
| フェラーリが「F80“誕生の軌跡”」を公開する初の試みを同社は異物感にて開催 |
ここまで詳細に「開発過程」を紹介する例は”極めて稀”
さて、現在モデナのエンツォ・フェラーリ博物館では「スーパーカー展」が開催され、ここでは(288)GTO、F40、F50、エンツォフェラーリ、ラフェラーリに加え、フェラーリの最新限定スーパーカー「F80」が展示の主役を担っています。
そしてこの展示が特別なのは、完成車をただ飾るのではなく、F80が完成するまでの“開発段階”そのものを段階的に公開している点。
博物館はこれを「展示の中の展示(rolling exhibition)」と呼び、一般的には“極秘”とされる開発工程を公開する、まさに前代未聞の取り組みです。
-
-
フェラーリが「エンツォ・フェラーリ博物館」にて”スーパーカー”の展示を開始。ちなみにフェラーリが自社の製品でスーパーカーと呼ぶのは6台のみ
Image:Ferrari | フェラーリにとってのスーパーカーは「(288)GTO」「F40」「F50」「エンツォフェラーリ」「ラフェラーリ」「F80」のみである | これらに加え、派生したレーシン ...
続きを見る
F80が「F80になる」まで──4つの開発段階を実車で追体験
フェラーリによれば、市販車に至るまでのプロトタイプは「4段階」。
これらの段階を経て「市販モデル」が誕生するということになりますが、ここでそれぞれを見てみましょう。
① デモカー(Demo Vehicle)
最初の段階は“デモ車”と呼ばれるカット&スティッチの車両。見た目は洗練されていないものの、新しいコンポーネントやレイアウト、技術革新を実証するための試験車として重要な役割を果たします。
② ムレット / ミューレット(Muletto)
外観は既存モデル、あるいはそれに近いのように見えるものの、その内部には新型パワートレイン(V型エンジンや新開発トランスミッション)が仕込まれており、主にエンジン・ギアボックス周辺の試験が行われます。
③ ムロティーポ / ミューロティーポ(Mulotipo)
ボディ形状も新設計となるこの段階では、足回り・冷却・電装・騒音振動などが総合的に検証され、外装にはカモフラージュを施し、スパイショット対策も万全。マラネロ周辺の公道テストで目撃されるのはこの仕様というわけですね。
博物館の展示担当者によると以下の通り。
訪問者の多くは、展示されたムロティーポが「視覚的トリック」でデザインを隠していることに驚きます。
-
-
フェラーリ本社付近を走る296スペチアーレ「プロトタイプ」が目撃される。そのほかSF90XX系の生産が本格化したと見え複数の個体が走行中【動画】
| フェラーリ296スペチアーレは2026年第1四半期より生産開始とアナウンスされている | ここ最近のフェラーリは「新型車ラッシュ」が一段落 さて、スーパーカーストーカーを自称するユーチューバー、V ...
続きを見る
④ プロトティーポ(Prototipo)
いよいよ市販モデルの形が見えてくるステージで、ボディパネルやライト、インテリアも実際の製品版に近い状態となり、各システムが一体として問題なく機能するかを確認する“完成直前”の仕様です。
フェラーリの“秘密の記録”が未来の遺産となる
これらすべてのプロトタイプは、それぞれが唯一無二の存在であり、F80の開発史を物語る「未来のアーカイブ」とも言える存在。
今回フェラーリ博物館にてなされている展示では、完全なF80最終型が一般公開され、開発ストーリーのフィナーレを迎えるそうですが、「Becoming(誕生)」が「F80そのもの」へと昇華する瞬間が視覚的にわかるように配置がなされているといい、「知られざる開発の裏側」を見ることができるもよう。
なお、こういったプロトタイプについてはフェラーリの「スペシャルセールス」チームを通じ、ごく一部の限られた顧客のみに販売されるということも公表されています。
-
-
フェラーリが「デイトナSP3」の開発プロトタイプを販売。極秘開発車両は「登録不可」ながらも、究極のコレクターズアイテム
| フェラーリは特別販売プログラムを通じ、プロトタイプの販売を行っている | これまでにも「販売された」試作車がオークションに登場し、目をみはるような高値を記録 フェラーリは特別な顧客向けに極めて希少 ...
続きを見る
まとめ:F80は“クルマ以上”の存在に
F80は、フェラーリが限定生産する「Limited Series」に属し、ブランドの動的表現の頂点に位置づけられるモデル。
ハイブリッド技術・空力・軽量構造のすべてが最新世代であり、ラ・フェラーリ以来の“未来のフェラーリ像”を体現するスーパーカーでもあり(過去ではなく未来を示していることがもっとも重要である)、フェラーリの歴史の一部とも言える「クルマ以上の存在」です。
-
-
フェラーリが288GTO、F40、F50、エンツォフェラーリ、ラフェラーリ、F80「ビッグシックス」の初期デザインスケッチを公開。市販車ではどう変わったのか
| フェラーリのスーパーカーは文字通り「伝統と革新」の象徴であり、その時代においての「フェラーリ」を体現している | そしてフェラーリのスペシャルモデルは「全て並べてみて」はじめてその考え方を理解でき ...
続きを見る
なお、フェラーリがここまで仔細にわたり開発プロセスを開示するのは極めて異例だといい、開発の各フェーズを「実車」で確認できる展示は世界でも例がなく、マニアにとっては一生に一度の体験となりそうですね。
そして現在もF80の開発が続けられており、完成したF80が登場するその日まで「Becoming F80展」は進化を続けるとされ、フェラーリというブランドの“現在”と“未来”が交差する、まさに聖地モデナならではの演出と言えるコンテンツなのかもしれません。
合わせて読みたい、フェラーリ関連投稿
-
-
【レビュー解禁】メディアによるフェラーリF80試乗レポート続々。「もっとも完成された」次世代ハイパーカーの真髄とは?【動画】
| フェラーリが「スペシャルモデル」の試乗イベントを行うことは稀である | クリス・ハリスはマクラーレンW1をベンチマークとしているようだ さて、フェラーリがメディア向けにF80の試乗イベントを大々的 ...
続きを見る
-
-
【驚異の減速力】フェラーリF80が時速200kmからわずか98mで停止。100km/hからでもSF90ストラダーレ比で「1.5m短縮」
Image:Ferrari | 約1,200馬力のハイブリッドスーパーカーに搭載された“止まる力” | このブレーキ性能は、F1マシンのようなサーキット由来のテクノロジーによって実現される フェラーリ ...
続きを見る
-
-
フェラーリF80は288GTO、F40、F50、エンツォフェラーリ、ラフェラーリと並び「ビッグシックス」として認知されるのか?そもそもフェラーリの”スペチアーレ”の意義とは
Image:Ferrari | フェラーリの「スペチアーレ」とはその時代のフェラーリを視覚的・構造的にあらわすものでなくてはならず、懐古的モデルであるべきではない | そして歴代「スペチアーレ」を並べ ...
続きを見る
参照」Ferrari