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これは車じゃない。戦闘機だ。アルファロメオ4Cに試乗する

2016/12/22

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いまどきパワステレスで重ステ、というとんでもない仕様のアルファロメオ4C(Alfa Romeo 4C)に試乗。
(いい意味で)走ること以外は何も考えていない車で、今まで試乗した車の中ではブッチギリの衝撃でした。
明らかにフェラーリ458スペチアーレを超えるハンドリングを持っており(主観)、ぼくの中では生涯のベスト・オブ・ハンドリングマシン首位。

【スペック】
ベース車の価格で783万円とカーボン(CFRP)モノコックを使用する車としては激安。
カーボンモノコック採用の車としてはBMW i3を除くと最安、しかもスポーツカーとしては確実に世界最安の価格と思われます。
長さ3990、幅1870、高さ1185ミリ。

おそらく現在もっとも(上から見たときに)正方形に近い車で、かつフェラーリ458よりも低く、マクラーレン650Sよりも低い全高を持つ、異様なシルエットの車です。
エンジン出力は240馬力と平凡ですが、車重が1100kgと軽量であり、この軽さが最大の武器でもあります。
この価格でこの仕様の車が購入できるのは驚きですね。
なお、試乗車にはオプションの18-19インチホイールが装着されています。

ブレーキはブレンボ製の4ポッドが入りますが、ローターは以外と小さめ。
車重を考えるとこのサイズでも十分だと思われ、やはり車体が軽いことは全てに対して効率的なのだと再認識させられます。

【外観】
上述のように、アルファロメオ4Cは、他のどの車とも異なるシルエット。
とにかく低く、他のアルファ・ロメオ車と比較するとまさに異様な風体ですね。
非常に繊細かつ大胆、直線と曲線、曲面とエッジをうまく組み合わせたデザインで、いかにもイタリア的。
試乗車はブラックでしたが、明るいボディカラーやメタリックカラーの方がその美しい造形がよくわかるのかもしれない、と思います。
なお、ぼくが購入するのであれば、三層メタリックのマドレペルラ・ホワイト一択(一番陰影が出やすいと思うので)。

最低地上高はかなり余裕があり、前後とくにリアはディフューザーも高い位置についているのでまずクリアランスで困ることはなさそうですね。
ホイールベースは2380とかなり短く、スロープ越えにもお腹がつっかえることはまず無いと思われます。

全長が短いためかアルファロメオ8Cのような優雅さは感じませんが、逆にスパルタンさは全身から思いっきり発しており、とにかく普通の車ではない、という雰囲気がプンプン出ています。

なお、アルファロメオ4Cのリアハッチにはヒンジやダンパーなどハッチを固定しておくデバイスは存在しません。
もちろん軽量化のためと思いますが、つっかえ棒でハッチを固定しておかないとハッチを固定することができず、このあたりの割り切りは素晴らしいですね。
ぼくはこういった「切り捨てる行為」が大好きです。

なお、エンジンの後ろには小さいですがトランクスペースがあります。

そしてエンジンルームのなんと簡素なことか、ここでも「魅せる」ことを完全に切り捨てており、なにもかもが直接的。
給油口は車体右のCピラーあたりにあるのですが、エンジンルームから給油口〜ガソリンタンクにつながるパイプが丸見え。
まあここまで割り切った車はまず存在せず、アルファロメオの4Cに対する姿勢が伝わって来るところでもあり、嫌が応にも期待が高まります。

おきまりの裏面チェックをしようと車体の裏側を覗き込みますが、かなり広い面積がパネルで覆われてほぼ確認できず。
一部のパネルはアルミの単なる「板」であったりと、ここも機能最優先の考え方が貫かれているようです。

ちなみに、ミドシップレイアウトにもかかわらず、フロントには収納スペースはありません。
フロントフードの下は構造材が入っており、トランクはない、とのこと。
ここもスパルタンかつストイックですね。

