
| 現在EV普及を妨げている「航続距離」「充電エクスペリエンス」を一気に解決できる可能性が高い |
この技術によってさらにBYDの勢力が拡大することになりそうだ
さて、BYDは自社でバッテリーを開発・製造している数少ない自動車メーカーのひとつですが(出自が家電メーカーなので元来バッテリー技術を保有している)、今回は最大1,000kWの充電速度に対応するという、「テスラの最新(第四世代)スーパーチャージャーの倍、さらには平均的な急速充電器の350kW」を大幅に超える充電システムを公開することに。
なお、EVの普及を妨げるのは「一回の満充電あたり航続可能距離が短い」「充電にかかる時間や設備の不足など、充電エクスペリエンスが満足できるものではない」ことが主要因として挙げられていますが、この新しい充電設備、そしてこれに対応する車両プラットフォームはこの問題を「過去のもの」としてしまう可能性があるわけですね。
その名は「スーパーEプラットフォーム」
この新しい(1,000kW充電に対応する)車台は「スーパーEプラットフォーム」と命名されており、「わずか5分で400kmを走行できる」だけの電力をチャージできるというので、BYDのガソリン車の給油と同じ感覚で充電できるようになる」という主張もあながち誇張ではないのかもしれません。
ロイターによると、新プラットフォームを採用する最初のEVは「Han Lセダン」と「Tang L SUV」になるとされ、これらのモデルの価格は37,330ドル(現在の為替レートでは約580万円)からという比較的手頃な価格設定がなされています。※しかもこれらEVのトップレンジは1,000馬力オーバーである
On September 25, BYD reached an impressive milestone at the Shenshan plant, celebrating the 9 millionth NEV rolled off the production line. The model that achieved this feat is the YANGWANG U9, a high-performance pure electric supercar.
— BYD Global (@BYDGlobal) September 25, 2024
This achievement comes just over two… pic.twitter.com/uv9bGpgOEo
ただ、EVが超高速充電に対応していたとしても、インフラがそれを支えられるかどうかは別の問題であり、そのためBYDはこれを解決すべく中国国内に1,000kWの超急速充電に対応するステーションを4,000カ所以上設置する計画も同時に発表し、発表イベントのライブ配信の中で、BYDの創業者である王伝福(Wang Chuanfu)氏は次のように述べています。
「私たちは、EVの充電時間をガソリン車の給油時間と同じレベルまで短縮するという目標を掲げてきました。そして今回、業界で初めて"メガワット(MW)"の単位で充電出力を実現しました。」
1,000kWの充電速度はEV業界にとって「大きな転換期」
上述の通り、この新プラットフォームを採用したEVはわずか5分で400kmの走行距離分を充電できるそうですが、もしこのレベルの充電速度が実現すれば、EVの充電ステーションでの滞在時間が大幅に短縮され、社会的な影響も「かなり大きい」ものとなるであろうことが予想されます。
BYD made a strong impression at AUTO 25 & Mobility 2025 in Helsinki, with the Finnish debut of the BYD ATTO 2.
— BYD Global (@BYDGlobal) March 19, 2025
Eight impressive models were featured, including the BYD SEALION 7 and the BYD SEAL U DM-i, along with dynamic test drive experiences.
Thank you to everyone who joined… pic.twitter.com/jdvRklIUD3
そしてこの技術は「EVの普及を妨げる」二大要因をクリアする可能性が高く、そして同じくEVの購入を消費者から遠ざけているであろう「価格の高さ」についてはすでに中国製EVが解決しており、ここからのEV普及が加速度的に速められてゆくのかもしれません(BYDはすでにEV市場で覇権を握っており、今後同社のEVがこの充電規格に対応するようになれば、ますますその勢力が強まるであろう)。
合わせて読みたい、BYD関連投稿
-
-
BYDとDJIが協業、33万円にて「車載ドローン発着システム」を実用化。ルーフ上に設置されたハッチから離着陸する様はまるで「SF映画」、メカ好きには刺さるかも【動画】
| 実際にどの程度役に立つかはわからないが、「とりあえず楽しい」ことは間違いない | そして中国車はやはり独自の進化を遂げている さて、BYDがDJIと提携し、世界初となる車載型ドローンステーションを ...
続きを見る
-
-
BYDが自動車保険業界に参入するも1年目は「獲得した保険料よりも3倍の保険金や経費を支払い」大赤字に。やはりEVの修理費用の割高さがネックに
| ただしBYDはEVに関するノウハウを頼りに収益を改善することができるだろう | しかしながらEVの修理にはまだまだ「課題」も残る さて、BYDが満を持して(中国にて)自動車保険業界に参入するも大赤 ...
続きを見る
-
-
ソリッドステートバッテリー(全固体電池)でも中国が独走?チェリーに続きBYDが「2027年から市販車に搭載」と発表
| ただし依然として生産コストは高く、今後しばらくは既存のバッテリー技術が主流になることについても言及 | これに対し日米欧の自動車メーカーは同時期に「試験生産」をようやく行うという段階である さて、 ...
続きを見る
参照:Jalopnik, Reuters