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BMW、VW、JLRが米国にて「強制労働にて製造されたパーツの使用」がなされているという認定を受ける。VWは即刻対応するもBMWとJLRはこれを無視

BMW

| この問題はアメリカの雇用、そしてアメリカ人の感情にも大きく影響するだけに早急な対応が望まれるが |

フォルクスワーゲンはすでに「部品の交換」を発表済み

さて、イタリアでは「イタリア製だと勘違いさせる行動」にてアルファロメオとフィアットがトラブルに巻き込まれていますが、今回は米国にてBMW、フォルクスワーゲン、JLR(旧ジャガー・ランドローバー)が中国の強制労働に関与したと認定される問題が発生しています。

報道によると、これら3社はいずれも米国政府の禁止リストに載っているサプライヤーからの中国製部品を使用していることが判明しており、該当のサプライヤーはそのパーツの製造過程において強制労働を使用したと認定されている四川京威達科技集団(JWDとも呼ばれる)。

そして問題のパーツはLAN変圧器通信部品だとされていますが、BMW、フォルクスワーゲン、JLRのクルマにこの部品が使用されていることが問題となっているわけですね。

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今や部品の仕入れにも大きなリスクがつきまとう時代に

なお、どの自動車メーカーもJWDから直接部品を購入せず、代わりに西側企業であるリア・コーポレーション(仲介業者から購入したと主張)を通じて購入したものの、BMWとJLRはその部品が「強制労働によって製造されたものである」と書面で知らされた後にも同パーツを使い続けていたとされています。※とくにBMWはこの問題を指摘されたのちも、同じパーツを使用したミニ8,000台を米国に輸入している

一方のフォルクスワーゲンは(過去にも同様の問題を経験していたせいか)サプライチェーンを変更することで対応し、加えて、米国に入港済みの「影響を受ける」車両につきいては問題の部品を交換することを選択したと米税関職員に通知したもよう。

ちなみにポルシェとベントレー、アウディも同様の問題が指摘されており、VWグループ全体としてこのパーツを交換するという道を選んでいます。

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いったいなぜ「強制労働」の事実が明らかになったのか

ここで気になるのが「なぜ強制労働によって部品が製造されていることが明らかになったのか」。

一般にこういった事実は巧妙に隠されて表に出ないものですが、まず米国には「ウイグル(新疆)強制労働防止法」なるものがあり、これは”輸入業者が、その製品の生産時に、強制労働が行われていないことを証明できない限り、新疆で製造された商品を米国に輸入することを禁止する”というもの。

そしてこの証明は、自社製品が米国の法律に準拠しているかどうかを判断するために行われる、「サプライヤーへのアンケート、自己申告、限定的な監査」に依存しており、つまりは客観的に証明されていないことが問題として指摘されています(アンケートで「強制労働は存在しない」と答えてしまえば、それでOKである)。

加えて、強制労働を意図的に行う企業は「尻尾を掴まれないよう」、何層もの会社(ときにはペーパーカンパニー)を噛ませることで事実を隠してしまうわけですが、これらの問題に対応すべく米国政府は調査委員会を組織しており、独自の、かつ様々な調査を行っているわけですね。

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この調査委員会はVWが新江省に(強制労働の疑いがある)自社の生産拠点を持っていることも報告されており、しかしフォルクスワーゲンが自社で行った調査では「強制労働の証拠は見つからなかった」。

一方、調査委員会では「フォルクスワーゲンの独自調査内容の提供は一度もない」と主張しており、自動車メーカーと調査委員会との対立が深まっているというのが現在の構図であると思われます。

上院財政委員会のロン・ワイデン委員長(オレゴン州)は、ニューヨーク・タイムズへの声明で、「自動車メーカーは中国での生産に首を突っ込みながらも、自社のサプライチェーンには強制労働は存在しないと断言している。しかしどういうわけか、自動車メーカーの独自調査チームは、現地の数十億ドル規模もの大企業の内容を明らかにしないまま”強制労働の証拠はない”と言っている。自動車メーカーの自主調査が機能していないのは明らかだ」と述べており、今後ますます(同様の)問題が様々な自動車メーカーから出てくるのかもしれません。

なお、アメリカがこういった問題を大きく捉えるのは、もちろん人権という観点もあるとは思われるものの、その根底にあるのは「輸入せずにアメリカでクルマやパーツを作れ」ということにあるのだと思われ、これは現バイデン政権下にて導入されている「(パーツ含め)アメリカで製造されたEVのみが減税対象になる」ということからも見て取ることができ、ある意味では非関税障壁だと考えることも可能です。

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