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【室内】

ドアをリモコンでアンロックし、小さなドアノブに指を入れてドアを開けますが、ドアの軽さには驚かれます。
外装のほとんどの部分を強化プラスチック(SMC、強化ガラス繊維プラスチック)を使用しており、その影響もあるのでしょうね。
ドアは思いの外小さく(短い)、下部がJカーブを描くなど独特の形状で、要は開口部が狭くなっています(強度確保ためか)。

そしてドアを開けると目に入るのはカーボン製のパッセンジャーセル。
BMW i3やi8もカーボン繊維を使用していますが、それらはいわゆるカーボンの「織り目」が無く、しかしこのアルファロメオ4Cはくっきりと織り目が見え、かなり気分が高まります。
さらにフロアなどもカーボンむき出しで、かなりヤル気をそそられますね。
もうこの時点でぼくのテンションはかなり上がっています。
外装よりも内装のインパクトの方がかなり大きいですね。

なお、このアルファロメオ4Cのカーボンモノコックはプリプレグ方式で成型されます。
これはF1などレーシングカー同様の方法で、カーボン繊維にエポキシ樹脂を染み込ませて加熱・硬化させる方法。
強度が高く軽量に仕上がりますが、過熱するオーブンとくにモノコックの場合は特大オーブンが必要になるのでコストが高い、という難点があります。

ちなみに市販車でこれを採用するのはフェラーリ・エンツォ、ポルシェ918スパイダー、ブガッティ・ヴェイロン、ラ・フェラーリ、マクラーレンF1などハイパーカーの部類。

同じようにカーボンモノコック(カーボンセル)を採用することで知られるランボルギーニ・アヴェンタドールやマクラーレンMP4-12C、650S、レクサスLF-Aのカーボンモノコックは「RTM(レジン・トランスファー・モールド」方式を採用しており、これは金型にカーボン繊維を入れた後に樹脂を注入して成形するもので、プリプレグに比べて大きな設備が不要で生産効率も高い、とされます。
方式としては最新式ですが、プリプレグ方式に比べて軽量性と強度が劣るとも言われますね(それでも相当な強度を持っているわけですが)。

そのため、アルファロメオ4Cにおいては、そのプリプレグ式で製造したカーボンモノコックを「どうだ!」とばかりに見せつけているのかもしれない、と考えたりします。

なお、カーペットなど防音や吸音、快適性を考えたものは最小限(無いといってもいいくらい)。
メーターもメインの液晶があるのみでスイッチ類もごく最小。
日本仕様には1DINサイズのナビユニットが入ります。

室内側のドアハンドルも「ストラップ」というレーシングカーさながらの仕様でスパルタン。

ぼくがさらに驚いたのペダルで、レーシングカーばりにオルガン式ペダルが床に取り付けてあること。
この剛性は抜群で、ぜひ(普通の靴ではなく)ドライビングシューズで運転したいところですね。
なお、ブレーキペダルとアクセルペダルは同じ高さで、これは他メーカーのスポーツカーと大きく異なる部分です。
そのため、慣れないうちはブレーキペダルが奥にあるように感じるかもしれません。

快適性についてはほぼ考えられておらず、しかしウラカンではオプションでも設定されないドリンクホルダーが装備されます。
全体的に収納は少なめで、そのあたりの割り切りも良いですね。

室内に身を滑り込ませてクッションも最小限のバケットシートに身を沈めると(そこまでサイドシルは高く太いわけではない。BMW i8に比べるとずいぶん乗りやすい)、以外と視界が良いことがわかります。
ダッシュボードが極端に低く、サイドウインドウも意外と低いですね。
このあたりはフィアットグループの特徴かもしれず、アバルトでも同じ印象を受けました。
なお、Aピラーはかなり細く、それが広い視界を確保できている一因かもしれません(強度の高いカーボンモノコックなので細くできるのかも)。

そして、アルファロメオ4Cで特殊なのはフロントウインドウ。
ランチア・ストラトスのような大きく弧を描いたウインドウで、室内からの眺めが非常に独特です。
ドアミラーも大きく後方確認も容易で、真後ろの確認についてはリアハッチの左右にあるメッシュを通しても後方を見ることができるので、思いのほか良好。
もしかするとポルシェ・ボクスターよりも後方視認性は良いかもしれません。

