
Image:BYD
| BYDはその資金力にモノを言わせて「あらゆるセグメント」の制覇を目論む |
■ 中国BYDが「軽自動車」に本格参入
中国の自動車大手・BYDが、日本市場向けの初の軽自動車EV「Racco(ラッコ)」を発表。
BYDが日本の軽自動車カテゴリーに本格参入する初の試みとなりますが、かつての「スマート」を除くと日本の軽自動車試乗へと正規参入した海外の自動車メーカーは事実上存在せず、あらゆる観点から話題となっているのがこの「Racco」。
なお、BYDはそのシリーズに「テーマ」を設けており、「ドルフィン」など”海の生き物系”、本国では「唐」などの”中国王朝シリーズ”、さらには”戦艦シリーズ”といったラインアップも。
そして今回「ラッコ」というネーミングを用いたことは、このクルマが「海の生き物」シリーズに属するということになりますが、日本語を使用したことからもこのクルマが「どれだけ日本市場を重視しているか」がわかろうというものですね(BYDは基本的に、仕様地によって名称を変更しない。よって新型車にラッコという日本名を用いたことは、このクルマが日本市場専用、あるいは日本市場を最重要視したモデルということになる)。
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■ 日本の軽自動車らしいフォルムを踏襲
公開された画像によると、Raccoは短いボンネット、立ち気味のフロントウインドウ、スライドドア、垂直に近いリアエンドといった軽自動車の典型的なパッケージングを採用していることがわかります。
ヘッドライトやC字型のLEDシグネチャーなど、デザインには三菱eKスペースやダイハツ・タントの影響も見られ、BYDがそうとうに日本市場を研究して送り出したクルマであることも理解が可能。
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■ 航続距離180km、20〜40kWhバッテリーを搭載
Raccoには20kWhまたは40kWhのバッテリーパックが搭載され、最大航続距離は約180km(WLTC推定)。
また100kWの急速充電に対応し、EVとしての使い勝手にも優れ、フロア下にバッテリーを配置することで内燃機関軽自動車よりも低重心化され、走行安定性も向上していると説明されています。
■ 価格は249万円から、日産サクラやeKクロスEVが直接のライバル
販売価格は補助金適用前でおよそ249万円と予想され(まだ価格は発表されていない)、日産サクラ(約256万円〜)や三菱eKクロスEV(約271万円〜)を意識した設定となりますが、2026年夏から予約受付が開始され、その後すぐに販売がスタートするもよう。
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■ 軽市場に「外資」が本格進出する意義
軽自動車市場は長年にわたり日本メーカーが独占してきた領域でもあり、その中にBYDが本格的な電動モデルを投入することでは「日本メーカーにとっては大きな脅威」。
特にサクラ/eKクロスEVの販売が伸び悩む中、BYDが「航続距離・価格・装備」で優位に立てば、シェア変動の引き金となる可能性もあり、日本の自動車メーカーは戦々恐々といったところなのかもしれません。
ただ、一般にEVのリセールはかなり優れず、さらにBYDのクルマは全般的にリセールが低いと言われているので、冷静に判断ができる消費者ならば(中国ブランドという色メガネを抜きにしても)このラッコを購入しようという判断にはならない可能性も。※軽EVが欲しいのであれば、中古車という選択がスマートである
そして「価格」が重要視される軽自動車市場において「250万円(補助金を適用すると220万円くらい)」という金額はそれほど魅力的といえるものではなく、これはサクラ/eKクロスEVの販売が今ひとつ奮わない大きな理由であるとも考えられます。
そう考えるならば、BYDにとって「軽自動車市場への参入、さらにEV」という挑戦は茨の道であるとも考えられ、そしてBYDはすでに日本市場の難しさ、そして価格設定の重要さを理解しているはずなので(中国市場もかなり価格にシビアである)、それでもあえて挑戦するということは何らかの勝算があるのかもしれず、ここからの動きには注視を要するところでもありますね。
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【考察:BYDの「軽EV戦略」が意味するもの】
BYDの日本軽市場参入は、単なる製品投入ではなく「市場構造の挑戦」。
これまで日本では、軽規格が事実上の非関税障壁となり、海外メーカーが参入できなかったという事実がありますが、しかしBYDは、現地規格を完全に遵守しながら日本メーカーを“ホームで倒す”覚悟を見せています。
仮にこのRaccoが成功すれば、軽市場の電動化において「日中逆転」の象徴となることは間違いなく、BYDは「日本の軽規格電動市場を制した」という称号が欲しいのかもしれませんね。
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