| どう考えてもテスラ・サイバートラックの修理費用は「安くはない」であろう |
しかしそれはもう割り切ってサイバートラックのオーナーとなった特権を楽しむ方がいいだろう
さて、イーロン・マスクCEOは4年の歳月を経て「サイバートラックを量産する」という約束を果たしたところですが、そのハイライトはやはり「ステンレススティール製のボディ」。
ステンレスは自動車のボディ素材として「非常に」不向きだとされていて、しかしそれを実用化したことでサイバートラック最大のセールスポイントとなった一方、「サイバートラックのアキレス腱」となる可能性も指摘されています。
-
「強度が高く、腐食しない」ステンレスはなぜ自動車のボディにほとんど使用されないのか?実は自動車のボディには「非常に向いていない」素材だった
| ステンレススティールをボディに使用したクルマはおそらくデロリアンくらい? | ただしテスラ・サイバートラックはステンレスボディの採用に挑戦しようとしている さて、テスラは今年の後半にサイバートラッ ...
続きを見る
テスラは「傷つきにくく、修理も容易」だと主張するが
なお、このステンレススチールはテスラによると「ウルトラハードステンレススチール」、そして「傷や凹みを低減し、修理はシンプルで迅速」。
サイバートラックの外板は3ミリもあるために簡単に凹むとは思えず(凹むよりは”削れる”といった破損の仕方になるのかも)、よって「傷や凹みに強い」ということには同意できるものの、「修理がシンプルで迅速」ということについては現時点でなんともわからず、こればかりは実際にサイバートラックの納車が大量になされ、現実的に修理を行う人が出ないことにはわからないかもしれません。
サイバートラックに採用される厚さ3mmのステンレス鋼パネルは間違いなく業界初であり、イーロン・マスクCEOは(文字通り)何トンもの力を加えることができる従来のプレス機では、材料が非常に厚く硬いため、成形することさえできないと述べています。
よって、もしこのステンレス製パネルに「凹み」ができた場合、デントリペアにてこれを修理することは(それだけのトルクをかけることも、それに耐える治具もないので)まず不可能かもしれません。
-
リビアンR1Tのオーナーが車体後部をヒット。「修理費610万円」と判断された凹みを「無塗装、引っ張り出し」1/10の価格で修理した職人が話題に【動画】
| リビアンR1Tの修理は部位によって「非常に困難」「車体の切断を伴う」ため、当初の見積もりでもけして割高ではないようだ | ただ、現実的にその価格を支払ってでも修理しようと考える人はいないだろう さ ...
続きを見る
加えて、サイバートラックのボディパネルは「無塗装」であり、よって(ほかのクルマのように)凹みをパテで修正してしまうとステンレスの地金が見えなくなってしまい、そのため外観が(修復していない部分と)チグハグになってしまうことも。
なお、自動車業界ではじめてステンレススチール製ボディパネルを採用したのはデロリアンDMC-12ですが、これもやはり凹みが出来た場合の修理が極度に難しく、板金で元通りにするのが困難だとされ、もし可能であるとしても多大なコストが要求されると言われます。
そのためデロリアンDMC-12のオーナーの多くは、ボディパネルの修復が必要になった際には「パテで埋めて上から塗装することを選ぶ」といい、これは本意ではないかもしれませんが、合理的な選択であるのは間違いなさそう。
参考までに、仮にステンレススチール製のパネルを「ステンレスの地金を残したまま」補修するならば、パネルが平坦になるよう表裏からハンマーで叩いて平滑な面を作り、さらにはヘアラインを再現するために表面に「サンダーをかける」必要が出てきます。
かつ、これは誰にでもできる作業ではなく、「芸術作品を作るレベルでの」技術が必要とされるために人件費が非常に高くなってしまい、「完璧なコンディションを維持するだけの価値がある」コンクールレベルのデロリアンDMC-12でないと”そこまで費用をかける”理由を見いだせないのかもしれません。
テスラ・サイバートラックの保険は「非常に高額」になるだろう
ただ、同じステンレススティール製のボディを持つといえど、サイバートラックはデロリアンのようなコレクターズアイテムではなく、実用品に近いクルマなので、オーナーが「元通りにするために」高いコストを支払うかどうかはちょっとナゾ。
おそらくは多くのオーナーが「表面をパテで埋めて塗装し、その上から全体的にラッピングを行って修理したことがわからないようにする」という手法を取ることになるものと思われますが、現在サイバートラック予備軍の間で話題になっているのがその保険料。
-
テスラが「純正オプション」としてサイバートラック用ブラック、ホワイト、マットクリアのラッピングを提供開始。このブラックはけっこう多くの人が選択しそう
| さすがにステンレススチールを露出させたままだと「傷」が怖く、プロテクションフルムを施工する人は少なくはないのかも | おそらくはアフターマーケットでも「サイバートラックのラッピング」は人気メニュー ...
