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フォルクスワーゲン、AIに12億ドル投資で「全プロセスにAI導入」を宣言。10年で50億ドルのコスト削減を目指し、社運をAIに賭ける

フォルクスワーゲン、AIに12億ドル投資で「全プロセスにAI導入」を宣言。10年で50億ドルのコスト削減を目指す

Image:Volkswagen

| フォルクスワーゲングループは「テクノロジーに遅れを取っている」ことでも知られていたが |

AIを駆使し、一気に挽回を図る

フォルクスワーゲン(VW)が「人工知能(AI)を全面的に活用するため、今後12億ドル(約1,800億円)を投資する」と発表。

同社はこの投資により、今後10年間で約50億ドル(約7,500億円)のコスト削減を実現することを目指しています。

AIで「自動車テック企業」へシフト

まずVWのIT担当取締役ハウケ・スターズ氏はAI導入の意義について次のようにコメント。

「AIによって、我々は“グローバル自動車テックドライバー”となる次のステージに進む」

スターズ氏は、AIを「エンジニアリングや開発スピードの向上、品質の向上、そして競争力強化の鍵」と表現。

さらに「スケーラブルかつ責任ある方法で産業的メリットをもたらす」としながらも、「我々の野心は『AIなしのプロセスは存在しない』ことだ」とも強調しています。

一見矛盾しているように聞こえる「責任ある活用」と「全プロセスAI化」ではあるものの、これはAIが今後の自動車産業において不可欠な存在であることを示している一例なのかもしれません。

ID. CROSS Concept

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すでに1,200以上のAIアプリを導入済み

フォルクスワーゲンはすでに1,200以上のAIアプリケーションを稼働させており、数百件が実装準備段階にあるもよう。

たとえばダッソー・システムズと協力して部品テストやシミュレーションを仮想空間で実施しており、これにより試作車の製造を減らして開発期間を現在より約1年短縮し、36か月以内での新型車開発を目指しているのだそう。

また、生産現場においてもAIを導入し、複雑な工程の最適化やCO2排出削減に役立てる方針についても触れています。

カリアッド問題はAIで解決できるのか?

VWはこれまでソフトウェア子会社「Cariad(カリアッド)」に関する不具合で多くの問題を抱えており、車両制御ソフトの開発遅れによる ID. ゴルフの発売延期(1年以上)、T-Sport SUVの次世代送り、さらにはID.4のドアハンドル制御ソフト不具合による大規模リコール・販売停止などがその代表例。※さらには同グループのEV向けソフト開発も引き受けていたため、ポルシェ、アウディ、ベントレーのEV開発計画にも遅れが出た

Volkswagen ID.3 GTX FIRE+ICE

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こうした中で「さらに先進技術に依存する」という方針はリスクを伴いますが、VWはAIによって問題解決を加速させる意欲を示しているわけですね。

他社との連携、そして規制面での動き

VWはすでにBMW、メルセデス・ベンツ、BASF、SAP、ZFなどと共同でオープンプラットフォームを構築しており、同社によれば「これを今後の産業協業のモデルケースにする」。

さらにEUにおいては「AIフレンドリーな規制」の推進も計画され、大学や研究機関の技術を市場へ迅速に転用できるよう、政府からの支援やインセンティブを求めていると説明しています。

L1001950

まとめ

フォルクスワーゲンの「AI全面導入」戦略は、コスト削減だけでなく、開発スピードや品質改善、さらには環境対応の加速を目的としたもの。

一方で、既存のソフトウェア問題を抱える中、AI投資がリスクを克服する鍵となるのか、それとも新たな課題を生むのか注目が集まります。

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参照:Volkswagen

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