| ポルシェは様々な方法を用いてガソリンエンジンを生き残らせる方法を模索している |
その中には「V4」エンジンも含まれており、かなりラディカルな考え方も
さて、ポルシェはここ最近ガソリンエンジンに関する特許をいくつか出願しており、これはつまり「ガソリンエンジンの効率性を高め、ガソリンエンジンを生き長らえさせる方法」を模索しているということを意味します(効率を高めるということはパフォーマンスの向上にもつながる)。
こういった一連の行動は「ガソリンエンジンの開発を終了させた」いくつかの自動車メーカーとは全く異なるもので、ポルシェの「可能な限り(たとえハイブリッド化されようとも)911にガソリンエンジンから取り去ることを避けたい」という意志があらためて伝わってくるものであると思います。
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ポルシェはレーシングカーの「ダイレクトスタートシステム」を市販車に?
今回ドイツ特許商標庁出願された特許を見るに、「レーシングカーのエンジンスタート技術を市販車に転用する」という内容のように思われ、その意図としては「それによって重量と複雑さを軽減したい」。
まず、レーシングカーにはダイレクトスタートシステムが採用されており、これはエンジンが「キャッチ(内燃機関の始動トルクが上昇する)」するようシリンダー内の多数の点火を使用してクランクシャフトを何度も回転させるものですが、これによっていわゆる「スターター」が不要となるわけですね(そのぶん構造を簡素化し軽量化できる)。
ポルシェの特許ではこれに近い(スターターを用いない)考え方が出願されているものの、このレーシングカーが採用するダイレクトスタートシステムは「事前に十分な温度にまでエンジンを暖めることができる」からこそ、そしてチームの十分なサポート体制があるからこそ、そしてサーキットという特殊な環境だからこそ実現できるものであり、市販車が使用される環境ではダイレクトスタートシステムの採用が難しく、よって通常のクルマには「スターターモーター」が備わっています。
ただ、このスターターモーターは重量がかさみ、エンジンスタート時以外には使用しないというある種の無駄なモノであり(ただ、ISGなどマイルドハイブリッドではエンジンスターターのほか、駆動用としても機能するので無駄ではない)、かつオルタネーターとして使用する場合であってもベルト等を介してエンジンパワーを多少なりとも食ってしまい、ポルシェはこの「重量とスペース、パワーの浪費」をなんとかしたいと考えており、その解決策が今回の特許であると考えられます。
いったいポルシェはどうやって問題を解決するのか
そこでポルシェが「スターターモーターを使用せず」エンジンを始動させる方法として考えたのが「ブローバイ特性の制御」。※ただし特許の出願内容を見ると、ガソリンエンジンのみで走るクルマではなく、ハイブリッド車への適用を念頭に置いているようだ
ブローバイガスの大部分は排気ガス再循環のプロセスを通じて再利用され、排気中で燃焼されるかフィルターに捕捉されることになりますが、ポルシェはこれを利用するためにポルシェは各シリンダーの設計を変更して点火シーケンスの慣性を低減することを提案しています。
簡単に言えばブローバイガスをシリンダー内に送り込んでピストンを動かし点火するというロジックを採用するように見え、これを実現するには各シリンダー内でのピストンの停止している位置を正確に把握する必要があり、さらには温度管理(極端に低い気温のもとでは作動しないということにも言及されている)、ブローバイ率の管理など非常に緻密な計算と制御を行わねばならず、そうとうに高度な技術が要求されるのは間違いなさそう。
ただ、これを実現できれば車両全体の軽量化やガソリンエンジンの効率化を達成でき、ガソリンエンジン搭載車の環境性能を高め、より長い間生き残ることが可能となる可能性をもたらすことになるのかもしれません。
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参照:CARBUZZ