| ドイツ本社の発言力が低下し、中国によってコントロールされる懸念も |
筆頭株主が中国人の李書福氏となってしまったメルセデス・ベンツ(ダイムラー)ですが、今回は3番目の株主までもが中国の北京汽車になった、との報道。
ことの始まりとしては、吉利汽車(Geely)のCEO、李書福氏がメルセデス・ベンツに提携を持ちかけるもメルセデス・ベンツが「誰だお前」とその話を一蹴し、そこで李書福氏があの手この手でダイムラーの株式(9.69%)を買い集め、その筆頭株主に躍り出た、というのがまず第一弾。
そして中国において、外国の自動車メーカーが現地で生産を行う場合には「中国企業との合弁会社を設立せねばならない」というルールがあり、メルセデス・ベンツの中国での提携相手が「北京汽車(Beijing Automotive Group=BAIC)」。
今回はこの北京汽車がダイムラーの株式を買い進め、「第3の大株主になった」ということになります。※二番目はクウェートの投資ファンド
中国国内において、吉利汽車と北京汽車とはライバルという関係にあり、北京汽車にとってはライバルに「メルセデス・ベンツ本体を乗っ取られてはかなわない」ということからダイムラー株の買い付けに動いたのだと思われますが、これは少し前にあった報道のとおり。
買収を恐れて株式を公開しない自動車メーカーも
なお、今回北京汽車が取得したのはダイムラー株の5%だと報じられていますが、それでもダイムラーにとっては「第3の筆頭株主」ということに。
そしてダイムラー会長からは今回の件に関し、「長期的なパートナーである北京汽車が第三の大株主となったのは喜ばしいことだ。中国市場は引き続き、我々の精巧にとってメインの柱であることには変わりはない。それはセールスのみではなく、製品開発や生産の場としてもだ」とコメントしています。
つまりメルセデス・ベンツとしては今回の事態を歓迎しているということですが、この背景には、北京汽車が発言力を得ることで吉利汽車の動きを牽制するという意図があるんじゃないかと考えていて、しかしうまくハンドリングできないと「さらなる混乱」を招くことにもなりそうですね。
北京汽車側からは「これによってメルセデス・ベンツとの結びつきをさらに強いものとし、メルセデス・ベンツに対する経営と戦略をサポートしてゆく」と上から目線のコメントも。
メルセデス・ベンツは中国企業に対して発言力を持たない
メルセデス・ベンツと北京汽車とのパートナーシップは2003年から継続していますが、その内容はメルセデス・ベンツの語ったとおり開発や生産にまで及んでいます。
その後メルセデス・ベンツは北京汽車の株式9.55%を取得し(つまり株式の持ち合い)、さらに2018年には北京汽車のEV製造親会社、BAIC BluePark New Energy Technology Co. Ltd.の株式3.01%も取得済み。
ちなみにメルセデス・ベンツは北京汽車に対して頭が上がらないようで、かつて「Gクラス」を北京汽車にパクられてしまった際にもクレームを入れた様子はなく、その後も北京汽車はやりたい放題です。
今回、北京汽車は「三番目の大株主」となったことでメルセデス・ベンツを黙らせるだけの力を得たことになりますが、これによって「さらにやりたい放題」になるのでは、という心配も出てきそうではありますね。