左右シートの間隔は、幅が1870ミリある車としては異例に狭く、たぶん重量物を車体中央に集めたかったのだと思います。
ガソリン給油口の位置を考えても燃料タンクはおそらくシート後方にあると考えられ、とにかく車体中央に重心を集めているようですね。

【ドライブフィール】
さて、キーをキーシリンダーに差し込み(スマートキーでもなく、プッシュボタン式スターターでもない。コンベンショナルな方式ですが、これがこの車には似合っていると思う)、ブレーキペダルを踏み込んでキーをひねると「ガゥォォォン!!」と凄まじい音がしてエンジンが始動。
これが4気筒かと思えるほどの大きな音で、触媒レスかと思えるほどの澄んだサウンドです。

ただ、不思議なのは不快な振動が伝わってこないこと。
音はこれだけ伝わってくるのに、そして振動を抑えるマット類がほぼ無いのに振動は伝えてこず、非常に高いボディ剛性、エンジンの取り付け剛性がわかります。

メーターは最近の車っぽくグラフィカルな表示を見せ、ここでも走りへの期待を煽りますね。

もうここでテンションがかつてないほど上がっているわけですが、なぜかやたらとパッドが厚く握りやすい(他の部分があまりに直接的なことを考えると)サイドブレーキを下ろし、セレクタースイッチを走行可能なモード(ボタンの名称は失念)へ入れます。

これで走行準備は整っており、ブレーキペダルを離してアクセルペダルを軽く踏み込むと車はゆっくりとスタート。
クリープの無い設定で、フェラーリ含むフィアットグループではスポーツカーにはクリープを設定しない方針なのかもしれません(ほかのアルファロメオ車にはクリープがある)。

出だしの印象としては「かなり軽い」というもので、思いのほか軽い重ステ(ステアリングホイールはなぜか2スポーク)を切っていざ車道へ。
段差を超えて車道に出ますが、ほぼ衝撃を感じないほどサスペンションが良く動いており、サスペンションを支える岩のようなボディ剛性の高さがわかります。
車体が軽いこと、気温が低くタイアが暖まっていないことから慎重にアクセルを踏みますが、ターボラグをやや感じる設定だと感じます。
排気量に対して馬力が大きく、大きなタービンを採用していることが想像でき、また排気量が小さいので加給していない時のトルクが細いのでしょうね。

それでもぐっとアクセルを踏むと車が前に出て、そこからヒューンとタービンが空気を吸い込む音(この音が実に刺激的。ウエストゲートを付けるとなお良いか)がすると同時に加速体制に入ります。
ただしドッカンターボというわけではなく、極めてリニアな加速。ただ瞬間的にラグを感じる、というだけです。

とにかく排気音や吸気音はしっかり聞こえる設定ですが、不快な共鳴音や振動、騒音は無く、こういった設定もできるのか、とここは素直に感心せざるを得ません。
単純にエキゾーストサウンド、吸気音を楽しむことができ、そして何もかもがドライバーのアドレナリンを放出させるような設定ですね。

足回りは固いですがゴツゴツとしたものではなく、当たりが柔らかくストロークが短いという印象。
実際は相当に硬い足回りだと思うのですが、それを支えるボディが異常なまでに頑丈で、サスペンションがよく仕事をしているということなのでしょうね。

ハンドリングは極めてシャープで正確無比。
切れば切るだけグイグイと曲がり、いわゆる「オン・ザ・レール」。
オン・ザ・レールを謳う車はたくさんありますが、実際にオン・ザ・レールなのはこのアルファロメオC4とフェラーリ458スペチアーレだけではあるまいか、とぼくは考えています。
ステアリングの中立付近がしっかりしていることも特筆できますが、それでも神経質さはありません。
パワステなしのラック&ピニオンなので当然ですが、非常に優れたフィードバックを返してくれるステアリングであり、不安定さを微塵も感じさせずに信頼して切り込んで行けるフォーリングですね。

