| 実際のところ、この重量に起因してか0-100km/h加速はポルシェ911ターボに0.4秒も差をつけられる |
新世代メルセデスAMGはとにかく重く、おそらくこれを許容することは多くの人にとって難しいだろう
さて、先日発表された新型メルセデスAMG GTクーペの車体重量が追加にて公表され(ワールドプレミアの段階では、車体重量は”後日発表”となっていた)、その重量があまりに重すぎるとして話題に。
なお、その重量は先代メルセデスAMG GTの1,728kgから大きく増加してなんと(GT55、GT63ともに)1,970kgという数字となっており、これは同じ「4WD、2+2」というパッケージングを持つR35 GT-Rの1,784kgよりも重い数字です。
参考までに、R35 GT-Rはその登場時、あまりに重すぎるということが指摘されましたが、そこから十数年経ったいま、ライバルたちがどんどん重くなってゆくので相対的にGT-Rの重量が目立たなくなっているという珍現象も発生しており、何がどう転ぶかわからないといった現実がここにあるわけですね。
とにかく新型メルセデスAMG GTクーペは重すぎた
そしていかに新型車がどんどん重くなってゆくとはいえ、その中でも1,970kgという数字はあまりに重く、GT-Rのほかの例を挙げてみると、ポルシェ911の中ではもっともヘビーな911ターボで1,649kg、スポーツカーの中ではスーパーヘビー級として知られるブガッティ・ヴェイロンが1,888kg(シロンは1,995kgである)。
ちなみにフェラーリ・プロサングエの重量は(乾燥重量ですが)2,033kgなので、新型メルセデスAMG GT クーペの重量はもはやスポーツカーというよりもSUVに近いのかもしれません。
なお、この重量増加にはいくつか理由があり、ひとつは「4WD化」。
ただしこれによる重量増加は(他のスポーツカーの例を見るに)35~45kgくらいだと推測でき、よって新型AMG GT クーペが重くなっている原因は他にあると考えられます。
そしてその原因について考えてみると、まずは「リアシートが出来たこと」。
これによって15kgくらいは増えているかもしれません。
そしてなんと新型メルセデスAMG GT クーペのテールゲートはリモコンによる電動開閉式(スポーツクーペで電動開閉式リヤハッチを持つクルマは相当に珍しい)。
これもモーターユニットやダンパーを含めると15kgくらいは増えているのかも。
ちなみにリアのトランクスペースはかなり容量があります。
そのほか、電動ポップアップ式ドアハンドルも重量増となる要因のひとつ(2-3kg程度の増加だとは思われるが)。
参考までにポルシェ911GT3 RSは重量増加を嫌ってポップアップ式ドアハンドルを廃しており、フェラーリ296GTB/296GTSではドアハンドルをフラッシュマウントとしながらも「電動機構レス」としています。
ただ、これらを合わせたとしても先代に比較して250kgくらい増えている理由は全く分からず、むしろ「何をどうやったらこんなに重くなるんだ・・・」という印象ですね(豪華装備の追加や、おそらく遮音材・防振剤の増加も理由として考えられる)。
最近のメルセデスAMGはとにかく重い
なお、モデルチェンジで重くなったのはこのメルセデスAMG GTクーペだけではなく、直近だとメルセデスAMG C63も”大幅な”重量増加を非難されている一台。
こちらはマルチシリンダーエンジンを捨てて2リッター4気筒+ハイブリッドへとパワートレーンを入れ替えているものの、その車体重量は1,680kgから2,036kgへと大きく成長しています。
もちろん馬力や加速性能も大幅に向上しているものの、「ダウンサイジングしたのに重量増加」というところが受け入れられなかったのか、販売が開始されたドイツ本国では「注文がほとんどゼロ」だという報道もあり、この重量に対して拒否反応を示す人も少なくはないのかもしれません。
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参考までに、(新型メルセデスAMG GTクーペと車体を共有する)メルセデスAMG SLの車体重量は1,970kgなので、AMG GTクーペとAMG SLとは同じ数字を持っており(新型AMG SLの重量も先代SL550の1,880kgから大きく増加)、車体重量を見る限りでは新型AMG GTとAMG SLとは「クローズドボディかオープンボディかの違い」にとどまる可能性があり、先代AMG GTが持っていたスパルタンな乗り味が失われてしまったこと、先代AMG GTと先代SLほどの性格の差がないであろうことも推測できます。
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もう一つ参考までに、メルセデスAMG SLには4気筒エンジンを積んだ「SL43」が追加されていますが、こちらの車体重量は1,780kgと大幅に軽くなるものの、それでもライバルに比較すると軽量とは言えず、実際のところ、こちらの評判も芳しくはないもよう。
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メルセデスAMG GTはポルシェ911をターゲットとして誕生し、しかし「2シーター」「乗り心地がスパルタンすぎ」という指摘を受けることも少なくはなく、よって2代目AMG GTでは「ポルシェ911のように、より汎用性が高い」スポーツカーへと生まれ変わったものの、スポーツカーというにはあまりに豪華になり、そしてあまりに重くなったことでピュアさを残ったという評価がくだされることになりそうです(そして、この評価を覆すのは容易ではない)。
市場の意見を取り入れることはけして悪いことではありませんが、そういった意見を真に受けてとんでもない末路に至ったクルマも少なくはなく、よってぼくは「他人の意見を聞くのはほどほどにして、それより重要なのはしっかりとしたコンセプトを持つことであり、かつそのコンセプトは排他性を持っていなければならない」とも考えているわけですね。
この新型メルセデスAMG GTクーペふくめ、新世代のAMG各モデルの船出はおそらく「かなり厳しい」ものとなるかもしれませんが、どこかで現在の方向性を再考しないといけないところに差し掛かるのかもしれません。
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