人の夢」と「ブランドの歴史」を強く結びつける、ポルシェのビスポーク(特注)文化の核であり続けるとなり続けることとなりそうですね。
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