| 中国市場でマツダのみが好調 |
Yahooo!ニュースによると、2018年2月における中国での新車販売台数について、「日系メーカー7社のうち、日産とマツダ以外は前年同月を下回った」とのこと。
さらにマツダは2月単月において「過去最高」を記録するなどとりわけ好調のようですが、「マツダ3(アクセラ)」、「CX-4」が好調だと報じられています。
CX-4は日本では売っていない
なお、マツダ「CX-4」は中国専売となるモデルで、2016年の北京モーターショーにて発表。
元はコンセプトカー「コエル(Koeru)」で、これを市販化したのが「CX-4」ですね。
↓こちらが「コエル」コンセプト
ベースはCX-5でホイールベースは同じ2700ミリで、しかし全高は180ミリ、ボンネットは70ミリCX-5よりも低く設定され、ルーフやリアウインドウの傾斜角がゆるくなって「クーペスタイル」をアピールしています。
マツダによると、このスタイリングを再現するのにフロントサスペンションや燃料タンクの位置も変更したとのことで、「かなりコストのかかった」車だと言えますね。
なお中国はあまり道路事情が良くはなく、そのためにある程度の最低地上高は必須。
よってマツダでは「低いクーペスタイル」を実現するのに車高(サスペンション)を落とすという安易な手法を用いず、最低地上高20センチを確保している、とのこと。
実は重要な「最低地上高」
この「最低地上高が高い」のはけっこう重要で、「最低地上高が高く、タイヤが大きく、ボディの天地が低い」とSUVとしてかなり格好良く見えることになり、これは「レンジローバー・イヴォーク」が代表格。
逆に、SUVに対して「車高を落とし、ホイールアーチなど樹脂パーツをボディ同色に塗る」というスポーツカーと同じカスタム手法を用いると「予想していたのとは違ってなんか格好悪くなった」という現象が発生するのも同じ理由からだと考えています。
ただ、これら(最低地上高が高く、タイヤが大きく、ボディの天地が低いという)条件を実現するのは意外と難しく、というのも「殆どのSUVが乗用車をベースとしている」ため。
乗用車をベースとしているということは「最低地上高がもともと高くない設計」の車が基本で、それのフロアを上げるということは操縦安定性に問題が出ることになり、様々な影響も(トヨタのSUVはこの傾向が顕著)。
そのために最低地上高は「あまり高く出来ない」ことになり、となるとマツダCX-4やレンジローバー・イヴォークのような「4つのタイヤで踏ん張っている」という躍動感が出せず、どうしても「ワゴンっぽい」雰囲気になるわけですね。
↓BMW X1はその意味でちょっと残念
要は「地面とフロアとの隙間」と「ボディの厚み」とのバランスが重要で、この比率次第で「スポーティーで躍動感のあるルックスになるか」「鈍重で世帯っぽい印象になるか」が決まる、とぼくは考えています。
こちらはBMW X2コンセプトで、これを見る限りだとBMWもそのあたりの「SUVが格好よく見える」理論は理解していて、コンセプトカーでは最低地上高を上げ、タイヤを大きく、グラスエリアを小さくしてボディやキャビンを小さく見せていることがわかります。
ただし実際にこれを市販車で実現するのは難しく、よってイヴォークが市販時に「コンセプトカーのバランスをそのまま再現」したことがいかに重要であるか(そして困難であったか)もわかりますね。
そしてマツダCX-4についても、「デザイン最優先」で、いかに格好良く見せるか、そしてそのために多くの犠牲を払ったということが分かる車で、「ヒットすべくしてヒットした」と言えるかもしれません(生産は長春拠点の「一汽轎車」)。
多くの自動車メーカーは格好良いコンセプトカーを作ることは出来てもそれを市販に移せず、とくにスバルやホンダ、BMWにはその傾向が。
SUVを作りたくてもベースとなるプラットフォームや変更範囲に(構造やコスト的)制約がある、車高を上げたくても走安性の関係でそれはできない、タイヤを大きくしたいけどそれも(コストや燃費、各部の強度の関係で)それもできない、グリーンハウスをコンパクトにしたいけどそれも(視認性や居住性の関係で)無理ということになりがちですが、マツダCX-4の場合はそのあたりの課題を解決し、「デザインでクルマが選ばれる傾向の強い中国」にマッチした製品を開発したことが勝因だと言えそうですね。
↓アウディe-tronスポーツバックコンセプトも「最低地上高が高く、タイヤが大きく、ボディの天地が低い」典型※ただしEVなのであまり最低地上高を上げるのは難しく、そこは下回りをブラックとすることでカバー。ここがボディ同色だとずいぶんイメージが変わってくる
マツダCX-4の場合、色々な制約を超越したという意味でまさに「コエル」の実現だと言えそうですが、CX-4は中国の自動車メーカーもデザインをパクるほどなので、大きく中国人の心に響いたのは間違いなさそう。
ぼくがいつも思うのは、いろいろな制約があるのは仕方ないとして、それを超えようとせずに制約の中でハンパな仕事をしてしまうこと。
そうなるともちろん結果もハンパなものとなる可能性が高く、自分としても「不本意」「不完全燃焼」になりがち。
しかし困難はあっても制約を超えて何かを成し遂げた場合、それが成功すれば無上の喜びとなるでしょうし、失敗したとしても「やるだけやった感」はあるかもしれません。
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