| ホンダとしては、トータルでの二酸化炭素排出量を減らしたい |
実用化には様々な懸念や課題があるが、ホンダ車購入のモチベーションとしても機能しそうだ
さて、ホンダが「より環境に優しい運転をした顧客に対して報酬を支払う」という内容の特許を出願。
これは日本の特許庁へと(特願2022-038425他にて)出願されたもので、各国で実施されている排出量取引制度(ETS)によるクレジット購入を少なくすることを意図しているように読み取れます。
この排出量取引制度(ETS)は国や地域で定める「炭素排出量の上限を超えると(越えた分だけ)罰金を払わないといけない」という決まりに対し、罰金額の低減や利益獲得手段として、各メーカーが「炭素排出量をクレジットに換算して売買できる」という制度です。
たとえば、ある自動車メーカーが(そのビジネス規模によって決められた)炭素排出量を下回ると、炭素クレジットを獲得できるのですが、このクレジットは、排出基準設定当局が定めた基準を満たせなかった他の自動車メーカーに販売することが可能です。
例を挙げると、テスラのクルマは炭素を排出しないので炭素クレジットを獲得でき、そのクレジットを(決められた炭素排出量を上回り、罰金を支払う必要が生じた)FCA(現ステランティス)が購入したという過去も。
もちろん炭素クレジットを購入するにはそれなりの対価が必要ではあるものの、「罰金を支払うよりはずっとマシ」ということで、旧FCAのほかにもいくつかの自動車メーカー/グループが炭素クレジットを購入しています(テスラにとっては、これが収入源のひとつでもあり、ピーク時には16億ドルを得たと言われる)。
ホンダは炭素排出量を抑えたい
そこで今回ホンダが出願し公示された特許を見てみると、対象は(ホンダ車を営業者として使用するような)企業、あるいは個人向けだと思われ、構造的には「(1)クルマに内蔵されたハードウェアが特定の期間にわたって炭素排出量を測定し、その結果をユーザーに証明書として発行する。(2)この証明書は、ブロックチェーンが管理する暗号資産と交換することができ、加えて様々な暗号通貨間での交換が可能であり、最終的には時期が来たら現金化することができる」というもの。※暗号資産を利用しているのは、複数の国間で炭素クレジットの金銭的価値が変動するリスクを抑える(各国間で共通の価値を持つ暗号資産を用いることで変動リスクを回避する)ため
もちろんホンダの最終的な目的は「二酸化炭素排出量の削減を証明する文書を取得すること」で、これによってホンダは炭素排出量が低いことを示し罰金の額を低減したい、もしくは払わなくても良いようにしたいのだと思われますが、削減量の測定には一定の期間が必要であり、ホンダはこれを「2年間」だと見積もっています。
この特許を実用化するには車両へのデバイス装着、ユーザーの登録、不正利用の防止(これについては対策が講じられている)など様々な課題があり、そしてそもそも「この証明書が、炭素排出量のエビデンスとして公的に認められるのかどうか(ホンダの意図どおり、実際の排出量算出の基準としてとして認められるのかどうか)といった疑問もあって、実際にこれが導入されるのかどうかはわからないものの、ある意味では画期的な試みでもあり、今後の動向には注視したいと思います。
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参照:CARBUZZ, J-Plat Pat