続きを見る
修理費が高額になるということはそのまま「保険料が高くなる」ということを意味しており、おそらくはかなりな高額になることは間違いなく、そして高額な保険料を支払ったとしても「いざ修理するとなると」保険会社が保険金の支払いを制限する(渋る)であろうと予想されており、相当数のトラブルが生じる可能性が高いこと、そしてそれを解決するためのコンサルタントの仕事が増えるであろうことにも言及されています(実際のところ、EVに関してはこういったトラブルが多く、コンサルタントはすでに引っ張りだこのようだ。あるコンサルタントは週に10〜15件も調整を行っていると述べている)。
参考までに、テスラのクルマは既存モデルであっても修理費が非常に高額なことで知られ、その理由は修理に際し「補修ではなく(基本的に)パーツ交換を行うこと」「テスラ車を修理できるのはテスラ認定技術者のみであること」「複雑なソフトウェアの再調整手順が必要であること」に起因しており、つまりはテスラの「言い値」になってしまっているわけですね。
加えてテスラのパーツ供給体制についても言及する例も見られ、これはつまり(既存車種でも問題となっているとおり)パーツが届かないために修理するまでに何ヶ月も待たされるという懸念を示すオーナー予備軍もいるもよう。
ちなみにですが、保険料についてもう少し踏み込んでみると、サイバートラックは「3ミリ厚のウルトラハードステンレスで武装した」装甲車のようなものであり、非常に攻撃性が高いと考えてよく、事故の際には相手に与える損害がとんでもなく大きいものと思われます。
その意味でも保険料が高くなるのは間違いなく、サイバートラックのオーナーは「保険に加入すべく見積もりを取って」その金額に驚くことになるのかもしれません。
しかしながら(保険料は別として)修理にかかる費用については事故さえ起こさなければ縁のない話でもあり、起こるかどうかわからないことを思い悩むより、手に入れたサイバートラックを素直に楽しむことに専念したほうが健全である、とは思います。
合わせて読みたい、テスラ・サイバートラック関連投稿
-
テスラ・サイバートラックついに納車開始。最廉価グレードで邦貨換算902万円~、日本の公式サイトでも情報が公開に
| ただしサイバートラックの全長は5.7メートル、日本で使用するにはあまりも大きすぎるかも | おなじみ対生化学兵器にも対応、そしてステアバイワイヤを採用 さて、テスラが2019年11月21日の発表か ...
続きを見る
-
テスラ・サイバートラック用カスタムパーツがさっそく登場。単なるレンダリングではなく実際に今月から出荷開始、これでオフロードも怖くない
| 北米ではサイバートラックのカスタム市場がかなり大きいものとなるのかも | 相当数の台数が出回ることが予想されるだけに多くのチューナーが参入することになりそうだ さて、テスラ・サイバートラックの納車 ...
続きを見る
-
テスラ・サイバートラックのレビュー動画続々登場。口を揃えて「加速、剛性」を評価するも、内装や細かい装備については不満も少なくないようだ
| このクルマを運転できると思うと確実にテンションが上がってしまいそう | まだまだサイバートラックが「一般に」納車されるまでには時間がかかるのかも テスラ・サイバートラックは「10台のみ」がひとまず ...
続きを見る
参照:InsideEVs