| まだまだガソリン車を取り巻く事情は二転三転する可能性がある |
そして「販売禁止除外」の要件もまだまだ変わりそう
さて、少し前にEUが行った衝撃的な方向転換が「2035年以降であっても、一定の条件を満たしていれば内燃機関搭載車を販売できる」というもの。
これはその前に「2035年以降は、内燃機関搭載車の販売を”一切”禁止する」としていた法案を、ドイツ等の反対によって禁止措置を一部緩和したということになりますが、この「一定の条件」とは現在のところ合成燃料(Eフューエル)の使用を指しています。※いくつかEUに追随して2035年以降の内燃機関車販売を禁止した国や地域があるが、これらもEU同様に翻意するものと思われる
この合成燃料(代替燃料)は水素ベースの化合物であり、生産段階においてCO2を吸収するという手法を取り入れることで「燃焼にて排出するCO2をプラスマイナスゼロにする」という考え方を持っており、現在いくつかの自動車メーカーが中心となってこの開発と製造を進めています(オイル会社はこれに注力していないようだが、おそらくはこれが一般化することはないと踏んでいるためだと思われる)。
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フェラーリは2035年以降もガソリンエンジンを製造し続ける
そこで今回フェラーリCEO、ベネデット・ビーニャ氏がファイナンシャル・タイムズ・フューチャー・オブ・ザ・カー・カンファレンスにて語ったのが「合成燃料がフェラーリにとっての新しい可能性を切り開く」という見解。
同氏は「合成燃料については数週間前にも議論を行いましたが、私はこの実用化は2025年か2026年に起こると思っていました。しかしながら、現実として、私の想定の2年前にそれが目の前で起きているのです」とも(ポルシェはすでに合成燃料を生産し、それを注入したクルマを走らせ、レースをしようとしている)。
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そしてベネデット・ビーニャCEOはこの合成燃料が大きな可能性を持つと語り、「なぜなら、大気中のCO2を他のものに吸収させることで、ニュートラルな燃料でサーマル(内燃機関)車を走らせることができるからです。だから、この2つは非常に相性がよく、これは我々の戦略の強化になると考えています。そして、EUのこの承認は、我々にとって、そして世界にとって、とてもとても良いものす。これはまだ長い道のりのある技術(内燃機関)に命を与えるものであり、効率や排出ガスの面で、できることはたくさんあります」と続け、つまりはまだまだガソリンエンジンにも可能性はあり、それを追求するということを示唆しているわけですね。
もちろんガソリンエンジン、そしてV12エンジンはフェラーリのDNAのひとつでもあるため、この変化については無条件にて喜ばしいと思う限りですが、現時点では今後の戦略やエンジンの展開がどうなるのかについて言及がなされていない状態です(もともと、フェラーリはそういった部分については公に語りたがらない)。
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ただし2025年に発売するというフェラーリ初のピュアエレクトリックカーについては今後も計画通り進め、(これも計画通り)「電気自動車」「ハイブリッド」「ガソリン車」の販売を行ってゆくとのことですが、ちょっと気になるのは今後新しいエンジンを開発するかどうか。
フェラーリは現在V12、V8、V6エンジンを持っていて、V12については特許の出願内容から「新しいエンジンを開発中」ということがわかります。
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ただ、V8エンジンについては今後「V6+ハイブリッド」へと切り替わる予定だと言われていて、つまり予定を覆してV8エンジンを継続するのかどうかについては気になるところ。
しかしながらV6エンジンのメリットとして「ホイールベースを短縮できる」と言及していたことを考慮すると、フェラーリは今後新しくV8エンジンを開発することはないのかもしれず、もしくはV6なみにコンパクトなV8エンジンを開発してノンハイブリッドとして使用するという解決策もありますが、これが実現すると「V6+ハイブリッド」は存在意義を失ってしまう可能性もありそうです。
そこにはいくつかの課題も
なお、ここで注意を要するポイントがいくつかあり、まずは「2035年以降、合成燃料以外で走る内燃機関車の販売が禁止される」のは(今のところ)EUのみで、他の国や地域では販売が継続できる見込みである、ということ。※さらに正確に言うならば、EU内でも販売そのものが禁止されるのではなく、登録が禁止ということだと思われる
フェラーリはEUでの内燃機関搭載車の販売を継続するために「合成燃料でしか走ることができない内燃機関搭載車」を作る必要があり、しかし合成燃料専用車としてしまうとEU以外の地域での販売に支障が出てしまいます。
これは「合成燃料の流通網が構築されるかどうかわからない」「合成燃料の価格は”普及して安くなったとしても”リッターあたり400-500円」になると言われているからで、EU以外に住む人は、(もし内燃機関を積むフェラーリが合成燃料専用車になれば)、必要もないのに高い合成燃料を入れねばならなくなるわけですね。
よって、フェラーリは2035年以降に販売する内燃機関搭載車について、燃料種別を(エンジンではなく)燃料ラインで判別するようなシステムを導入し、仕様地によってこれを(ソフトウエアによって)切り替えることになるのかもしれません。
そしてもうひとつ考えられる課題について、こちらは上でちょっと触れた「合成燃料の価格と流通」。
合成燃料は(現段階と、少し先の未来に関する予想だと)非常に入手が難しく、かつ高価にとどまるとされるので、日常的に乗られることが多いであろう「ライフスタイル系の」フェラーリを「内燃機関のみ」とすることは難しそう。※合成燃料については、販売インフラが普及しない可能性が指摘されている
EU居住者以外であればこれまで通りガソリンを注入すればいいだけですが、EU内のオーナーは合成燃料を注入せねばならず、もし日常的に乗るならば、(フェラーリオーナーのように高額な所得があれば)合成燃料の価格は許容できたとしても、「手に入らない」という不便さを受け入れることはできないかもしれません。
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よって、フェラーリは今後「EUとそれ以外」「日常的に乗られる車種とそれ以外」という2つの軸にポートフォリオを考える必要があり、これはおそらく合成燃料の普及を見ながら検討・調整し続けねばならず、よってかなり流動的な計画となる可能性も。
そしてこういった「不確実な」要素を事業計画に盛り込むこともできず、よってフェラーリは「当面」当初の計画のまま進め、2035年まではハイブリッドを駆使しながらユーロ7に対応し、それ以降は「メインのラインアップはピュアエレクトリック、コレクター向けの車種は内燃機関(ガソリンエンジン搭載)」という二極化を促進し、状況に応じて軌道修正、ということになるのかもしれません。
ただしそれでも、2035年にはEUで「ゼロになる」と思われた(コレクター向け以外の)内燃機関搭載車が「ゼロではなくなる」ことで新しい戦略が見えてくることは間違いなく、今後のフェラーリの「修正版」事業計画が発表されるのを楽しみに待ちたいところでもありますね。
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参照:Autocar