| 買う側としてはそんなにモデルチェンジされるとちょっとツラい |
フェラーリが今後、モデルサイクルを短くする、という報道。
これまでのフェラーリのモデルサイクルと言うと「おおよそ5年」、そして2つの続いたモデルで同じプラットフォームを使い続けることが多く、ひとつのプラットフォームを「ひと世代」だと考えると、「ひと世代はほぼ10年」というのが通例であったわけですね。
たとえばフェラーリ360は1999年から2005年、その改良版とも言えるF430は2004年から2009年まで販売され、この世代は「10年」。
そしてその後継である458イタリアは2009-2015年まで販売され、改良版の488は2015-2019年であり、やはり「10年」というタームで”フルモデルチェンジ”を行うということがわかります。
F8トリブートの存在がフェラーリの変化を物語る
そして現在の最新V8ミドシップモデルである「F8トリブート」ですが、これはおそらく2年くらいの短命なモデルに終わるとも言われており、ここに例外が登場することに。
ただ、F8トリブートは488の改良版とも言えるモデルで、その後に登場するであろう「V8ミドシップフェラーリ」の後継モデルが登場するまでの過渡期的モデルといわれ、その生い立ちが特殊なのもまた事実(過渡期といえども、ハイブリッドではない、最後の純粋なガソリンエンジン搭載モデルなので価値は高い)。
なお、SF90ストラダーレはV8エンジン搭載ではあるものの、そのパフォーマンス、価格からして「V8ミドシップフェラーリシリーズ」の後継とは考えられず、よってV8ミドシップフェラーリシリーズはまた別のモデルが登場する可能性が大きそう(もしかするとV6+ハイブリッドかも)。
つまりここへ来てフェラーリのモデルサイクルが非常に短くなる可能性が出てきているわけですが、興味深いことにフェラーリ中東のCEOがこの傾向を肯定する発言を下記の通り行っています。
「我々は競争相手を好ましく思う。なぜなら競争はいつも健全だからだ。それは誰にとっても良いことだ。我々は常にライバルの動向をチェックしているが、それが直接の”モデルサイクルの短縮”の理由ではない。我々はモデルラインアップを拡大しており、これまでに展開してこなかったところにまで手を広げている。そして我々は、そこにチャンスがあれば積極的に掴みに行く。それが我々が以前に公開した2022年までの戦略の骨子だが、我々はこれによってより多くの人々を惹きつけ、より多くの新しい顧客をブランドへ呼び込む。これがその背景にある全てだ」
フェラーリはマクラーレンを強く意識
ここでフェラーリの言う「競争相手」とはおそらくマクラーレン。
マクラーレンはモデルチェンジ、ニューモデル投入のスピードが速く、たとえばまずMP4-12Cを発売して1年ちょっと経ったところで650Sにスイッチ。
そしてその3年後には後継モデルの720Sへとモデルチェンジしています。
マクラーレンはこういった戦略にてモデルラインアップを拡大し、同時に販売台数を拡大していますが、これによって驚くべき成長を記録し、2011年に量産車ビジネスを開始したばかりなのに、あっという間にランボルギーニに迫り、フェラーリの「半分」の規模にまで成長しています。※下は2018年、各ブランドの世界販売台数
フェラーリ 9,251台 マクラーレン 4,806台(+10%) ランボルギーニ 5,750台(+10%) |
なお、マクラーレンは2016年に中期計画(トラック22)を掲げ、さらに2017年に「2022年には年間生産5,000台に届く」と発言していますが、2022年どころか2019年に5,000台を達成するのは間違いなく、フェラーリが脅威と感じるのもムリはないのかも。
車種、台数の増加で市場の反応はどう変わる?
フェラーリ、マクラーレンとも「レース」をそのルーツとする会社ですが、それだけに「アップデート」の重要性を理解しており、フェラーリもマクラーレンの動きを参考に戦略を修正するということになるのかもしれず、そうなると気になるのは市場や消費者の変化。
マクラーレンのようにモデルチェンジのタイミングを早め、かつニューモデルをバンバン入れてゆけば、当然ながら「売れないモデル」「中古市場での不人気モデル」が登場する可能性も。
そうなると中古市場にて「安い」フェラーリが出てくることになり、それはもちろんブランドイメージに大きく影響することも考えられます。
そして消費者が「買うタイミング」を読めなくなることも考えられ、というのも現在だと「フェラーリはニューモデルが出て5年で(フェイスリフトもしくはフルモデルチェンジにて)新型に切り替わり、かつ注文してから納車までは2年」という認識にて自分で(注文する)タイミングを調整していたわけですが、これが今後は「読めなくなる」ということも予想され、ちょっとした混乱が生じるのかもしれません(ニューモデル発表と同時に注文したのに、納車される頃にはすでに旧モデルになっていた、など)。
フェラーリは競争を歓迎
なお、競争については大歓迎のスタンスを貫いているのもフェラーリならではで、アストンマーティンがフェラーリから重要人物を引き抜き、ミドシップスーパースポーツに参入するということについても余裕の発言を行っていますね。