| 紆余曲折あったが、フォードはフェラーリを買収しなくてよかった |
11月5日よりSEMA(アメリカで開催されるチューニングパーツのフェア)が開催され、それに向けて各チューナーやパーツメーカーが続々と作品を発表。
今回公開されたのはフォード・マスタングGTですが、特徴としては1966年のデイトナ24時間レースを走ったフォードGT40のカラーリングをボディ表面に再現したこと。
ちなみに車両をデザインしたのはレンダリングアーティストのKhyzyl Saleem氏で、同氏は様々な「もしも系」レンダリングを作成することで知られます。
これまでは、こういったデジタルアーティストと「リアルの」チューナーとの接点はほとんどなく、しかし現実世界のチューニングも「よりビジュアル志向」へと移行するに当たり、こういったアーティストの作品を現実に、という動きがいくつか出てきているようですね。
このマスタングを企画したのは現役NASCARドライバー
なお、このマスタングGTを製作したのはNASCARドライバー、ライアン・ブレイニー選手、そしてカメラマンのラリー・チェン氏。
外観上だと、グラフィックのほかローダウンサスペンション、20インチサイズのポディウム・スーパーツーリングホイール装着が目につく変更点(いくつかの画像では、ホイールにエアロカバーが装着されている)。
なお、さすがにNASCARドライバーが手掛けるだけあってパフォーマンスの向上が図られており、5リッターV8にはRoush製のスーパーチャージャーをドッキング。
これによって出力は460馬力から一気に700馬力にまで向上していますが、これにはマグナフロー製のキャタバックシステムも貢献しているようですね。
さらにブレーキにはウィルウッド製が選ばれていて、これらのカスタムを実際に行ったのはフォードのスペシャリスト、ギャルピン・オートだと紹介されています。
今回画像は公開されていないものの、このマスタングGTのインテリアも「レーシングテーマ」に沿っており、NRG製バケットシート、ナスカースタイルのステアリングホイール、6点式ハーネスなど様々な装備がおごられるようですね。
フォードもまさか「GT40」がここまでの資産になるとは思わなかっただろう
そして、こちらがそのベースとなった「1966年のデイトナ24時間レースで勝利を記録したフォードGT40」。
「フォードGT40そのままのカラーリング」ではなく大きくアレンジを加えているところが「ナイス」ですね。
なお、フォードGT40は「打倒フェラーリ」のためだけに作られたクルマ。
当時フォードは(自動車の量産を世界に先駆けて行っただけに)「量産車メーカー」のイメージが強く、しかしフォードはこのブランドイメージを変化させたく、それにはモータースポーツにて勝利する以外はないと考え、フェラーリの買収を計画したことも。
そしてその買収話は好調に進むものの、契約を交わす土壇場でエンツォ・フェラーリがこの買収を撤回し、これに怒ったのがフォード。
「どれだけのコストを払ってでも、フェラーリをル・マンで打ち負かせるクルマを作れ」ということで開発されたのがフォードGT40で、実際にル・マンでフェラーリを倒すことに成功しています(このあたりは映画「フォードvsフェラーリ」の予告編のほうがわかりやすい)。
そしてこのフォードGT40は、現代に至るまで、そして未来永劫「フォード最大の資産」であるのは間違いないと考えていますが、その意味でも当時「ブランド価値を高めるにはモータースポーツで勝つしか無い」と考えたフォードには先見の明があり、かつ正しかったのだということになりますね。