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プレミア価格が崩壊:シャオミ製EV「転売市場」に何が起きたのか? 注文枠の転売価格が大幅に値下がりし転売ヤーの損失が拡大する

プレミア価格が崩壊:シャオミ製EV「転売市場」に何が起きたのか? 注文枠の転売価格が大幅に値下がりし転売ヤーの損失が拡大する

Image:Xiaomi

| これまでシャオミのEVは「長い納車待ち」に起因して「注文枠」の転売が盛んであったが |

投機熱の終焉:注文枠(注文権利)の価値が1万元超のプレミアムから「大幅に値下がり」へ

かつて活況を呈したXiaomi(シャオミ)の電気自動車(EV)、SU7およびYU7の「注文枠転売市場」がここ数ヶ月で劇的な変化を遂げている、との報道。

わずか数ヶ月前には、注文権利が1万元(約20万円)を超えるプレミアム価格で取引されていたものの、現在では一転して大幅なディスカウント価格で売買されているとされ、中国メディア『Lanjinger(藍鯨財経)』による市場調査によれば現在の相場は以下の通り。

  • シャオミ SU7の注文枠価格:約1,500元
  • シャオミ YU7の注文枠価格:2,000〜3,000元

転売を目論んだ転売ヤーは「事実上の損失」を被ることに

これは、初期の予約で5,000元のデポジットを支払い、これを転売しようとした先行予約者(転売ヤー)にとって約2,000~3,500元(約420米ドル)の損失を意味していて、つまり転売ヤーは「投じた資金を回収できない」ということに。※シャオミのEVはモデルによって納期が半年~1年にも達し、よって転売ヤーがあらかじめ注文を入れ、その注文枠を「納車を待てない」人へと転売している

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この急激な冷え込みは、発売初期の熱狂との明確な対比をなしており、たとえばYU7は発売からわずか3分で20万台、18時間で24万台の注文を獲得するという驚異的な記録を打ち立て、ピーク時には受注枠転売市場で(5,000元のデポジットを払った早期予約枠に対し)3,000元から最大20,000元ものプレミアムが付いていたことも報じられています。

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しかしいま現在、複数のブローカーは「2ヶ月前には1万元のプレミアムを支払う人がいたが、今や3,000元の(もともとのデポジット料金である5,000元からの)ディスカウントを提示しても買い手がつかない」という現状を報告しており、これは市場センチメントの劇的な変化にほかなりません。

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市場冷え込みの構造的要因:需給ギャップと長期納期

この転売市場の崩壊は、複数の要因が複合的に作用した結果であり、単なる熱狂の終焉以上の構造的な問題を内包しています。

1. 投機的な初期注文による「需給バランスの歪み」

初期の爆発的な注文の中には、純粋な購入意図だけでなく、短期間での転売益を目的とした投機的な注文が多く含まれていたと分析されおり、生産体制が安定し、大量の注文が市場に供給される可能性が高まるにつれ、これらの「投機筋」が保有する注文が市場に溢れ出し、転売価格が急落したということになりますが、これは「投機熱のピークアウト」と「需給バランスの急激な是正」が同時に発生した現象と言えそうです。

2. 「納期の長期化」がもたらす機会費用の増大

現在、YU7の標準モデルの現在の納期は、依然として45〜48週間という極めて長期にわたっています。

この1年近い待ち時間は、特に新エネルギー車(NEV)市場のように技術革新と競争が激しいセグメントにおいては、「機会費用(Opportunity Cost)」が非常に大きいことを意味しており、よって消費者は、納車を待っている間に競合他社からより高性能で魅力的な新モデルが登場するリスクを考慮せざるを得ないわけですが、この「長期納期リスク」が転売品に対する需要を決定的に冷やした最大の要因の一つという意見もあるもよう。

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3. 突発的な事件による市場センチメントへの影響

さらにはこの数日にわたって報道されている「成都での事故」といった突発的な事件も短期的な市場のセンチメント(消費者心理)に影響を与え、転売需要の一時的な冷え込みを加速させた要因とされていますが、こういった「一気に盛り上がって一気に盛り下がる」傾向は、中国市場の「熱しやすく冷めやすい」一面を示唆しているかのようですね。

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安定する中古車価格とブランドの確かな成長

ただ、転売市場の冷え込みとは対照的に、中古車市場は比較的安定を保っていることも報じられ、走行距離100km未満のほぼ新車状態のYU7は、依然として新車価格を約1万元(約1,400米ドル)上回る価格で取引されているといい、これは、転売市場が「注文権利」という金融的な側面が強かったのに対し、中古車市場では「実車が持つ資産価値」が評価されていることを示唆しています(となると、転売ヤーは注文枠を割り引いて販売するのではなく、いったん納車を受け、実車を転売したほうが利益が出そうだ)。

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さらにシャオミの全体的な市場パフォーマンスも依然として堅調で、9月の販売台数は41,948台に達し、新エネルギー車ブランドの中で第2位にランクイン。

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さらに同社は中国国内119都市で402店舗を展開するなど販売網の拡大を続けており、長期的な市場成長へのコミットメントは揺らいでおらず、シャオミ自体に対する人気が揺らいだわけではなく、今回報じられる現象は(上述の通り)「単に受給のバランスが改善されつつある」ことが主要因なのかもしれません。

専門的考察:テック巨人の「EV市場参入」の難しさ

シャオミの事例は、テクノロジー業界の巨人がEV市場に参入する際の「初期の熱狂」と「量産体制の壁」という二面性を浮き彫りにしています。

初期の爆発的な需要は、ブランドロイヤリティとCEO雷軍氏のカリスマ性によって生み出されましたが、自動車製造のサプライチェーンの複雑さと品質管理、そして納期の長期化という伝統的な製造業の課題が投機的な熱狂を冷ます結果となっています。

今回の転売市場の調整は、シャオミが真に持続可能な自動車メーカーとして定着するために乗り越えるべき、「初期フェーズの課題」を象徴していると言える事象なのかもしれません。

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参照:CarNewsChina

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