| 実際には改良を望んでいるが、現実が許さないだろう |
さて、ベストカーによると、R35 GT-Rが2022年に「ビッグマイナーチェンジ」を受け、ハイブリッドモデルに生まれ変わる、とのこと。
記事の内容では「現行GT-Rに搭載される3.8リッターV6ツインターボを48Vマイルドハイブリッド化させる」というもので、スターター兼オルタネーターとして機能するモーター(27PS)をエンジンに直結し、燃費そしてパワーを向上させる、と述べています。
しかし2024年には販売終了とも
この方式はいわゆる「ISG」で、メルセデス・ベンツが比較的得意とするシステム。
ISGとはンテグレーテッド・スターター・ジェネレーターの略で、もともと自動車に必要なスターター用モーターを、「(スターター機能を持たせたままで)エンジンのアシスト」ができるものへと置き換えるというイメージで、そのために増加するパーツが少なく、大きく車両の設計を変更しなくてもいいというメリットがあります。
さらに、このモーターは(通常)「モーターのみでの走行」を考慮していない小型のもので、そのためバッテリーについても必要最小限程度に収まり、ハイブリッドシステムそのものが小型軽量かつ安価に収まります。
ちなみにメルセデス・ベンツが採用するISGは三菱電機製だと言われるので、日産は(傘下にある)三菱自動車経由にてこれを調達するのかもしれません。
なお、ベストカーでは、パワートレーンの改良に加えて外観も「フルモデルチェンジ並みに」変更されるとも報道しており、この新型GT-Rについては2022年に発売され、2024年には販売が終了になる、とも。
日産がGT-Rにビッグマイナーチェンジを施すとは考えにくい
ただ、ぼくとしては「たった2年しか販売しないクルマに、専用設計を持つハイブリッドシステムを与え、専用の外装を与えることは難しいだろう」と予測。
日産R35 GT-Rは(2017年の時点ですが)年間販売台数800台を計画しているといい、しかしここ数年、この数値をクリアしていないものと思われます。
メインとなる北米では(2019年に)わずか331台しか売れておらず、となると全世界でも「500台売れているかどうか」のレベルなんじゃないかと考えて良さそう。
現在の販売規模では「GT-Rにお金をかけない」のが得策
つまりは「2年で1000台くらいしか売れず、(もっと環境的に良かった)2017年と同じ年間800台だとしても2年で1600台しか売れない」クルマに大金をつぎ込む余裕は日産にはないというのがぼくの言いたいところ。
マイルドハイブリッド化するにしても、当然ながら相当なテストが必要で、実際に生産するには様々な金型を製作し、工場の生産ラインを変更する必要も。
ボディについても同じく、研究開発費用の用意、プレス機含む工作機械の変更、さらにラインの調整を行わなくてはならなくなり、当然ながら発売にあたってはウエブサイトの変更やカタログ作成、プロモーションも行わねばなりません。
そこには当然「何億」というお金が必要で、その億単位のお金を「1000台から1600台しか売れないクルマ」に突っ込むのはビジネス的にありえないと考えています。
仮にGT-Rを、「2000万円くらいで」販売できればまた話は違ってくるのですが、実際にはそうもゆかず、確実に赤字となるGT-Rのビッグマイナーチェンジを取締役会や株主は許さないだろうということですね。
たしかにGT-Rは日産の「顔」だが
なお、GT-Rが(ある方面において)日産のブランドイメージを牽引していることは間違いなく、しかし「ハイブリッド化して30馬力くらいパワーアップした」GT-Rに魅力を感じるかどうかというと、これはちょっとクエスチョン。
2007年のデビュー当時こそ「物理の法則を覆す」レベルで強みを見せたものの、現代では時代遅れの感が拭えず、それがもちろん現在の販売台数の少なさにつながっていると考えています。
そして、販売台数を盛り返す手段としては「マイルドハイブリッド」はあまりに弱く、そして外観の変更についてもそれをカバーできるとは思えないため、一番の得策は「何もせず、販売終了に向けてカウントダウンを粛々と進める」ことなのかもしれません(ビッグマイナーチェンジにかかるコストの1/10でもプロモーションに投じたほうがよさそうだ)。
