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VWが他社がなし得なかった方法で「EVを軽く、強く、安全に」作ることができる新素材、耐荷重複合材料(コンポジットマトリックス)を開発。そのカギはAIにあった

2023/07/23

VWが他社がなし得なかった方法で「EVを軽く、強く、安全に」作ることができる新素材、耐荷重複合材料(コンポジットマトリックス)を開発。そのカギはAIにあった

| フォルクスワーゲンは新型バッテリーの導入にも言及し、ここから大きく巻き返しを図ることになりそうだ |

すでに内外装デザインの変更含め、EV刷新計画が始まっている

さて、「フォルクスワーゲンが、BMWが成し遂げることができなかったイノベーションを果たし、EVにおけるリードを築くばかりか、ポルシェ、ランボルギーニ、ベントレー、アウディにもその恩恵が行き渡る」ことになるもよう。

このイノベーションとは具体的には「耐荷重複合材料(コンポジット・マトリックス)」を指しており、「自重の30,000倍を支えることができ、既存素材よりも60%以上軽く、衝撃吸収性に優れる」というもので、EVをより強靭に、より軽く、より安全に作ることが可能となる夢の素材です(もちろんガソリン車にも使用できる)。

フォルクスワーゲンはどうやってコンポジット・マトリックスを開発したのか

なお、EVはどうやっても(そのバッテリーに起因して)重くなることがわかっており、そのためいち早くEVに参入したBMWが目をつけた素材が「カーボンファイバー」。

i8やi3にこれを採用することで車体重量の低減を計っていますが(あまり知られていないがBMW i3はカーボンファイバー製モノコックフレームを持っている)、これによって恐ろしく高価になってしまった割に”精彩を欠いたハンドリングと並以下の航続距離”しか実現できず、せっかく大金を投じてカーボンファイバー工場を建設したにも関わらず、その投資がほぼ無駄になってしまっています(投資を回収するためにカーボンファイバー製ホイールを製造しBMWの各モデルに装着するという話もあったが、これもなくなってしまったようだ)。

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そこで今回フォルクスワーゲンが「BMWがなし得なかった、EVの車体を軽く作る方法」をどうやって開発したのかについて。

VWによれば、ノックスビルにあるフォルクスワーゲンのイノベーション・ハブにてテネシー大学(UT)およびオークリッジ国立研究所(ORNL)と共同にて研究を行っており、そこで重要な役割を果たすのがAI(人工知能)。

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このAIを用いて開発したのが上述のコンポジット・マトリックスですが、フォルクスワーゲンは既存のカーボンファイバー複合材を使用する代わりにAIアルゴリズムを使用し、液体樹脂から3Dプリントできる「ピラミッドが交錯するモジュール式マトリックス」を開発しています。

このコンポジット・マトリックスは軽量かつ強靭で、自重の30,000倍を支えることができる一方、現在の技術を用いるよりも60%軽く成形でき、高いエネルギー吸収性能を持つために衝突の衝撃に耐えることも可能です。

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なお、フォルクスワーゲンはこの素材を車体やボディパネルに使用するのではなく、ID.7やID.BuzzのようなMEBプラットフォームを持つEVのバッテリー・ハウジングとして使用することを考えており、たしかにその用途であれば「自重の30,000倍を支えることができ、既存素材よりも60%以上軽く、衝撃吸収性に優れる」というメリットを十分に活かせそうであり、その結果として軽量化と構造剛性の向上が実現し、将来のVW製EVの航続距離と安全性が向上する可能性を秘めています。

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フォルクスワーゲンは他にこんな技術も開発している

そのほか、このイノベーション・ハブでは様々な技術が開発されていて、いくつかの例としてワイヤレス充電、軽量ボディパネルなどが紹介されており、これら技術はフォルクスワーゲン本体ばかりではなく、VWグループ全体でつまりポルシェ、ランボルギーニ、ベントレー、アウディなどに転用される可能性がある、とのこと。

ワイヤレス充電に関してだと、VWイノベーション・ハブは、従来のプロトタイプよりも高い効率を誇る炭化ケイ素インバーターを使用した、他社の取り組みとは似て非なるユニークなコイルと充電パッド設計にて特許を取得しており、現在は実用化に向けて300kWの充電速度の達成しすることを目指しているのだそう。

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軽量ボディパネルについては「従来のパネルに比較して35%軽い」素材の開発に成功しており、これもまた「軽量なEV」の実現に貢献することになり、この技術はEVの航続距離をさらに向上させることになるのかもしれません。

そのほか「紙をベースとした内装パネル」も実用化の一歩手前まで来ているとのことで、これはセルロース繊維強化熱可塑性プラスチックをホットプレスによって作るそうですが、軽量で加工が容易、かつ「完全にリサイクルすることができる」ようですね。

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これら技術については「いつ、どのモデルに」使用するのか等については言及されていませんが、これまでに開発された多くの技術のように、「知らず知らずのうちに」様々な形に導入され、クルマの性能を向上させることになりそうです。

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