
Image:BYD
| BYD、3年半ぶりの減益に直面 |
世界最大級の自動車メーカー、BYDの「不健全」な構造が明らかに
中国のEVメーカー BYD(比亜迪) が、2025年第2四半期決算で3年半ぶりに減益となったとのニュース。
BYDというと「テスラを抜いた」「世界中に進出」「将来的に、世界中のクルマの一定割合がBYDになる」などの話題が絶えないほどの快進撃が話題となっていますが、今回「純利益が前年同期比29.9%減の64億元(約895億円)に落ち込んだ」と報じられ、成長を続けてきた同社にとって大きな転機を迎えていることが明らかに。
さらに注目すべきは「売上高は14%増の2009億元と伸びたにもかかわらず減益となった」という事実であり、同社の採算性の低下が浮き彫りとなっています。
加えて、第1四半期は純利益が倍増(+100.4%)していただけに、第2四半期の失速は市場関係者に強いインパクトを与えているという状況ですが、上半期全体では売上が23.3%増、純利益は13.8%増とプラスを維持していることについても触れられています(ということは、直近で急激に業績が悪化している)。
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背景:政府主導の「価格戦争抑制」
この大幅な利益の逸失につき、その理由として「値引き競争」が挙げられていますが、BYDをはじめとする中国自動車メーカーは、近年激化する 価格競争(値引き合戦) によって利益率を圧迫されてきたというのは既報の通り。
ただ、この値引き競争を仕掛けたのもまたBYDだとされており、BYDは「販売台数を稼ぐために値引きを開始し、それに対して他社がさらなる値引きで応じてきたため、泥沼的な値引き合戦となってしまったわけですね。
BYD Unveils Record-Breaking NEV Circuit Featuring the World’s Largest Indoor Sand Dune for Car Testing
— BYD (@BYDCompany) August 26, 2025
With a 29.6-meter vertical drop and a 28-degree slope, the Zhengzhou indoor sand dune has been certified by Guinness World Records as the highest and largest dune climbing… pic.twitter.com/sRztngAGzt
さらにBYDはその優越的な地位を利用してサプライヤーに対する支払いを遅らせていたといい(いわゆる下請けいじめ)、よって中国政府は2025年に入り、「過度な価格競争の停止」と「サプライヤーへの迅速な支払い」を自動車各社に求めるといった動きが報じられています。
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中国車の「値下げ競争」はまだまだ活発化?BYDがサプライヤーに対し「10%納入価格を下げるよう」要請を行い競争力の強化を図る
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これを受け、BYDも6月には主要メーカーとともに「仕入先への支払いを60日以内に行う」ことを表明していますが、この支払いタームを実行した結果、2025年6月末時点でのBYDの運転資本不足は1227億元に拡大し、3月末の958億元から悪化するなど財務健全性にも不安が広がっている、というのが現在の状況です(つまり、BYDのこれまでの好調は不健全なベースの上に成り立っていたのだとも考えられる)。
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やはり安くモノを作ろうとなるとどこかへしわ寄せがゆくのか・・・。BYDのブラジル工場にて労働者を「奴隷扱い」、しかもBYDが労働者を不正に入国させていたと報じられる
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BYDの販売台数と生産動向
なお、BYDは2025年の世界販売目標を550万台に設定していますが、1~7月の販売台数は249万台にとどまり、現時点での達成率は45%。
第3四半期以降の巻き返しが必要ですが、アナリストの多くは「通年目標の達成は悲観的」と見ているようですね。
- 野村証券の予測:2025年販売台数は500万~520万台にとどまる見通し
- 中国国内販売:7月で3か月連続の減少、前年から18%減
- 生産動向:17か月ぶりに生産が減少。設備投資計画も一部延期
Built to elevate every journey, the BYD SONG PLUS pairs an intelligent cabin with VTOL capability, letting you plug in, relax, and experience road trips in a whole new way. pic.twitter.com/lJxsjZ5dXH
— BYD (@BYDCompany) August 27, 2025
BYDの今後の展望
世界最大のEVメーカーであるBYDにとって、今回の減益は単なる一時的な調整なのか、それとも成長戦略の転換点となるのかが注目され、以下のような要素がこれらが今後の業績に大きな影響を与えることは間違いなく、「健全な経営」のもと、BYDがどのように巻き返しを図るのかに注目が集まります。※BYDは確かに世界最大のEVメーカーではあるが、利益面では薄利多売に傾いており、今後は高付加価値モデルの拡充や海外市場の伸長が課題になる
- 新興メーカー(NIO、小鵬、理想汽車)やテスラとの競争
- 海外展開(特に欧州・メキシコ市場)での成長ポテンシャル
- 政府の価格規制とサプライチェーン改善への対応
The BYD DOLPHIN MINI is built for fun, function, and freedom.
— BYD (@BYDCompany) August 16, 2025
With up to 236 miles (NEDC), parking support, and a rotating touchscreen, every drive brings more smiles per mile. pic.twitter.com/fPvvfN1rG7
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参照:Reuters