
| そんな中、もっとも高い利益率を確保したのはフェラーリである |
自動車メーカーの販売台数は過去最多、しかし利益は大幅減少という現実
2025年上半期、自動車業界は販売台数で記録的な伸びを示しており、Motor1によると、JATOダイナミクスの(ワールドワイドでの)調査対象となった34社の総販売台数は3,760万台となって前年比3%増を記録。
トヨタ、BYD、吉利汽車(Geely)が牽引役となり、ステランティスやテスラの減少分を補う伸びを見せ、しかしその一方、売上高は1.4兆ドル(前年比2%減)へと減少し、1台あたりの平均販売価格も38,084ドルから36,074ドルへと下落しています。
中国の価格競争が「利益圧縮」の最大要因に
この平均販売価格の下落には、中国市場での激しい価格競争が大きく影響しているといい、BYDとGeelyは販売台数をそれぞれ33%、47%と大きく伸ばしまたものの、BYDの売上高は14%増にとどまり、Geelyでは横ばい。
販売台数が増えたにもかかわらず売上高がそれほど増えていないということは「1台あたりの販売単価が減り、それに伴い1台あたりの利益も減っている」ということを示しています(ボリュームを増やしても収益が伴わない構図が浮き彫りとなっている)。※BYDは2025年上半期、世界第6位の自動車メーカー(販売台数ベース)にランクインしており、BYDが業界に与える影響は小さくない
営業利益は23%減、純利益は69%の大幅下落
最も深刻なのは「利益」の落ち込みで、これにより業界全体の平均純利益率は6.1% → 2.0%へと急落し、この背景には様々な要因が複合的に影響しているものと予想されます。。
【状況】
- 営業利益(売上総利益-販売・管理費)は1,222億ドル(前年比23%減)
- 純利益は266億ドル(前年比69%減)まで急落
【考えられる要因】
- 中国市場での継続的な値下げ競争
- 世界的な需要の鈍化
- 欧州市場でのコスト上昇
- 米国トランプ政権による関税政策の不透明さ
- 物流や貿易の混乱
売上・利益ともに苦戦する中、健闘するブランドも
全体が苦戦する中、純利益が増加したのはわずか3社のみ、中でもフェラーリは純利益率23.4%と圧倒的な収益性を維持。
1台あたりの純利益も138,764ドルと群を抜いていますが、驚くべきは「フェラーリは販売台数を増やしていない」ということで、これはつまり他の多くとは逆に「フェラーリは1台あたりの利益額と利益率を増加させた」ということになりますね。
- スズキ:+9%
- フェラーリ:+9%
- BYD:+2%
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フェラーリ「私たちは会社を成長させたいと思っていますが、それは販売台数を増やすという意味ではありません」。あくまでもフェラーリは1台あたりの利益向上を目指している
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【2025年上半期】純利益率トップ5
こちらはそれぞれのブランドの「利益率」。
こうやって見るとフェラーリが圧倒的ということがわかりますが、意外やヒョンデも検討しています。
メーカー | 純利益率 |
---|---|
フェラーリ | 23.4% |
スズキ | 9.1% |
起亜(Kia) | 8.1% |
現代(Hyundai) | 7.2% |
長城汽車(GWM) | 6.9% |
【1台あたりの純利益トップ5】
そして1台あたりの純利益はフェラーリがやはり圧倒的で、フェラーリは1台を売るごとに「2000万円も儲かる」ということがわかりますね(ジャガー・ランドローバーにつき、”販売価格帯に比して”1台あたりの利益が大きいのもちょっと意外)。
メーカー | 1台あたり純利益 |
---|---|
フェラーリ | $138,764 |
ジャガー・ランドローバー | $6,022 |
ポルシェ | $5,762 |
メルセデス・ベンツ・グループ | $2,933 |
BMWグループ | $2,384 |
※業界全体平均:$706
業界の未来は「政策次第」、不透明感は依然として強い
この状況を見ても分かる通り、自動車業界の先行きは依然としてはっきりせず、これらの不透明な問題が解決しない限り業界全体の利益回復は難しいこと、そして中国の自動車メーカーの及ぼす影響が無視できないということがわかります。
- 欧州では環境規制の柔軟化が進まない
- 米国では貿易政策が不透明なまま
- 中国では価格競争が激化
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参照:Motor1