| 救助のため、うかつに高電圧ケーブルやバッテリーを切断してしまうと予想外の事故に発展する可能性も |
必要な情報の表示やその方法については統一規格にて法制化してほしいものだ
さて、ポルシェは自動車メーカーの間でもトップクラスの特許を保有し、特許からの収入が比較的多い会社であると言われていますが、今回は「もしものEVの事故の際、緊急応答者へと、そのEVのバッテリーの状態などを知らせるサブモニター」という特許を出願しています。
EVはガソリン車とは全く異なる「車体駆動用バッテリー」を積んでおり、事故の場合には感電や火災といったリスクを排除できず、救護を担当する人たちにも危険を及ぼすケースが少なからずあると言われます。
こういった問題を解決するため、ポルシェは過去に「(実車を用いた)プラグインハイブリッドカーの事故における安全な車体切断方法」などの講習を消防隊員に対して行っていますが、今回のディスプレイはそういった試みの「上をゆく」なかなかにいい案なのかもしれません。
今回、ポルシェが出願した特許はこうなっている
この特許はドイツ特許商標庁(DPMA)へと出願されたもので、構成としてはバッテリー状態をあらわす一次ディスプレイ、QRコード(3次元バーコード)を示す二次ディスプレイにて構成され、一次ディスプレイには車両の状況(まだ電源が入っていて意図しない加速を行う可能性があるかどうかなど)、二次ディスプレイにはQRコードが表示されるというものですが、このQRコードを読み取るとその車両の「安全情報へのリンク、救助鋏やスプレッダーをかける最適なポイント、その車両に使われているガラスの種類、車両内の高電圧ケーブルの配線図、エアバッグやシートベルトプリテンショナーの展開状態、バッテリー状態に関する警告」等が表示されると紹介されています。
この表示を行うデバイスとしては、液晶ディスプレイやTFT、プラズマディスプレイのほか、電源がなくても情報を表示できる電気泳動(ペーパーホワイト)ディスプレイの使用を前提としており、ここに多くの文字情報を表示しないのは、ディスプレイの小型化や省電力化、そしてなにより「(現在、ほとんどのスマートフォンで対応している)QRコードで読み取ったほうが確認が容易で、より多くの情報を入手できる」という狙いがあるのかもしれません(クルマから離れたところで、複数の人と情報を共有できるというメリットもある)。
そしてこのディスプレイの設置場所につき、ポルシェは車内と車外の両方を検討しており、事故の際にも破損しない、そして確認が可能な複数場所への設置を検討しているもよう。
こういった特許につき、出願されるすべてが実現されるわけではないものの、今回の特許については救助の際の安全性を飛躍的に高めるものとして期待ができ、早々の実用化が待たれるところ。
加えて、乗員の生体情報を医療従事者に通知するなどの拡張機能も期待でき、場合によってはEVのみならず、ガソリンやディーゼルなど内燃機関を搭載するクルマへの応用も考えられるかもしれません。
EVの火災対応についてはまだまだ発展段階
なお、EVの火災については、内燃機関のそれとは性質が大きく異なり、消火が難しいということや、消化には大量の水を要したり、さらには上述のように救助にかかる人々にも危険がおよぶ可能性も否定できず、しかしこのあたりは自動車メーカー発信でないと状況がわからず、できれば消防や救急に対する啓蒙活動、そして今回の特許のような外部への情報提供を促進して欲しいところ。
そして願わくば、こういった安全に関わる情報については、世界共通にてその提示方法を共通化させたり、もしくはその義務化を検討してほしいものだとも考えています。
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参照:CARBUZZ