| ポルシェやスポーツカーは「乗りにくいクルマであるべき」だと誤解されている |
さて、世の中によく見られるのが「スポーツカーとは乗りにくいものだ」「乗りやすいスポーツカーはスポーツカーではない」「乗りにくいスポーツカーを技術でカバーし乗りこなしてこそ本物」という認識。
たとえばポルシェだと、「AT乗りはポルシェ乗りに入らない」とか、ポルシェをはじめて買った人が「ポルシェの乗り心地が悪い」と言ったりすると、よってたかって「ポルシェとはそういったものだ」「スポーツカーに乗り心地を求めるな」「お前にポルシェはもったいない」と言われたりする現実もあります。
こういった攻撃についてはいくつかのパターンに分類できると考えていて、主には1)自分が大好きなポルシェを汚されたような気がした、2)自分がずっとポルシェに乗っており、にわかポルシェ乗りにポルシェを語られたくない、3)自分には手が届かないクルマを手にしているのに不満を言うな、というところかもしれません。
いずれも気持ちはわかるが、誤解もあるようだ
それぞれのパターンについて、その気持ちはわかるものの、そうやって他者を攻撃するのは「あおり運転」のようなもので、ここはやはり平和的に行きたいもの。
そしてぼくがここで思うのは、そもそもポルシェは「快適なクルマを作ろうと」していルのであって、「乗りにくい車がスポーツカー」を作ろう、「快適でないのを我慢しろ」とは考えていないだろう、ということ。
これについては、実際にポルシェが対策を行った上でたびたび言及しており、たとえば911だと、997世代ではシートのベース部にサスペンションに類する機能を持たせて衝撃を吸収したり、992世代では後輪を大径化することでタイヤ内部のエア容量を拡大し、その代わりに空気圧を下げて乗り心地をマイルドにしています(初代911ターボも高級さや快適性にこだわったという)。
そして1989年にまで遡ると、初代レクサスLS(トヨタ・セルシオ)に乗ったポルシェのエンジニアがその乗り心地の良さに驚き、「これこそが我々の作りたかったクルマだ」と漏らしたとも言われていますね。
ポルシェの燃費について語ったりすると、やはり「ポルシェは燃費云々するクルマではない」「燃費を気にするなら国産車に乗ってろ」「ポルシェに乗っているのにケチくさいこと言うな」と言われる傾向があるようですが、実際にはポルシェは「燃費向上のないパワーアップはしない」というポリシーを掲げていて、かつポルシェの創業理由も「燃費を含む効率性に優れるスポーツカーが存在しなかったので、じゃあ自分で作ろうと思ったから」。
ポルシェは「オーナーに負担をかけない」クルマを目指している
そしてポルシェは「維持はもちろん、運転においてもオーナーに負担をかけない」ことを重要視していて、運転のしやすさについても配慮しています。
その際たる例がレーシングカーの「911RSR」で、このクルマは軽量性が何よりも重要視される競技用車において”エアコン”を装備しているわけですね。
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こういった例を見るに、ポルシェに「乗り心地」「快適性」「乗りやすさ」を求めるのは間違っているとは言えず、むしろそれらをポルシェに求める人を批判・排除する方が「ポルシェへの理解を誤っている」のかもしれません。
参考までに、ぼくはこれまでに様々な試乗イベントにて、本職のレーシングドライバーの方たちとの同乗走行を何度か経験していますが、中にはポルシェのレーシングカーで転戦するドライバーも。
そこで「なるほど」と思える興味深い話を聞いたので、下記に紹介したいと思います。
「普通の(レーシングドライバーではない)人は、レーシングカーは乗りにくくて当たり前、乗りにくいレーシングカーを乗りこなすのがぼくらの仕事だと思っているけど、それはちょっと違うんですよ。同じレースをするなら、ぼくらレーシングドライバーは乗り心地が良くて運転しやすいレーシングカーの方がずっといいと思ってる。そのほうが疲れないし、集中力を保てるからね。だから、本当に速く、成績を残しているクルマは、乗り心地が良く快適なことが多い。ポルシェはその際たる例で、ポルシェはドライバーのことを考え、乗りやすいクルマを作ってくれるし、毎年快適になっている。だから、ぼくたちレーシングドライバーはポルシェが大好きだし、ポルシェでレースをしたいと思うんです」
スポーツカーメーカーは意外や「快適なクルマ」を作りたがっている
なお、フェルッチョ・ランボルギーニがスーパーカーメーカーを作ろうと思ったのも(諸説ある)、「(フェラーリの乗り心地が悪く信頼性が低いので)フェラーリよりも快適で実用的なスポーツカーを作りたかったから」。
そして当のフェラーリも快適性を重要視しており、ローマにおいては「高級サルーンと張り合う」ことを主張していますね。
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