仮に次期GT-R(R36)の登場がすぐ先に控えており、その新型GT-Rに対しても「ビッグマイナーチェンジで用いたR35 GT-Rの技術を使用できる」のであれば、ハイブリッド化によるコスト増の免罪符となる可能性があるとは考えていますが、おそらく次期GT-Rは「そこから10年以上」生き残ることを考えなければならないはずで、よってR35とは技術的には繋がりのないクルマになるものと思われます。
そういった側面からも、最後に「時代遅れの悪あがき」をするよりは(現代では、こういった”持続可能性の低い”、サステナブルではない行為はあまり歓迎されない)、将来の資産としての価値を高めるべく「GT-Rを伝説にする」ための行動こそが今の日産に求められるんじゃないかと考えているワケですね(こちらのほうがずっとサステナブル)。
「ビッグマイナーチェンジを行ったが、売れずにそのまま消えた」というよりも、「惜しまれつつも販売終了」となったほうが人々の記憶に(いいイメージとともに)残る可能性が高く、ぼくとしてはそちらを選んでほしいところでもあります。
ちなみに「全然売れていない」スポーツカーとしてはホンダNSXが存在しますが、こちらについて、ホンダはおそらく「テコ入れしても無駄」と判断したのか、最小限の手間のみをかけて存続させており、これはビジネス的側面からは「賢明な判断」と捉えることができるのかもしれません。※こちらについても「タイプR」待望論があるが、今回のGT-Rと同じ理由にて、「絶対無理」と考えている
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ただ、ぼくとしては「GT-RのビッグマイナーチェンジもホンダNSX Type Rも大歓迎だが、現実を見ると、会社として実行できないだろうな」と考えているだけで、GT-Rのビッグマイナーチェンジを望んでいないわけではなく、むしろコスト度外視で「とんでもないパフォーマンスを持つ」クルマへと進化させてほしい、とも願っています。
日産にはフェアレディZがある
そしてもうひとつ考えねばならないのが「フェアレディZ」の存在。
こちらも日産を代表するスポーツカーですが、GT-Rの代わりに日産のブランドイメージを向上させてくれる可能性が大。
よって日産としては無理にGT-Rをリブートする必要もないだろうと考えていますが、新型フェアレディZについては、様々なメディアが報じるところでは「現行フェアレディZのアップデート版」にとどまるようで、むしろこちらこそが現行フェアレディZの「ビッグマイナーチェンジ版」なのかもしれません。
そう考える理由としては、「フェアレディZプロトの裏側を覗き込んで、”現行Zと同じ”と報じたメディアの動画が消されたり(もちろんプロトと製品版とでは違うのだと思われるが)、パーキングブレーキが電動ではなく手動であったり」というところ。
こういった部分は、フルモデルチェンジと称するフェアレディZに対してであっても「そこまでコストを渋った日産が、より販売規模が小さく、利益も小さい」GT-Rに大金を投じるはずはないだろうと思わせるところです。
R35 GT-Rにはファイナルモデルも登場するらしい
そしてベストカーではGT-Rについてもうひとつ、ビッグマイナーチェンジの前に「4000万円級の、限定20台程度となるファイナルエディションが登場する」とも。
こちらのエンジンはGT3参戦用車両のものをロードカーに転用するとされ、出力は720馬力を発生すると報じています。
この販売価格であれば、まだ「赤字を出さずに」実現できる可能性が高そうではありますが、「売り切っても8億」にしかならないビジネスに日産幹部が魅力を感じるかどうかはわかりません(以前の日産であれば、このプロジェクトを即座に却下し、その8億をインセンティブや値引きの原資に回し、ノートなど量販車のフリート販売を加速させていたところだが)。
ただ、鳴り物入りでデビューしたGT-R 50 by Italdesignについてもまだ完売していないようなので、この状況でさらに「高額限定車」を発売する可能性は低く、実現するとすれば、日産本体が「別会社」にGT-Rを20台販売し、別会社の費用と手間にて改装を行って販売するという手法を採用することになりそうです。
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参照: Best Car