
| ジーリー ギャラクシー V900:42人のダンサーを収容した驚異の広さ。中国発ハイエンドミニバンの実力 |
その広さの秘密と「高級中国車」の新定義とは
さて、ここ最近話題になっているのが中国の自動車メーカによる記録更新。
BYDによる「最高速」、GACによる「最速ドリフト」、そのほか先日はチェリーによる「記録挑戦への失敗」が注目を集めたばかりです。
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そして今回吉利汽車(ジーリー)が達成したのが「いったいミニバンに何人乗れるのか」という記録であり、新型高級ミニバン「ギャラクシー V900」のキャビンになんと42人の女性ダンサーを収容することに成功してギネス世界記録を樹立することに。
ここでは、この「ありえない」PRの裏にある、中国ハイエンドミニバン市場の過熱ぶり、V900の真の実力、そして「24金のエンブレム」が意味するものに迫ります。
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ギャラクシーV900の衝撃を3点で理解
- 常識外れの広さ:42人の女性ダンサーが搭乗し、ギネス世界記録を樹立。そのキャビンスペースは計測以上に「体感」で訴求
- 高級感への挑戦:フロントとリアのエンブレムに24金(24カラットゴールド) を採用。中国市場における「豪華」の定義を押し上げる
- 電動化の選択肢:ライバルが純粋EV路線を走る中、レンジエクステンダー(発電機付きEV) を選択。実用性を優先した現実解
42人搭乗の裏側にある、中国市場の熾烈な「ハイエンドミニバン戦争」
「体感広さ」をアピールする型破りなPR
ジーリーのこのPRは、単に数値上の広さ(全長5.36m、ホイールベース3.2m)を伝えるだけでなく、「とにかく広い」という感覚を、強烈なビジュアルイメージとして世界に焼き付けることを目的としており、この「V900 = 圧倒的広さ」の図式は、理想(ライバル:理想汽車「MEGA」)のような未来派EVミニバンが注目を集める市場において実用的で無駄のない空間設計という明確な差別化ポイントを打ち出す絶妙な一手です。
そしてジーリーがこういったプロモーション手法を採用した背景には「現在の中国での自動車市場の厳しい競争」があるものと思われ、その中で少しでも多くの注目を集めるには奇抜な手段を用いるしかないといった理由があったのだと思われます。
レンジエクステンダーという「現実的選択」
最大のライバルである理想汽車MEGAが大胆なデザインと大容量バッテリーによる長距離EVを売りにする一方、このV900は1.5Lターボエンジンを発電機とする「レンジエクステンダー」を採用しています。
これによって約200kmのEV航続に加え、ガソリン給油さえすれば航続不安ゼロという、中国国内の多様な充電環境や長距離移動を考慮した実用主義的な選択を示していますが、これは、「全てのクルマをEVに」という潮流に対する「ユーザーの実利を重んじた回答」と言えるのかもしれません。
ジーリー ギャラクシー V900 主要スペックと特徴
主要諸元と装備
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ボディサイズ | 全長5,360mm × 全幅1,998mm × 全高1,940mm |
| ホイールベース | 3,200mm(この長いホイールベースによって広い室内空間を確保) |
| 定員設定 | 6人 / 8人 構成 |
| パワートレイン | レンジエクステンダー(1.5Lターボエンジン + 電動モーター) |
| バッテリー容量 | 43.3kWh / 50kWh(2オプション) |
| EV航続距離 | 165km - 202km |
| 特徴的装備 | 24金メッキエンブレム、10.25インチデジタルメーター、15.4インチ大型タッチディスプレイ、大型冷蔵庫(コールドボックス)、フライミーサウンド・オーディオシステム |
市場での位置付け:なぜ「高級ミニバン」が中国で熱いのか?
中国では、多世代同居や(一人っ子政策の廃止による)2人目・3人目の出産を背景に、「家族全員が快適に移動できる、かつ高級感のある車」 に対する需要が急拡大中。
つまり日本で言うアルファード/ヴェルファイアのような存在ではありますが、この市場では理想汽車MEGA、BYD(ディナ)、そして今回のジーリーV900がしのぎを削っています。
このV900の強みは、その「再出発」に込められた戦略にあり、というのも元々このV900ははジーリー傘下のロンドンEVカンパニー(LEVC)として「L380」の名でイギリスで発売されていたものの販売が振るわず、中国市場向けにブランドを「ギャラクシー」に変更。
さらには価格を80,000元(約11,000ドル)も引き下げて再スタートを切ったクルマです。
つまり国際市場での経験をフィードバックし、中国市場向けに最適化した「逆輸入モデル」 という点で、純粋な国内向け開発車とは異なる奥行きを持っているわけですね。
結論:数字とゴールドの先にある、中国車の「成熟」
42人搭乗のインパクトと24金のエンブレムは確かに派手で挑発的。
しかし、その背後にあるものを冷静に見れば、上述の競争過多に加え、中国自動車産業が「性能や装備の数値競争」から、「生活者の実感に基づく価値提案」と「ブランドの品格づくり」という次の段階へ進みつつあることが感じ取れます。
V900は広さを「延べ床面積」ではなく「家族や仲間との時間をどう過ごすか」という体験で定義し、高級感を「馬力」ではなく「細部への気配りと素材感」にて表現しようとしている存在で、レンジエクステンダーというパワートレイン選択も見せかけの先進性ではなく「ユーザーの生活実態に寄り添う合理性の表れ」。
日本では、アルファードが長年にわたり築いた「高級ミニバン」の地位は盤石ですが、ジーリーV900のような中国勢の挑戦は、「高級ミニバンとは何か」という根本的な問いをグローバルな視点で投げかけていると言え、市場が飽和する中、次の勝者は最もスマートに「家族の幸せな移動」をデザインできるメーカーなのかもしれません。
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参照:Auto Media

