他の車は大なり小なりオーバーかアンダーステアの傾向があり、ロールを伴う慣性を感じますが、アルファロメオC4はまったくロールを(体感上)感じず、まさにゴーカートのような感じですね。
それでいてコーナリング中に轍に乗っても「横に飛ぶような」不安を感じさせず、他の車で身についた経験上「これはムリだろう」という速度でも何の苦もなく曲がってしまう車でもあります。
狙ったところをドンピシャで走れるので、痛快極まりなく、サーキットに持ち込んで高回転をキープして走れば、これほど楽しい車もほかにないのではないかと感じさせます。

なお、アルファロメオならではの「D.N.A.」モード選択が備わりますが、新車のために「D(Dynamic)」は使用できず。
エンジンの負荷を抑えるために走行300キロ以下ではこのモードに入れることができない設定となっており、「N(Natural)」のみでの走行となりました。

【総括】

アルファロメオ4C試乗までは、もっともコストパフォーマンスの高い車はジャガーFタイプではないかと考えていましたが、このアルファロメオ4Cは完全にそれを超えています。
そしてドライビングマシンとしてはフェラーリ458スペチアーレが最高峰だと考えていましたが、それをも超えていると感じます。

視覚(むき出しのカーボンファイバーやヤル気を感じさせるメーター表示、ラウンドしたフロントウインドウ)、触覚(正確無比なステアリングホイール、挙動をきっちり伝えるシート)、聴覚(魅力的なエキゾーストノート、吸気音)といった人間の感覚に訴えかけるものを持っているスポーツカーであり、とくにハンドリングは第一級。

カーボンむき出しで吸音材や制振材の無い室内、ダンパーを持たないハッチ、簡素な室内、しかし走りに関する部分では一切手を抜いておらず(むしろカーボン製シェルなど、とんでもなくお金がかかっている)、まさに「走ることだけ」に特化したストイックな車です。
それでいて、モノが乗らないことさえ許容できれば、日常の足にも使用できるフレキシブルさをも兼ね備えています。

よくもこんな車を作ることが、そして市販することが、なによりこの価格で実現できたということが驚きでしかなく、近年感じたことのない衝撃でもあります(これと似た衝撃はフェラーリ458スペチアーレ、ランボルギーニ・ガヤルドLP550-2バレンチノ・バルボーニくらい)。

今どきパワステレスなんてありえないだろう、と思いますがとにかく省けるものはなんでも省き、しかしデュアルクラッチなど先進の装備も備える、「簡素なだけではない」アルファロメオ4C。
おそらく、こういった車を作れるのは他にルノーくらいじゃないかとは思いますが、現時点では世界上で他に例を見ない、「割り切った車なのに普通に乗れる」車だと思います。
たとえばアリエル・アトムも割り切った車ですが、そのために犠牲にするものがあるかと思います。
しかしアルファロメオ4Cの場合、犠牲にするものが極めて少ないのに、極めて高い動力性能を持っている、というところが大きな意味を持っており、783万円という価格がその価値を大きく押し上げています。

海外メディアでは「スモール458スペチアーレ」という表現も見られますが、両車を運転(試乗)した経験上、そんな甘っちょろいモノではなく、明らかにこのアルファ・ロメオ4Cのほうが過激で、軽量な分挙動がダイレクト。

絶対的なパワー、最高速度を競う車ではありませんが、通常の速度域で走ってもその楽しさが理解できる車であり、この車についてならたぶん三日くらい語れるんじゃないか、という素晴らしさを持つ車です。

なお、試乗中はその刺激にシビれながらも、「貯金いくらあったっけ?何を売ればこの車を買えるだろうか」という思いがずっと頭の中を駆け巡っていました。

間違いなく「買って損はない」車ですね。

試乗記について
ランボルギーニ、AMG、アルファロメオ、VW、ジャガー、ベントレー、ルノー、ミニ、フェラーリ、マクラーレン、テスラ、レンジローバー、スズキ、トヨタ、マツダ、スバル、ホンダ、レクサス、メルセデス・ベンツ、BMW、ロールスロイスなどこれまで試乗してきた車のインプレッション、評価はこちらにまとめています。



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