| マクラーレンは「すべてが好調」のはずだったが |
さて、コロナウイルスの影響にてマクラーレンが経営危機に陥り、「かなりヤバそうだ」というウワサがあちこちから出ていますが、今回はマクラーレンからじきじきに「従業員(4,000人のうち)1,200人を解雇する」という公式発表がなされています。
マクラーレンが発表した内容によれば、「今後の成長を確かなものにするために構造改革を行う」前置きし、「グループ子会社すべて、そして乗用車部門、モータースポーツ部門、事務管理部門において1200人を削減する」とのこと。
もはやほかに選択の余地がない
クラーレン会長、ポール・ウォルシュ氏によれば「人員削減を行わずに済むようにコスト削減策を取ってきたが、この状況下では従業員の解雇以外に選択の余地がない」と述べており、F1部門では70名にものぼる削減調整を行っていると報じられています。
なお、F1では2021年に新しいコストキャップ(予算制限)案が導入されますが、これによってF1関係者が多くの職を失うことになると思われ、それはマクラーレンに限った事情ではないのかも。※1億7500万ドルから、1億4500万ドルに引き下げられる
さらに、そのほかのモータースポーツにおいても、多くの自動車メーカーが活動縮小や撤退を決めており、モータースポーツに関係する人々の将来は「明るいとは言えない」状況になったと言えそうです。
ただしマクラレーンは困難な状況においても「チャンピオンシップ獲得に向けてのチャレンジを続ける」と述べ、現時点ではF1撤退については考えていない模様。
構造改革の代償はあまりに大きい
今回発表のあった「4000人のうちの1200人」はかなり多い数字であり、比率で言えば33.33%。
つまり、3人ちょっとに一人は解雇されるということになりますね。
ここでぼくが思うのは、マクラーレンが1200人を解雇し、さらにドライバーに高い報酬を払ってF1を続けることに対し、どういった感情を持つのか、ということ。
F1を撤退すればけっこうな数の雇用を守ることができる可能性もありますが、雇用を犠牲にしてまでF1を続けることの是非と言い換えることもできます。
たしかにモータースポーツ、とくにF1はマクラーレンにとってのコアではあるものの、そこまでしてF1を継続するよりは、「雇用のためにF1を撤退した」として(今後)市販車ビジネスに専念したほうがイメージがいいんじゃないかと考えたりするわけですね。
マクラーレンは自社のヘリテージを担保に入れることを検討
今回の報道のちょっと前に出てきたのが、「マクラーレンは本社と、その所蔵する車両を抵当に入れることを検討中」という話。
マクラーレンは立派な社屋を持ち、その中には過去のF1マシンほか多数のヒストリックレーシングカーを保管していますが、本社とこれらのクルマを担保に入れ、約360億円を借り入れることを検討している、と報じられています(アイルトン・セナの乗ったF1マシンは非常に高い価値があり、マクラーレンのコレクションは総額で260億円ほどの価値があるという)。
なお、この背景にあるのは、マクラーレンがイギリス政府に対して約200億円の融資を申し入れたものの「却下」されたという事実で、とにかくマクラーレンは「カネが必要」ということになりそうですね。
そして、少し不思議なのは、マクラーレンはなぜお金がなくなったのか、ということ。
マクラーレンはこれまで非常に速いペースで成長してきたことでも知られ、ここ最近も積極的に新型車を発表しています(エルヴァは予定台数を売り切ることが難しかったようですが)。
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参考までに、マクラーレンと同じようにスーパーカー専業メーカーであるフェラーリやランボルギーニについては「危機」が報じられることもなく、むしろ「悪くない」数字。
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こういった高額商品は不況の影響を受けにくく、そもそも受注生産であって在庫を売っているわけではなく、よってこの2-3ヶ月で世界的な状況が悪化したとしても即座に収益が悪化しないはずではありますが、マクラーレンの場合はなぜか急激に経営状態が悪くなったということになりますね(F1からの収益がけっこうあったのかもしれず、それが無くなったからなのかもしれないが、事情はフェラーリも同じ))。
ここで考えられる事情としては「マクラーレンは運営にお金がかかる会社」もしくは「借金が多い会社」なのだということになりそうで、様々なジャンルにおいて積極投資を行っているというニュースを見るに、他社に比較して「マクラーレンは運営(研究開発)にお金がかかる会社」なのかもしれません。
参照:Car and Driver