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BYDの中国工場にて大規模ストライキ発生。「週休2日、残業なし」としたBYDの新方針に従業員が反発、「もっと働かせろ」

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BYD

| 今回の労働時間短縮については「さすがのBYDにも販売不振の影響が出てきたのでは」という意見も見られる |

BYDはこの変更、そしてストライキに対する見解を表明していない

さて、現在破竹の勢いにて成長を続けるBYDですが、中国江蘇省無錫にあるBYDの自社工場にて大規模ストライキが発生したとの報道。

これによると工場敷地内に大勢の従業員が集まり、中には警察が敷いたブルーシートで覆われて地面に横たわっている従業員もいる様子が映ってる、とされています(つまり暴動に近い状況だったのかもしれない)。

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いったいなぜBYDの工場でストライキが発生?

そこでこのストライキの原因についてですが、従業員の不満の主な理由は、4交代制と週5日8時間勤務の導入だったといい、つまり「週休2日、残業なし」となったことに腹を立てたというわけですね。

残業の撤廃に抗議するというのは国際的に見れば驚くべきことで、世界の他の国々の労働者が労働時間の削減を求める中、中国の労働者は労働時間の増加を要求しており、ここには中国ならではの理由が存在します。

簡単に言えば、その理由としては「上昇する物価高に賃金が追いつかず、残業してでも収入を増やさないと食ってゆけないから」。

一般に工場の賃金は政府の定める最低賃金よりわずかに高く設定されていますが、中国の労働法だと、雇用主は時間外労働に対し通常賃金の1.5倍、週末時間外労働には2倍の賃金を支払うことが義務付けられています。

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よって労働者からすれば「残業すれば、同じ労働時間でも高い賃金を得られる」こととなり、しかし経営者からすると「残業させると、同じ時間でもより多くの賃金を支払わねばならない」。

よって工場としては「残業なし」で済むよう、しかし1日24時間工場を稼働させることができるように4交代制を取り入れ、これによって従業員は労働時間(と賃金)が減ってしまうために抗議を行っている、というのが今回の流れです。

実際のところ、無錫にあるBYD工場の過去2カ月間の求人情報では、基本賃金が月あたり2,490元(53,829円)で、これは江蘇省の最低賃金と同一です。

しかしながら、現地で生活してゆくには月収5,000~6,500元(108,000円~140,000円)が必要だとされ、この賃金を得るには安定した残業時間が必須となるわけですが(この収入に達するには1日10~13時間くらいの労働を行わねばならないという計算)、今回のBYDの決定では労働時間の上限が設けられ、これによって収入にも「上限」が発生したということを意味します。

BYDはなぜこの方針を導入したのか

このBYDの無錫工場はかつてアメリカ企業ジョンソンコントロールズが所有していた施設だといい、昨年BYDは成都と無錫にあるジョンソンコントロールズの工場を158億元で買収しています。

そしてその買収後、ジョンソンコントロールズとBYDの両社は共同発表を発表し、従業員の福利厚生は変更(改悪)されず、場合によってはわずかに改善されることを約束したほか、解雇された労働者には退職金が支払われることも約束したものの、BYDはこれらの約束を履行せず、これもまた従業員の不満を招いた一因だという報道も。

現在、なぜBYDが残業方針の突然の変更を行ったのかは不明のままで、しかし、残業削減は従業員に間接的に退職を強制するために多くの企業が採用する一般的な戦略でもあり、つまり今回、給与の上限を設けたことで「これで不足があればどうぞやめてください」という意思表示を行ったとも受け取ることが可能です。

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参考までに、多くの国において、企業側が人員削減(解雇)を行うと、それは「企業側の自由」ということで退職金や補償金等を支払うことが法的に義務付けられていて、しかし従業員からの申し出であれば「従業員の判断」となり、様々な費用の支払い義務が免除されることに。

よって一部の投資家は、今回のBYDの方針変更につき、「製品の需要低迷に対応した人員削減の可能性を反映しているのではないか」と受け取っているという報道も散見でき、これを裏付けするかのように李汽車による従業員解雇の報道もなされています。

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