| トヨタの中国における行為は日本においても独禁法違反に抵触する可能性がある |
時事通信によると、中国政府機関(中国国家市場監督管理総局)がトヨタに対して8761万元(邦貨換算で約13億7200万円)の罰金を課した、とのこと。
この理由は独占禁止法違反となり、つまりトヨタが価格拘束を行ったと報じています。
江蘇省市場監督管理局が交付した決定書によれば、「トヨタは2015年から2018年にかけて、中国同省内のディーラーに対し、レクサスのインターネット販売価格を”同一に”するように指示したほか、最低価格についても制限を行った、とのこと。
この現状を鑑み、同管理局は「市場競争を排除、制限し、消費者の利益に損害を与えた」という決定を下したということになりますが、罰金の算定にあたっては「2016年における同省内の売上の2%」を基準としており、トヨタ側から異論は出ていない、とのこと。
つまりトヨタはこれを認め、罰金を支払うということになりますが、今後中国のほかの省においても同様の決定がなされる可能性もありそうです。
中国は外資系企業に対して厳しい
なお、中国というと「パクリ」という印象がありますが、中国はそういった自国内の企業活動の現状については非常に寛容。
以前もレンジローバーが「イヴォークのパクリ」、Landwind(X7)を訴えた際にも「これはパクリではない」という正式な判決を下していて、これがさらにパクリを後押ししたのか、様々な模倣車が登場しています。
そのほか、マセラティに対しては「ディーラーに販売台数を共用してはならぬ」というお達しを出し、つまりはノルマを課すことができなくなり、これによってマセラティの販売が大きく減少したことも(ノルマがないと全然売れないようだ・・・)。
さらに現在中国はEV化を国あげて進めていますが、これについては自動車メーカーに対して一定の奨励金のようなものを出していますが、トヨタはこの選に漏れて中国政府の保護を受けることが出来ない状態です(これは現地で報道されていたもので、しかし日本では該当ニュースが見つからない)。
こういった背景には、中国自体が「自国の発展しか考えていない」という事実があり、これについては「強制合弁」「関税」が顕著な例。
中国でモノを作りたかったらその技術を開示しろ、中国でモノを売りたかったら関税を払えということで、これらは中国の産業へ「合法的に海外の先進技術を移転させる」「中国内での自国製品の競争力を維持する」ことを考えているわけですね。
こうやって中国企業は短期間のうちに先端技術を手に入れてのし上がってきたわけですが、そのうち「吸い取られるだけ吸い取られた」海外企業が用済みとして捨てられるのは火を見るよりも明らか。
そんなん横暴やん?と思ってしまいますが、中国は一党独裁なので簡単に規制を変更でき、自動車だと「販売台数世界一」ということもあって、「文句があるなら中国から出ていってもらって結構ですよ?」という対応を取ることができるわけですね。※ただし世界中から非難を浴び、条件付きで緩和しつつある。しかしこれは”すでに技術を取れるだけ取ったから緩和してもいい”ということなのかも
独占禁止法とはなんぞや
ここで独占禁止法について触れておきたいと思いますが、その根本にある思想というか目的は「健全な経済の発展」「消費者の利益保護」。
”健全な経済の発展”という意味では、たとえば複数企業が申し合わせて「価格や性能をこれくらいにあわせておこう」と決めて技術を小出しにしたり(競争によって技術が発展しない)、大手企業がその優位な立場を利用して下請けを叩いたり(会社でいうとパワハラ。下請けが押さえつけられて成長できない)といったことが独禁法違反に。
”消費者の利益”という観点だと、今回問題となった価格拘束があり、つまりは「この価格で売れ。でないと取引しないぞ」と小売店に圧力をかけて市場価格を守らせるというのが端的な例。※上の「技術の小出し」についても、消費者がすぐに買い替えを強いられるなど不利益がある
これは「ブランド価値を維持するため」に各メーカーがあの手この手で行うわけですが、これが今回中国当局の逆鱗に触れたというか、いやがらせというか、見せしめの対象になったと考えて良さそうです。
独占禁止法はかなりややこしく、たとえば「定価」という表現も実は「価格拘束を示唆するのでアウト」で、正しくは「希望小売価格(メーカーが希望するだけで、指示はしてないですよ的な)」と表示しなくてないけなかったりといった細かい決め事があるようですが、これらは上述の「健全な経済の発展」「消費者の利益保護」に則って決められたものと考えるとわかりやすいかもしれません。※日本国内における独占禁止法関連ニュースはこちら
VIA:時事通信