| フォルクスワーゲンは「電動化さえすれば」すべての問題が解決すると考えていたようだが |
ここへ来て頼みの綱の「電動化」にも暗雲が立ち込める
さて、フォルクスワーゲンブランドのCEOであるトーマス・シェーファー、そしてフォルクスワーゲン・オブ・アメリカCEOのパブロ・ディ・シ氏が今回ロサンゼルス・オートショーの開催にあたりトークショーに参加し、「フォルクスワーゲンの将来」そして「EVラインアップにスリリングなラインアップを加える可能性」について言及したもよう。
そしてここで注目に値するのは、パブロ・ディ・シCEOが「ノスタルジアのためにスポーツカーを復活させる必要がある。そしておそらく電気自動車となるだろう。それは、我々が計画しているポートフォリオの議論の一部でもある」と語ったこと。
VW製のエレクトリック・スポーツカーは「ハッチバック」となるようだ
そして同氏はこのエレクトリック・スポーツカーについてさらに踏み込んだ話をしており、パブロ・ディ・シCEOは「フォルクスワーゲンのスポーツカーは、ポルシェのようなスポーツカーとはならないでしょう。我々の場合、あくまでもブランドの伝統に倣い、ゴルフのハイパフォーマンスモデル、そうゴルフGTIのような伝統的なものとなるでしょう」。
続けて「我々はゴルフとGTIという象徴的なアイコンを持っています。我々はIDブランドに集中しますが、象徴的なモデルについては、その名を捨ててしまうにはあまりに惜しい」とも。
なお、このコメントはちょっと前に報じられた「ゴルフを廃止する」というものとは相反するものですが、どこかで風向きが変わった可能性もありそうです。
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「ID」ブランドは思うように売れていない
そこでなぜ風向きが変わったのかを考えてみると、まずフォルクスワーゲンがゴルフはじめ今までのモデルを廃止したいと考えたのは「ディーゼルゲートの影響を断ち切りたかったから」。
日本ではもう誰も憶えていないかとは思いますが、このディーゼルゲートは欧米では今なおフォルクスワーゲンに暗い影を落としており、そのためにフォルクスワーゲンは経営陣を入れ替えたり、そして何よりもこの電動化へと向かうトレンドを利用して「ガソリンモデルを一気に廃止し、電動ブランド”ID”へと切り替えることでブランドイメージを一新し再起を図る」ことを狙ったわけですね。※VWが電動化を推進するのにはこういった側面も大きく関係しているものと思われる
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ただ、そういったフォルクスワーゲンの思惑とは裏腹に、IDシリーズは「まったく」といっていいほど売れていないようで、そこでフォルクスワーゲンは「IDシリーズを売ってゆくには、既存車種をIDシリーズをブランドに移すしかない」と判断したのかも。
実際のところ、今回のトークショーでは「IDの後ろに来る名称は数字以外でも構わない」と述べ、つまり現在のID3、ID4、ID5といった文字列に加え「IDゴルフ」でも全然OKだと語っています。
そして今回「スポーツカー」という言葉が出てきた背景も「IDが売れていない」ということに起因するものと思われ、「スポーツカーのように、ブランドイメージを牽引するモデルの存在が必要であり、これなくしてはIDブランドのプレゼンス強化はない」と考えたのかもしれません。
なお、フォルクスワーゲンはパフォーマンスブランド「R」についても2030年までにピュアエレクトリック化するという構想も持っており、これとあわせてIDブランドの方向性が一気に変わる可能性が考えられ、従来のフォルクスワーゲンブランドと切り離し、未来を築くためにスタートしたIDブランドが、逆に「VWブランドと接近し、そのイメージを利用しなければならない」といったパラドックスが発生することになりそうですね。
なお、ゴルフに話を戻すと、現行8代目の後継、つまり少なくとも9代目まで存続することにも触れられており、ピュアエレクトリック化されるのはその後の10代目となるのかもしれませんが、「エレクトリックホットハッチ」になるとしても、ゴルフGTIのようにFFレイアウトは採用しないかもしれません(伝統を守るということ以外には、その意味が感じられない)。
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参照:Autocar