| TTそしてそのデザイナーは間違いなく一つの時代を築いたと言っていい |
ジャガー・ランドローバーのデザイナー、ジョーダン・ジェンドラー氏が考えた「アウディGT」。
なかなか日本では考えにくいものの、欧米では特定の自動車メーカーに務めるデザイナーが別メーカーの自動車のデザインを(個人的プロジェクトとして)行い、かつ公開することも多く、今回のデザインもそういった個人的興味から派生した作品です。
モチーフは初代TTとローゼマイヤー
なお、このアウディGTのモチーフとなったのは初代TTとローゼマイヤー。
言われてみると、たしかにこのアウディGTのフロントはTTもしくはTTコンセプト(画像)にそっくりでもありますね。
参考までに、(エンツォ・フェラーリなどのデザインで有名な)ケン・オクヤマ氏の著書「ムーンショット デザイン幸福論」によると、ケン・オクヤマ氏がポルシェに在籍していた頃、のちにTTのデザイナーとなるフリーマン・トーマス氏と一緒に仕事をしており、その頃フリーマン・トーマス氏は「新しいポルシェ」として(ポルシェ上層部に)TTの原型を考案。
しかしポルシェからそのデザインを却下され、しかし諦めきれずに自分でクレイモデルを作った、としています。
なお会社で却下された以上は職場でその作業ができず、従って自宅キッチンのオーブンを使い粘土を加熱したりしてクレイモデルを完成。
そのためこの車はデザイナー仲間から「キッチンカー」と呼ばれたそうですが、後に彼がアウディに移籍して緊急プロジェクトに招集された時にこの「キッチンカー」を提案し、その場でピエヒ会長に「これだよ、これ」ということで一発採用になり、発案から15年かけて「TTクーペ」として市販されることになった、と記載されています。
一方の「ローゼマイヤー」ですが、この名称は伝説的レーシングドライバーであるベルント・ローゼマイヤー氏の名にちなんでおり、そのルックスも1930年代に活躍した「シルバーアロー」を強く意識。
デザインを行ったのはTTと同じくペーター・シュライヤー氏で、フェルディナント・ピエヒ氏はペーター・シュライヤー氏の手腕そしてTTのデザインを高く買っていたということがわかりますね。
搭載されるエンジンはW16、そして駆動方式はクワトロ、最高時速350キロに達する走行性能を備える「スーパーカー」でもあります。
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そしてリヤから見るとアウディGTにはローゼマイヤーのイメージが色濃く反映されているということがわかりますね。
そして面白いのは、ボディの上下が分割されたかのようなデザインを持つこと。
観音開きの前後ドア、リアハッチを持つ「5ドア」となりますが、ルーフはスポーツカーのように低く、サイドウインドウの面積は極端に小さくなっています。
ドアミラーの代わりにはカメラが用いられていますが、これは「格納式」なのかも。
アウディGTにはレーシングバージョンも存在
そしてこちらはアウディGTのレーシングバージョン。
極端にボディが広げられ、フロントバンパー上のドライビングランプやフロントワイドフェンダーはちょっと「レトロ」な雰囲気も。
リアにはスワンネック式のリアウイングに超ワイドフェンダー、リアディフューザーには16枚ものフィンが取り付けられています。
ローゼマイヤーは何らかの事情にて実現することはなく、TTも現行モデルを最後にそのライフが終了すると言われますが、アウディ内部には「TT信仰」が強く根付いており、一部の重役含めTTをなんとか生きながらえさせようとする動きもある模様。
そして「生き残る」ためにはSUV化、5ドア化、そしてEV化といったメタモルフォーゼも検討されているとも報じられますが、今のところ具体的な決定はなされていないようですね(コロナウイルスの影響にて、一層
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